上 下
33 / 46
第十四話 共闘

3

しおりを挟む
「そうそう。それに、打ち解けるのに時間ってあんま関係ないしな。
 俺とセリスも出会って一ヶ月しか経ってないけど、けっこう早い段階で仲良かったし。一緒に冒険に出ればなおさらだろ。
 そういえば、ゴルドフたちとはいつからパーティ組んでるんだ?」


 最後の質問は何気なく訊ねたのだが、アシュミーは言い淀んだ。
 答えづらいことでもないだろうと怪訝に思っていると、アシュミーはぼそぼそと呟くような声で言う。


「……に、二週間前からです。冒険にでるのは今回で四回目になります」

「なんだ、アシュミーもつい最近にゴルドフたちと組んだばかりなのか」

 俺は前を行くゴルドフたちを見やった。
 ゴルドフと双子はジョークでも交わしているのか、和気あいあいといった雰囲気で歩を進めている。

 しかし、振り返ってアシュミーに声をかけるような様子は、ここに至るまでもほとんど見かけなかったように思う。


(確かに少しよそよそしい感じだもんな。
 アシュミーがコミュ症ってだけじゃなくて、まだパーティ組んで間もないからか)

 俺が納得していると、セリスがさらに問いかけた。


「それじゃあ、その前はどんな人たちと組んでたの?」

「ゴルドフさんたちと組む前は、魔法使いを主体としたパーティに参加していたんです。
 でも、半月ほどでパーティ解除されちゃって」

「え? どうして?」

「わたしがいけないんです。わたし、全然パーティの役に立てなくて。
 それでみんなに愛想を尽かされちゃって……」


 アシュミーは消え入りそうな声でそう言うと、そのまま押し黙ってしまった。
 目尻には、じわりと涙が浮かんでいる。


(うわ。こりゃ地雷踏んじまったか?)


 俺と同じことを考えていたらしいセリスが慌ててとりなす。


「そ、そんなことないわよ。
 前のパーティの人たちは見る目がなかったのよ。ねっ、レン?」

「ああ。セリスの言う通りだと俺も思うぞ。ヒーラーなんて最高じゃないか!
 回復役は冒険に必要不可欠だし、俺だったら絶対に手放したりしないけどな」


 俺たちの励ましの言葉はきちんと届いたらしい。
 アシュミーは目尻の涙を指先で拭うと、はにかむような微笑を浮かべる。


「レンさん、セリスさん、ありがとうございます」


 俺とセリスが顔を見合わせ、ほっと安堵の吐息を漏らしたときだ。
 ゴルドフの高揚した声が響く。


「よぅし、着いたぞ」


 前方に視線を転じてみれば、そこには尖塔のように盛り上がった大岩があった。
 岩の中ほどには巣穴らしき空洞がポッカリと開いており、不穏な気配を辺りに漂わせている。

 ゴルドフが大盾を構えながら、確認のため口を開いた。


「今回のクエストは、この大岩に住み着いたベビーヒュドラの討伐だ。
 なかなか手強い相手だが、牙は素材として売れるし、魔結晶もいい値で取り引きされる。
 その上でクエスト報酬が入るとなれば受けん理由がないわ! ガハハハハ!」


 ゴルドフパーティの頭脳担当なのだろう。ユズが弓に矢をつがえながら忠告を発する。


「牙に毒はないが、噛み付きには注意しろ。
 首や尻尾をムチのように振るってくる攻撃も厄介だ。
 五つある頭のうち、ゴルドフが中央を担当。俺とヤズが右翼の二つ、レンとセリスが左翼。
 アシュミーは後方支援だ」


 俺たちの気配に気付いたのだろう。巣穴の中からズズッ、ズズッと、何かを引きずるような音が不気味に響く。

 ヤズが槍を構え、ぺろりと舌なめずりした。


「来るぜ! 足引っ張んなよ、ルーキーども!」


 巣穴から姿を現したのは、ベビーとつくには不似合いな、体長十メートルはゆうにあろうかという大蛇だ。
 五つの頭が鎌首をもたげ、シャーッと威嚇音を発して臨戦態勢に入った。


〈チャララララララ! ズッチャズッチャズッチャズッチャ♪〉


 やめろ相談窓口!
 やることないからってRPGの接敵音楽を口頭で流すな!

 緊張が削がれたが、とにかくベビーヒュドラとの戦闘が始まった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【R18】通学路ですれ違うお姉さんに僕は食べられてしまった

ねんごろ
恋愛
小学4年生の頃。 僕は通学路で毎朝すれ違うお姉さんに… 食べられてしまったんだ……

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。 ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。 しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。 他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。 本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。 贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。 そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。 家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

【TS転生勇者のやり直し】『イデアの黙示録』~魔王を倒せなかったので2度目の人生はすべての選択肢を「逆」に生きて絶対に勇者にはなりません!~

夕姫
ファンタジー
【絶対に『勇者』にならないし、もう『魔王』とは戦わないんだから!】 かつて世界を救うために立ち上がった1人の男。名前はエルク=レヴェントン。勇者だ。  エルクは世界で唯一勇者の試練を乗り越え、レベルも最大の100。つまり人類史上最強の存在だったが魔王の力は強大だった。どうせ死ぬのなら最後に一矢報いてやりたい。その思いから最難関のダンジョンの遺物のアイテムを使う。  すると目の前にいた魔王は消え、そこには1人の女神が。 「ようこそいらっしゃいました私は女神リディアです」  女神リディアの話しなら『もう一度人生をやり直す』ことが出来ると言う。  そんなエルクは思う。『魔王を倒して世界を平和にする』ことがこんなに辛いなら、次の人生はすべての選択肢を逆に生き、このバッドエンドのフラグをすべて回避して人生を楽しむ。もう魔王とは戦いたくない!と  そしてエルクに最初の選択肢が告げられる…… 「性別を選んでください」  と。  しかしこの転生にはある秘密があって……  この物語は『魔王と戦う』『勇者になる』フラグをへし折りながら第2の人生を生き抜く転生ストーリーです。

処理中です...