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1章⭐︎プロローグ⭐︎
最初の観光地
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-side エリク-
「んんー。ふあーあ。よく寝たー。」
大きな伸びをすると同時に彼は目覚める。
ここが魔境へ向かう道で、魔物に狙われているという状況でも爆睡できるという事実がエリクの持ち味である豪胆さを表している。
おそらく、彼は恐怖を感じにくいサイコパス性が強い人間なのだろう。
昨日、公爵家を出てから1日が経ち、もうすぐ魔境への一本道に着く。
魔鏡へは「デビルロード」と呼ばれる、1日2回干潮時になると海の中から現れる砂の道が唯一渡る方法だ。
そして、渡ったが最後。帰ってきた者はいないというこの道をエリクはこれから渡る。
「エリク様。我々とはここでお別れでございます。本当に。本当に何もできなくて、申し訳ございません。」
護衛の男は悔しそうに顔を歪めてそう言った。この男もエリクが広めた解熱剤によって本来死ぬはずだった妹が助かっている。
他の護衛たちもそれぞれエリクに恩義を感じていて、それ故にこの護衛に自ら志願したのである。
「いえいえ、大丈夫です。あなた方の立場もわかっておりますから。かしこまりました。」
護衛たちは涙ながらにエリクを見送る。
中身はこれだが、意外に人望があるのがエリクと言う少年である。
「はっ。今誰かに褒められた気がする!」
そして、気のせいのしょーもないことに対して、この状況で純粋に反応できるのもエリクという少年だ。
「まあ、気のせいか。にしても歩いている最中暇だし、ちょうどいいから、デゾートアイランドについて調べるか!!
[検索]“デゾートアイランド 観光地”」
そう、エリクにとって今回が初めての異世界観光であった。
もっとも。魔鏡への追放を異世界観光だというふうに置き換えるぶっ飛んだ思考を持っている彼にとってはだが。
そもそも、公爵家の嫡男というのは外に出られる機会があまりない。
せいぜい、魔物と戦う訓練をするときか、パーティなどで王城や他の貴族のところへ行く時だけである。
この世界には、一応王立学校はあるが義務教育の概念もないため、貴族の場合、国に報告書を出していれば、家庭教師を呼んで教育するだけで良い。
学校を利用するのは王族やお金のない貴族だ。
王族は学校が王立学園という体裁をとっているため、通うことが暗黙の了解である。
そして、お金に余裕のない貴族は家庭教師を呼ぶことができないため、学校に通うのが普通である。
ドーソン公爵家の場合、両方とも当てはまらないで、学校で外に出ることもなかった。
だから、前世の記憶が4歳の時、戻ってからというもの彼は外出したくて仕方がなかったようだ。
ちなみに平民の場合、特にエリクが8歳の時さまざまな肥料を広めるまでは学校に通わせるどころか、日々の生活を過ごすことだけで必死だった。
平民の食料事情を解決したエリクは庶民にも人気なのであった。
「うーむ。デゾートアイランドの観光地はやはりというか。
デビルロードしか出てこないか。」
そう、[検索]スキルはなぜか知らないことに対しては“明確にイメージを持っていない限り”出てこないのだ。
これは知識神ルノウが、「まあ、そっちの方が面白いでしょ!全部教えてもつまらないしねえ」と、傍迷惑な仕様を付け加えたからである。
実際その通りなのだが、こういう危機的な状況の時、何も役に立たないスキルであった。
なお、あの神つかえねーな。と思うとなぜか、「うるうるうる。キャピキャピ」という謎の擬音語を思い出したので考えないようにしている。
「うーん。じゃあ、[鑑定]」
[鑑定]スキルは知りたい情報をイメージすれば、情報が出てくるスキルだ。
今彼はデゾートアイランドの面積について知りたいとイメージした。
鑑定結果:378,000 km²
「なっ!!日本と全く同じじゃねえか!!
あれ、小さい島じゃなかったの!?
