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ぬくもりが好き
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目を覚ますと、アンリが私を抱いていた。
「!」
やはり硬いベッドにチクチクするような毛布だったが、この場所は居心地がよい。
それにしても、アンリはなぜ半裸で私を抱いているのだろうか。モゾモゾしている私に気付いたのか、その疑問に答えるようにアンリの声が降ってくる。
「目が覚めた?俺の部屋は暖炉もないからさ、なんか帰ってきたら君が冷え切ってて死んじゃったんじゃないかってくらい冷たくてさ。あたためてた」
まるで親鳥が雛鳥をあたためるように、だ。
彼からはいやらしい気持ちなんて感じられ無かった。女性として思われていないのは少し引っかかるが暖かな胸に抱きしめられるのは安心する。
私からギュッとしてみる。
その時、アンリの胸元に傷跡があるのを私は見つけた。私の視線を感じたアンリは答える。
「これね、さっき下手こいちゃって刺されたんだよね、お姫様を連れ歩かなくてよかった。女の子が絡まれてて、首突っ込んだらこのザマその子が聖癒魔法かけてくれて…」
アンリの言葉が止まったのは、私がポロポロと涙を流しているのに気づいたからだった。
「お姫様には刺激が強いお話だったかな、大丈夫。ここは怖くないよ。ちゃんと鍵もかけてる」
大きな手が私の頭を包んで撫でてくれる。暖かい場所。涙が止まらないのは治安が不安だからじゃない。ユティカと出会ったアンリは傷を癒してくれた不思議な女の子に恋するからだ。
私はアンリにしがみつく。
「いなく…ならないで」
私の言葉にアンリは優しく答える。
「大丈夫だよ、傷もふさがってる。死なないよ」
私はアンリの顔を見上げた。
空色の優しい目をしてる。長い睫毛が私に当たりそうなくらいの距離。
「俺が死にかけるとお姫様がこんなに泣くなら、もう命を危険に晒すような真似はしないよ」
「ほんとに?」
「他の女の子を助けても、死んだら君が泣くもんな」
ヒロインを他の知らない女の子と呼ぶ彼は、もしかしてユティカに一目惚れしていないのかな?でもナンパで女好きのキャラクターだった彼はヒロインと出会って誠実になる…
きっと世間知らずの私なんて騙すの簡単だ。勘違いしたら傷つく。そんな警鐘を頭で鳴らしても、撫で撫でしてくれる暖かい手からは離れられそうに無かった。
「!」
やはり硬いベッドにチクチクするような毛布だったが、この場所は居心地がよい。
それにしても、アンリはなぜ半裸で私を抱いているのだろうか。モゾモゾしている私に気付いたのか、その疑問に答えるようにアンリの声が降ってくる。
「目が覚めた?俺の部屋は暖炉もないからさ、なんか帰ってきたら君が冷え切ってて死んじゃったんじゃないかってくらい冷たくてさ。あたためてた」
まるで親鳥が雛鳥をあたためるように、だ。
彼からはいやらしい気持ちなんて感じられ無かった。女性として思われていないのは少し引っかかるが暖かな胸に抱きしめられるのは安心する。
私からギュッとしてみる。
その時、アンリの胸元に傷跡があるのを私は見つけた。私の視線を感じたアンリは答える。
「これね、さっき下手こいちゃって刺されたんだよね、お姫様を連れ歩かなくてよかった。女の子が絡まれてて、首突っ込んだらこのザマその子が聖癒魔法かけてくれて…」
アンリの言葉が止まったのは、私がポロポロと涙を流しているのに気づいたからだった。
「お姫様には刺激が強いお話だったかな、大丈夫。ここは怖くないよ。ちゃんと鍵もかけてる」
大きな手が私の頭を包んで撫でてくれる。暖かい場所。涙が止まらないのは治安が不安だからじゃない。ユティカと出会ったアンリは傷を癒してくれた不思議な女の子に恋するからだ。
私はアンリにしがみつく。
「いなく…ならないで」
私の言葉にアンリは優しく答える。
「大丈夫だよ、傷もふさがってる。死なないよ」
私はアンリの顔を見上げた。
空色の優しい目をしてる。長い睫毛が私に当たりそうなくらいの距離。
「俺が死にかけるとお姫様がこんなに泣くなら、もう命を危険に晒すような真似はしないよ」
「ほんとに?」
「他の女の子を助けても、死んだら君が泣くもんな」
ヒロインを他の知らない女の子と呼ぶ彼は、もしかしてユティカに一目惚れしていないのかな?でもナンパで女好きのキャラクターだった彼はヒロインと出会って誠実になる…
きっと世間知らずの私なんて騙すの簡単だ。勘違いしたら傷つく。そんな警鐘を頭で鳴らしても、撫で撫でしてくれる暖かい手からは離れられそうに無かった。
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