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16章 ゴールデン・ロード
第765話 〝待つ〟を使う⑤黒い親戚
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ドナイ侯は真っ黒だった。
予備の魔具で土地の強度を測った。お試しだったのだと思うけど、どこだと思う? 王都だよ。国境近くの街だとかじゃなくて、思い切り国の要の王都を。
もふもふ軍団からの情報で、いくつかわかってきた。
まずヴェルナー氏、ドナイ侯を脅すようなことをして、返り討ちにあって欲しかったのだが、ヴェルナーはドナイ候の隠していることに、大金が動く気配を感じたようだ。それでどうしたかというと、すり寄った。
ヴェルナーにアラ兄の魔具を手にした情報は流したから、あの兄妹を山崩れで埋もれさせたのは私だと、手柄を褒めてくれとばかりに言い募ったそうだ。
ドナイ侯に何が望みか尋ねられると、指示された通りに婚姻を結ぼうとして、散々な目にあった。4つの店のひと月の営業停止に、100万の慰謝料も損をした。
ドナイ候のしていることは黙っているから、その分のお金が欲しいと言ったそうだ。そしてセイン国との繋がりを匂わせておいたら、自分でも調べたようで、セイン国に自分も連れていって欲しいというようなことを言ったらしい。
もうそれ自分を処分してくれって言ってるようなものだと思うんだけど、ドナイ侯はひとまず、セインには連れて行けないが、どうやって探り出したのだと尋ねたらしい。
他に誰が知ってるかの確認だと思うけど、頼んでいたものは山崩れで死んだと、ぺちゃくちゃ喋ったそうだ。
ヴェルナーは自分が全てを排除していく、つまり処分を考える人なのに、自分だってそういう対象になるとは思わないのかね?
そこで生かしたと言うことは、ドナイ侯は何かあったら、全てをヴェルナーに被せる気だなとわたしたちは思った。けど、そうは問屋が下ろさない。いや、下ろさせない。
計画は違ってしまったけれど、ふたりにちゃんと罰を受けてもらうよ。
わたしたちはロサ経由で、ドナイ侯がユオブリアの土地情報をセイン国に売ろうとしていると密告した。セイン国にというのは、わたしたちの憶測だけど。
反響定位の魔具を作りたかったのだろうと思うけれど、それはできないだろうから、あの予備の魔具から得た情報を売るか、あの魔具を売るかすると思っている。
ロサからの話ではヴェルナーとドナイ侯それぞれに、監視の目がついたという。わたしたちはドナイ侯がセイン国と接触して、セイン国にユオブリアの土地の情報を渡した証拠が出たところで、姿を現す予定だ。
きっと言い逃れしようとするはずだからね。魔具のせいにするか、アラ兄のせいにするかはわからないけど、予備の間違った数値でしか表されない結果を本体の方に共有しているので、それを見せれば言い逃れできないはず。
本職の人たちが動いてくれているので、気持ち的に余裕が生まれていたんだけど、ドナイ侯孫娘を第4夫人にするというセイン国のミッナイト王子殿下がユオブリアに来るというから、雲行きが怪しくなってきた。
なぜかって、王族の荷物だけは中を見せてもらうことができないからだ。嘘の数値ではあるけれど、セインに情報を持っていかれるということだ。セインにその情報が行っている証拠がないと、ドナイ候を引っ張り出せない。
ドナイ侯がセイン国に繋がりがあるのもミッナイト殿下だろうな。ホアータ公爵家は次点だ。ドナイ侯とホアータ公の仲が良くて、ホアータ公がドナイ候の孫娘を養女にしてあげるから王子殿下に嫁げば?っていう話より、王子殿下であるミットナイト殿下が、ホアータ公にドナイ候の孫娘を王室に入れたいから養女にしてくれない?という方がありそうだってだけだけどね。上からの命令の方がありがちだ。
せっかく仕掛けたのに、このまま指をくわえて見ているしかないの?
お気に入りの木の根本で座り込んでいると、もふさまが顔をあげる。
わたしはグルーミングの手を止めた。
「行き詰まってるようだな。いつもウキウキしながらお遣いさまの毛繕いしてるのに、しかめっ面してるぞ」
「ギルバート……」
もふさまが首を捻って、わたしを見あげる。
そしてあくびをして、興味を失ったように前に向き直り、首をペタッと地面につけた。
もふさまの犬のフリは板についている。
「行き詰まった時はな、軌道修正ぐらいじゃ間に合わねーってここが警告してんだよ」
ギルバートはわたしの隣に腰をおろして、人差し指で自分の耳の上をコンコンと叩く。
「だからな思い切って作戦を変えるのがいいんだ。この場合、証拠が出揃うまで隠れてるって寸法だったことだな。それは陥れられたことも、山崩れのことも一気に炙り出せると思ったからだ。
でもそれが違っちまった。怪しくなった。だとしたら、俺らが死んだと思った奴らに度肝を抜かせてやろう。生きて帰還してやろうじゃねーか。
それに俺はこそこそしてるのは性に合わねぇ。悪い奴は引きずり出して、何をしでかしたか、しっかりわからせてやらないとな。人にやってもらうんじゃなくて、自分の手でやりたいもんだ」
あ、わたしもそうかも、とちょっと思った。
「それにしても、その王族はなんで来るんだろうな? 第4夫人を迎えに?」
「それはわからないみたい。まさかユオブリアの情報をもらうために、わざわざ来ないだろうと思うんだけど。だって、ドナイ候は目をつけられていることに気づいてないはずだもの」
ふたりでまた考え込んだのだが……。
でもそれにしても、本当になんだってミッナイト殿下はユオブリアに来るんだ?