……いや、よく見ると島の後方にまだ島があるような?想像以上に巨大な島なのか。」
おそらく、幾つもの島が連なってできているに違いない。彼はそう推測した。
「[検索]デゾートアイランド 天候」
検索結果:データ不足なため不明
「ふーむ?やはり出てこないか。」
他にも、文明や文化、生物や食性などを調べるが何一つ出てこない。
「うーん。やっぱり、これまでいたマスク王国には大昔の人が書いた英雄伝みたいなのしかなかったし、資料不足でイメージできなかったかも。」
なんでも、その本によると英雄はエンシェントドラゴンに会い、戦いの末最後は死んでしまったという。
ただ、本当に彼がデゾートアイランドで1人の時に死んでしまっていたのなら、英雄伝に彼のことが残っているはずがないとみんなが思っていた。
だがまあ、英雄伝なんてそんなもんだと思って誰も突っ込まなかったのだ。
今回のことで嘘だという確信性が増したのかもしれない。
とりあえずの手元の情報からそんな事を予想しているうちに2時間が経過し、魔境デゾートアイランドに無事到着することができた。
今世のエリクという人間にとっては初めてマスク王国外の土地に踏み入れた。
前世の彼にとっては、初めての異世界旅行だ。緊張すると同時に好奇心が疼いた。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
といっても、別になんの変哲もない普通の島だった。
しばらく探索しているが、凶悪な魔物どころか、とても美しい花が川の側で咲いていてのどかで平和な場所だった。
あまりの拍子抜け度に思わず気が緩んだ瞬間、強烈な殺気がエリクを襲った。
……っぅ。
図太いエリクでなければ、確実に気絶させていたであろう威圧感。
逆にいうと、エリクは少し痛いなあくらいで済んできた。
「ほう。なかなか手応えがあって、面白そうじゃのう」
見ると、銀色の山が動いてきた。
--否。山のように見えただけで、銀色の鱗が美しい巨大なドラゴンがこちらに向かっていた。
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「んんー。ふあーあ。よく寝たー。」
大きな伸びをすると同時に彼は目覚める。
ここが魔境へ向かう道で、魔物に狙われているという状況でも爆睡できるという事実がエリクの持ち味である豪胆さを表している。
おそらく、彼は恐怖を感じにくいサイコパス性が強い人間なのだろう。
昨日、公爵家を出てから1日が経ち、もうすぐ魔境への一本道に着く。
魔鏡へは「デビルロード」と呼ばれる、1日2回干潮時になると海の中から現れる砂の道が唯一渡る方法だ。
そして、渡ったが最後。帰ってきた者はいないというこの道をエリクはこれから渡る。
「エリク様。我々とはここでお別れでございます。本当に。本当に何もできなくて、申し訳ございません。」
護衛の男は悔しそうに顔を歪めてそう言った。この男もエリクが広めた解熱剤によって本来死ぬはずだった妹が助かっている。
他の護衛たちもそれぞれエリクに恩義を感じていて、それ故にこの護衛に自ら志願したのである。
「いえいえ、大丈夫です。あなた方の立場もわかっておりますから。かしこまりました。」
護衛たちは涙ながらにエリクを見送る。
中身はこれだが、意外に人望があるのがエリクと言う少年である。
「はっ。今誰かに褒められた気がする!」
そして、気のせいのしょーもないことに対して、この状況で純粋に反応できるのもエリクという少年だ。
「まあ、気のせいか。にしても歩いている最中暇だし、ちょうどいいから、デゾートアイランドについて調べるか!!
