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第二十七話 不穏な悩み②
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「い、いやまさかぁ。そりゃ確かに、私と同じゲーム知識があるわけだから、ネッバス先生と影牙の黒い繋がりとか知ってるだろうけど。
その辺を脅迫材料にしてネッバス先生を利用することもできそうだけどさぁ」
でも、ネッバス先生も単なる小娘にいいように扱われるはずが……。
そこで私は頭を抱える。
「いや、小娘じゃないじゃん! 神聖魔法の使い手じゃん!
ネッバス先生って権威にめちゃ弱いキャラだし、聖女が相手なら言いなりになってもおかしくないわ。取り入って甘い蜜を吸おうとするはず!」
ミリシアは言っていた。どんな手を使ってでも自分の目的を果たすと。
彼女の目的とは何なのだろう? ヒーシスにアプローチしていたことだし、王妃の座につくことが目的だろうと考えていたのだが、本当にそうだろうか?
私と同じくゲーマー気質ならば、最もスタンダードなシナリオをなぞるようなプレイを目的にするとは思えない。
ミリシアの一言一句を思い出せ。
彼女は何と言っていた? 何が目的だ?
“あたしは逆ハーレムを満喫したあと、王子ルートに入ってこの国の絶対権力者になるつもりだから”
ミリシアは確かそう言っていた。そのまま受け取ればヒーシスと結ばれることが目的のように聞こえるが、王妃という立場で「絶対権力者」というのは引っかかる。それはむしろ国王になったヒーシスを指す言葉のはず。
そこまで考えたとき、ヒーシスの暗殺未遂事件のことが落雷のごとく私の思考を打った。
(ち、ちょっと待って。国王になったヒーシスが命を落とせば、聖女であり王妃のミリシアが全権力を握るんじゃないの?)
もちろん、王妃の座についた途端にヒーシスが暗殺されれば、ミリシアは最も怪しい容疑者として見られるだろう。
しかし、ヒーシスと接点を持つ以前から暗殺未遂事件が起こっていたとなれば、ミリシアが疑われる可能性はぐっと減る。
そうだ。
自分が王妃の座につくことを事前に知っている転生者なら、ヒーシスの暗殺未遂を演出する利はある。
(嘘でしょう? そりゃ確かに、ネッバス先生の協力があれば、魔法薬を使ってワーウルフをけしかけることも可能だろうけど。
何年も前に転生して、用意周到に準備してたっていうの……?)
憶測の域を出ない話だが、ヒーシスの暗殺未遂事件なんて『王立学園の聖女』には出てこなかったものだ。裏で転生者が糸を引いているという可能性はあるのではないか。
私が思考を巡らせていると、不意にドアがノックされた。はっと我に返った私は、動揺しつつ声を上げる。
「は、はい。誰?」
「わだすです、お嬢様。シーツの交換に来たべ」
部屋に入ってきたアルエは、何かに気付いたように鼻をスンスン鳴らして辺りの匂いを嗅ぐ。
「何だか懐かしい、いい匂いがすんべ。子供の頃を思い出すだ」
「え? 匂いって……あぁ、この香水のせいかしら」
私が虹の香水を指し示すと、アルエは目を丸くする。
「はあ。なまらめんこい瓶に入ってるだべな。わだすは田舎者だでわからんだども、王都ではこの香りが流行ってるべか?」
「ええ、そうみたいね。虹の香水って、女性へのプレゼントとして最上級の代物で……って、別に私がもらったわけじゃないわよ? これはちょっと、借り物というか」
「それはもちろんわかってるべ。あはははは」
「うふふふふ」
っておい。それはちょっと失礼じゃないか?
私いちおう雇い主だぞ。いつでもブラック勤務にできるんだぞ?
その辺を脅迫材料にしてネッバス先生を利用することもできそうだけどさぁ」
でも、ネッバス先生も単なる小娘にいいように扱われるはずが……。
そこで私は頭を抱える。
「いや、小娘じゃないじゃん! 神聖魔法の使い手じゃん!
ネッバス先生って権威にめちゃ弱いキャラだし、聖女が相手なら言いなりになってもおかしくないわ。取り入って甘い蜜を吸おうとするはず!」
ミリシアは言っていた。どんな手を使ってでも自分の目的を果たすと。
彼女の目的とは何なのだろう? ヒーシスにアプローチしていたことだし、王妃の座につくことが目的だろうと考えていたのだが、本当にそうだろうか?
私と同じくゲーマー気質ならば、最もスタンダードなシナリオをなぞるようなプレイを目的にするとは思えない。
ミリシアの一言一句を思い出せ。
彼女は何と言っていた? 何が目的だ?
“あたしは逆ハーレムを満喫したあと、王子ルートに入ってこの国の絶対権力者になるつもりだから”
ミリシアは確かそう言っていた。そのまま受け取ればヒーシスと結ばれることが目的のように聞こえるが、王妃という立場で「絶対権力者」というのは引っかかる。それはむしろ国王になったヒーシスを指す言葉のはず。
そこまで考えたとき、ヒーシスの暗殺未遂事件のことが落雷のごとく私の思考を打った。
(ち、ちょっと待って。国王になったヒーシスが命を落とせば、聖女であり王妃のミリシアが全権力を握るんじゃないの?)
もちろん、王妃の座についた途端にヒーシスが暗殺されれば、ミリシアは最も怪しい容疑者として見られるだろう。
しかし、ヒーシスと接点を持つ以前から暗殺未遂事件が起こっていたとなれば、ミリシアが疑われる可能性はぐっと減る。
そうだ。
自分が王妃の座につくことを事前に知っている転生者なら、ヒーシスの暗殺未遂を演出する利はある。
(嘘でしょう? そりゃ確かに、ネッバス先生の協力があれば、魔法薬を使ってワーウルフをけしかけることも可能だろうけど。
何年も前に転生して、用意周到に準備してたっていうの……?)
憶測の域を出ない話だが、ヒーシスの暗殺未遂事件なんて『王立学園の聖女』には出てこなかったものだ。裏で転生者が糸を引いているという可能性はあるのではないか。
私が思考を巡らせていると、不意にドアがノックされた。はっと我に返った私は、動揺しつつ声を上げる。
「は、はい。誰?」
「わだすです、お嬢様。シーツの交換に来たべ」
部屋に入ってきたアルエは、何かに気付いたように鼻をスンスン鳴らして辺りの匂いを嗅ぐ。
「何だか懐かしい、いい匂いがすんべ。子供の頃を思い出すだ」
「え? 匂いって……あぁ、この香水のせいかしら」
私が虹の香水を指し示すと、アルエは目を丸くする。
「はあ。なまらめんこい瓶に入ってるだべな。わだすは田舎者だでわからんだども、王都ではこの香りが流行ってるべか?」
「ええ、そうみたいね。虹の香水って、女性へのプレゼントとして最上級の代物で……って、別に私がもらったわけじゃないわよ? これはちょっと、借り物というか」
「それはもちろんわかってるべ。あはははは」
「うふふふふ」
っておい。それはちょっと失礼じゃないか?
私いちおう雇い主だぞ。いつでもブラック勤務にできるんだぞ?
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