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第二十一話 ぱおん①
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私たちがお茶会の会場に戻ると、ルフォートの姿を見つけた数人の女子生徒が駆け寄ってきた。
「ルフォート様、どちらに行かれてたんですか?」
「シエザ様とご一緒だったんですね」
「お二人で楽しそうにお話しているところをよくお見かけしますけれど、もしかしてお二人は……」
うわぁ、流れ弾きたー。
普通なら妬みを買って、陰湿ないじめに発展……といったところだろう。
しかし私は悪役令嬢の取り巻き。キュロットの御威光もあってか、私に向けられるのは羨望の眼差しだ。
(おお。転生してから気苦労が多くて忘れかけてたけど、さすが人生イージーモードのシエザね)
とはいえ、あらぬ噂を立てられて後々厄介なことになるのは本意ではない。廊下でばったり会って世間話をしていただけなのだが、果たして彼女たちは納得してくれるだろうか。
そんなことを考える私に、ルフォートが助け舟を出してくれた。
「フッ。寂しい思いをさせちゃったね、子猫ちゃんたち。実は歌を一曲披露しようと思って、シエザに発声練習に付き合ってもらっていたんだ」
「まあ! ルフォート様の歌声が聴けるんですね!」
女子生徒たちの関心はすぐさまルフォートの歌へと移った。
安堵する私に、ルフォートは密かにウインクを寄こす。
(うーん。手慣れてる。こういう場面は日常茶飯事なんだろうな。何にせよ助かったわ。それに、どうせ歌は披露してもらう予定だったしね)
お茶会を盛り上げるためにどこかのタイミングで一曲歌ってほしいと事前にお願いしておいたのだ。むしろこれはいいきっかけだろう。
女子生徒たちが歓声を上げたため、お茶会に参加する皆の視線がルフォートに集まった。
ルフォートは歌唱を披露するため、教室の一番奥、お茶会の主催者となっているキュロットが座るテーブルの方へと歩を進める。
キュロットは未だ私の教えた悪役令嬢の台詞をブツブツと繰り返していた様子だったが、周りの雰囲気ではたと我に返ったらしい。
ルフォートが歩み寄ってくるのを見て、予定されていた歌唱が行われると察したようで、彼を迎えるため立ち上がる。
キュロットの元へ向かうルフォート。
その背中を見守る私たち。
……後になって思う。
もしオロンが充分な睡眠を取れていたなら。
あるいは、アルエがドジッ娘属性を発揮しなければ。
この直後に起こった惨劇は回避できたのだろうかと……。
「ルフォート様、どちらに行かれてたんですか?」
「シエザ様とご一緒だったんですね」
「お二人で楽しそうにお話しているところをよくお見かけしますけれど、もしかしてお二人は……」
うわぁ、流れ弾きたー。
普通なら妬みを買って、陰湿ないじめに発展……といったところだろう。
しかし私は悪役令嬢の取り巻き。キュロットの御威光もあってか、私に向けられるのは羨望の眼差しだ。
(おお。転生してから気苦労が多くて忘れかけてたけど、さすが人生イージーモードのシエザね)
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そんなことを考える私に、ルフォートが助け舟を出してくれた。
「フッ。寂しい思いをさせちゃったね、子猫ちゃんたち。実は歌を一曲披露しようと思って、シエザに発声練習に付き合ってもらっていたんだ」
「まあ! ルフォート様の歌声が聴けるんですね!」
女子生徒たちの関心はすぐさまルフォートの歌へと移った。
安堵する私に、ルフォートは密かにウインクを寄こす。
(うーん。手慣れてる。こういう場面は日常茶飯事なんだろうな。何にせよ助かったわ。それに、どうせ歌は披露してもらう予定だったしね)
お茶会を盛り上げるためにどこかのタイミングで一曲歌ってほしいと事前にお願いしておいたのだ。むしろこれはいいきっかけだろう。
女子生徒たちが歓声を上げたため、お茶会に参加する皆の視線がルフォートに集まった。
ルフォートは歌唱を披露するため、教室の一番奥、お茶会の主催者となっているキュロットが座るテーブルの方へと歩を進める。
キュロットは未だ私の教えた悪役令嬢の台詞をブツブツと繰り返していた様子だったが、周りの雰囲気ではたと我に返ったらしい。
ルフォートが歩み寄ってくるのを見て、予定されていた歌唱が行われると察したようで、彼を迎えるため立ち上がる。
キュロットの元へ向かうルフォート。
その背中を見守る私たち。
……後になって思う。
もしオロンが充分な睡眠を取れていたなら。
あるいは、アルエがドジッ娘属性を発揮しなければ。
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