[検索]“デゾートアイランド 観光地”」
そう、エリクにとって今回が初めての異世界観光であった。
もっとも。魔鏡への追放を異世界観光だというふうに置き換えるぶっ飛んだ思考を持っている彼にとってはだが。
そもそも、公爵家の嫡男というのは外に出られる機会があまりない。
せいぜい、魔物と戦う訓練をするときか、パーティなどで王城や他の貴族のところへ行く時だけである。
この世界には、一応王立学校はあるが義務教育の概念もないため、貴族の場合、国に報告書を出していれば、家庭教師を呼んで教育するだけで良い。
学校を利用するのは王族やお金のない貴族だ。
王族は学校が王立学園という体裁をとっているため、通うことが暗黙の了解である。
そして、お金に余裕のない貴族は家庭教師を呼ぶことができないため、学校に通うのが普通である。
ドーソン公爵家の場合、両方とも当てはまらないで、学校で外に出ることもなかった。
だから、前世の記憶が4歳の時、戻ってからというもの彼は外出したくて仕方がなかったようだ。
ちなみに平民の場合、特にエリクが8歳の時さまざまな肥料を広めるまでは学校に通わせるどころか、日々の生活を過ごすことだけで必死だった。
平民の食料事情を解決したエリクは庶民にも人気なのであった。
「うーむ。デゾートアイランドの観光地はやはりというか。
デビルロードしか出てこないか。」
そう、[検索]スキルはなぜか知らないことに対しては“明確にイメージを持っていない限り”出てこないのだ。
これは知識神ルノウが、「まあ、そっちの方が面白いでしょ!全部教えてもつまらないしねえ」と、傍迷惑な仕様を付け加えたからである。
実際その通りなのだが、こういう危機的な状況の時、何も役に立たないスキルであった。
なお、あの神つかえねーな。と思うとなぜか、「うるうるうる。キャピキャピ」という謎の擬音語を思い出したので考えないようにしている。
「うーん。じゃあ、[鑑定]」
[鑑定]スキルは知りたい情報をイメージすれば、情報が出てくるスキルだ。
今彼はデゾートアイランドの面積について知りたいとイメージした。
鑑定結果:378,000 km²
「なっ!!日本と全く同じじゃねえか!!
あれ、小さい島じゃなかったの!?
……いや、よく見ると島の後方にまだ島があるような?想像以上に巨大な島なのか。」
おそらく、幾つもの島が連なってできているに違いない。彼はそう推測した。
「[検索]デゾートアイランド 天候」
検索結果:データ不足なため不明
「ふーむ?やはり出てこないか。」
他にも、文明や文化、生物や食性などを調べるが何一つ出てこない。
「うーん。やっぱり、これまでいたマスク王国には大昔の人が書いた英雄伝みたいなのしかなかったし、資料不足でイメージできなかったかも。」
なんでも、その本によると英雄はエンシェントドラゴンに会い、戦いの末最後は死んでしまったという。
ただ、本当に彼がデゾートアイランドで1人の時に死んでしまっていたのなら、英雄伝に彼のことが残っているはずがないとみんなが思っていた。
だがまあ、英雄伝なんてそんなもんだと思って誰も突っ込まなかったのだ。
今回のことで嘘だという確信性が増したのかもしれない。
とりあえずの手元の情報からそんな事を予想しているうちに2時間が経過し、魔境デゾートアイランドに無事到着することができた。
今世のエリクという人間にとっては初めてマスク王国外の土地に踏み入れた。
前世の彼にとっては、初めての異世界旅行だ。緊張すると同時に好奇心が疼いた。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
といっても、別になんの変哲もない普通の島だった。
しばらく探索しているが、凶悪な魔物どころか、とても美しい花が川の側で咲いていてのどかで平和な場所だった。
あまりの拍子抜け度に思わず気が緩んだ瞬間、強烈な殺気がエリクを襲った。
……っぅ。
図太いエリクでなければ、確実に気絶させていたであろう威圧感。
逆にいうと、エリクは少し痛いなあくらいで済んできた。
「ほう。なかなか手応えがあって、面白そうじゃのう」
見ると、銀色の山が動いてきた。
--否。山のように見えただけで、銀色の鱗が美しい巨大なドラゴンがこちらに向かっていた。
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