予備の魔具で土地の強度を測った。お試しだったのだと思うけど、どこだと思う? 王都だよ。国境近くの街だとかじゃなくて、思い切り国の要の王都を。
もふもふ軍団からの情報で、いくつかわかってきた。
まずヴェルナー氏、ドナイ侯を脅すようなことをして、返り討ちにあって欲しかったのだが、ヴェルナーはドナイ候の隠していることに、大金が動く気配を感じたようだ。それでどうしたかというと、すり寄った。
ヴェルナーにアラ兄の魔具を手にした情報は流したから、あの兄妹を山崩れで埋もれさせたのは私だと、手柄を褒めてくれとばかりに言い募ったそうだ。
ドナイ侯に何が望みか尋ねられると、指示された通りに婚姻を結ぼうとして、散々な目にあった。4つの店のひと月の営業停止に、100万の慰謝料も損をした。
ドナイ候のしていることは黙っているから、その分のお金が欲しいと言ったそうだ。そしてセイン国との繋がりを匂わせておいたら、自分でも調べたようで、セイン国に自分も連れていって欲しいというようなことを言ったらしい。
もうそれ自分を処分してくれって言ってるようなものだと思うんだけど、ドナイ侯はひとまず、セインには連れて行けないが、どうやって探り出したのだと尋ねたらしい。
他に誰が知ってるかの確認だと思うけど、頼んでいたものは山崩れで死んだと、ぺちゃくちゃ喋ったそうだ。
ヴェルナーは自分が全てを排除していく、つまり処分を考える人なのに、自分だってそういう対象になるとは思わないのかね?
そこで生かしたと言うことは、ドナイ侯は何かあったら、全てをヴェルナーに被せる気だなとわたしたちは思った。けど、そうは問屋が下ろさない。いや、下ろさせない。
計画は違ってしまったけれど、ふたりにちゃんと罰を受けてもらうよ。
わたしたちはロサ経由で、ドナイ侯がユオブリアの土地情報をセイン国に売ろうとしていると密告した。セイン国にというのは、わたしたちの憶測だけど。
反響定位の魔具を作りたかったのだろうと思うけれど、それはできないだろうから、あの予備の魔具から得た情報を売るか、あの魔具を売るかすると思っている。
ロサからの話ではヴェルナーとドナイ侯それぞれに、監視の目がついたという。わたしたちはドナイ侯がセイン国と接触して、セイン国にユオブリアの土地の情報を渡した証拠が出たところで、姿を現す予定だ。
きっと言い逃れしようとするはずだからね。魔具のせいにするか、アラ兄のせいにするかはわからないけど、予備の間違った数値でしか表されない結果を本体の方に共有しているので、それを見せれば言い逃れできないはず。
本職の人たちが動いてくれているので、気持ち的に余裕が生まれていたんだけど、ドナイ侯孫娘を第4夫人にするというセイン国のミッナイト王子殿下がユオブリアに来るというから、雲行きが怪しくなってきた。
なぜかって、王族の荷物だけは中を見せてもらうことができないからだ。嘘の数値ではあるけれど、セインに情報を持っていかれるということだ。セインにその情報が行っている証拠がないと、ドナイ候を引っ張り出せない。
ドナイ侯がセイン国に繋がりがあるのもミッナイト殿下だろうな。ホアータ公爵家は次点だ。ドナイ侯とホアータ公の仲が良くて、ホアータ公がドナイ候の孫娘を養女にしてあげるから王子殿下に嫁げば?っていう話より、王子殿下であるミットナイト殿下が、ホアータ公にドナイ候の孫娘を王室に入れたいから養女にしてくれない?という方がありそうだってだけだけどね。上からの命令の方がありがちだ。
せっかく仕掛けたのに、このまま指をくわえて見ているしかないの?
お気に入りの木の根本で座り込んでいると、もふさまが顔をあげる。
わたしはグルーミングの手を止めた。
「行き詰まってるようだな。いつもウキウキしながらお遣いさまの毛繕いしてるのに、しかめっ面してるぞ」
「ギルバート……」
もふさまが首を捻って、わたしを見あげる。
そしてあくびをして、興味を失ったように前に向き直り、首をペタッと地面につけた。
もふさまの犬のフリは板についている。
「行き詰まった時はな、軌道修正ぐらいじゃ間に合わねーってここが警告してんだよ」
ギルバートはわたしの隣に腰をおろして、人差し指で自分の耳の上をコンコンと叩く。
「だからな思い切って作戦を変えるのがいいんだ。この場合、証拠が出揃うまで隠れてるって寸法だったことだな。それは陥れられたことも、山崩れのことも一気に炙り出せると思ったからだ。
でもそれが違っちまった。怪しくなった。だとしたら、俺らが死んだと思った奴らに度肝を抜かせてやろう。生きて帰還してやろうじゃねーか。
それに俺はこそこそしてるのは性に合わねぇ。悪い奴は引きずり出して、何をしでかしたか、しっかりわからせてやらないとな。人にやってもらうんじゃなくて、自分の手でやりたいもんだ」
あ、わたしもそうかも、とちょっと思った。
「それにしても、その王族はなんで来るんだろうな? 第4夫人を迎えに?」
「それはわからないみたい。まさかユオブリアの情報をもらうために、わざわざ来ないだろうと思うんだけど。だって、ドナイ候は目をつけられていることに気づいてないはずだもの」
ふたりでまた考え込んだのだが……。
でもそれにしても、本当になんだってミッナイト殿下はユオブリアに来るんだ?
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