585 / 916
14章 君の味方
第585話 ある意味モテ期⑦この姿でできること
しおりを挟む
伝達魔法で届いた手紙を苦労して読んだ。
床に手紙を置いて、テーブルの上から身を乗り出す。
読み終えて驚いたわたしはテーブルから落ちそうになり、レオに咥えられた。
お礼を言ってから、子犬もふさまの背中に乗せてもらって、父さまの仕事部屋に急いでもらう。
「と、と、と、父さま!」
呼びながら入っていくと、父さまは大慌てで、もふさまの前にひざまずく。
なんて言ってるかはわからないだろうけど、察してくれた。
「どうした?」
「アダじゃなくて、エンターさまが来る!」
もふもふ軍団に通訳してもらう。
「え? エンターくんが? なぜ?」
ああ、アダムが情報源なこと秘密なんだっけ。
えーっと、えーと。
「手紙送ったら、心配してきてくれたみたいで」
だってあの時はまだ、トカゲじゃなかったんだもん!
「お断りの手紙を出そう」
「もう、モロールにいるみたい」
「それでもだ。リディーが療養中だと送ろう」
父さまにわたし療養中で領地にいない伝達魔法を出してもらったのだが……アダムはやって来た。領民やオッケーを出した人以外弾かれる結界をものともせず。どうなってるの?
父さま、アラ兄、ロビ兄が対応してくれていたけど、〝お遣いさまの気配があるようですが〟と言われた時に、しらばっくれるのは無理だなと思った。
わたしはアオにこっそり動いてもらって、アダムを客間に通してもらうようお願いした。
父さまたちにもどうするつもりだ?と言われたけれど、出たとこ勝負だ。
もふさまに客間に連れて行ってもらう。
もふさまはわたしをテーブルの上にそっとおろす。
方向転換をしてアダムを見上げる。
アダムと目が合う。
「じょ、冗談ではなく? き、君、もしかしてリディア嬢? 呪い?」
さすがアダム。呪術師の話をして、居場所を知らないかと尋ね、やって来てみたら、わたしは療養中という。呪いでどうにかなったのかと思っていたのだろう。それできっと確かめに来たのだ。
そしてお遣いさまがトカゲを連れて来た。リディアと同じ瞳の色のトカゲを。
もふさまに通訳してもらう。お遣いさまの〝守護補佐〟という力でアダムとは話せるということにした。それにはアダムの魔力も使うのだと。
「もう一度、確認する。君、本当にリディア嬢なんだね」
「その通りよ。元の姿に戻れるかもしれない希望のあるうちは、このことを誰にも知られたくないの。他言無用で」
そう言うと、頷く。
「戻れるんだね?」
わたしは首を横に振った。
わからないし、すぐに眠ってしまって、トカゲに身も心も近づいているのを感じているのだと不安を口にすれば、気の毒そうに見られた。
「僕も数奇な運命な気がしてたけど、君には負けるよ」
と言われた。数奇さで張り合う気ないし。そうジト目で見れば
「その受け答えはまさしくリディア嬢だね。それでどうすれば呪いは解けるんだい? 呪術師の場所がわかれば倒しに行くの?」
そこらへんも実は全くわかっていなくて、ただ居場所は知っていたいから、もし情報があったら教えて欲しいんだと言っているうちに、寒くなって眠ってしまったみたいだ。
起きた時はアダムが帰った後だった。
急ピッチで、呪術師たちの居場所を突き止めると、もふさまに言ったそうだ。
その後、アダムは父さまとも話したらしい。
レオとアオの諜報部員が耳にしたのは、父さまはどうやら呪いをかけた人かその一味が、様子を見にくるだろうと踏み、それで一味を特定しようと考えたみたいだ。だから、わたしが療養中と公表しようと思ったんだ。発表前だけど、アダムが尋ねてきたから確認したっぽい。
アダムはわたしから呪術師の情報があったら教えてと手紙がきて、何があったのかと聞きに来たことにしたみたい。概ね合ってるね。
で、わたしにも言ったけど、何かわかったらすぐに伝えると言ったようだ。
そっか。呪った人はどうなってるんだろう? 成就したと思ってるのかな。そうだね、確かめにくるかもしれない。
誰が確かめにくるか、見届けたい気もするけどトカゲじゃ役立たずだ。
わたしは籠る場所を、兄さまの別荘とすることにした。
あそこが一番暖かいから。
遊びにくるのはダメだと兄妹たちに言った。
なんてったって、わたしこの姿だからね。もふもふ軍団たちだけと過ごすと。
そう視線を落とせば、トカゲの姿を家族といえども晒していたくないのだろうと受け取ったようで、言葉が少なくなる。
もし、何かあったり、連絡があったら、伝達魔法を使ってもらうことにした。
家族には内緒で、わたしは別荘のあるタニカ共和国からエレブ共和国へと移動した。
大きくなったレオに運んでもらう。わたしたちはリュックにおさまってね。
やはりこちらは暖かい。急に眠るのは避けることができそうだ。
さて、何するって? 潜入です!
グレーン農場にね。
ふふふん。まさにこの姿でないと難しいことだ。
わたしは〝やること〟を見い出して、張り切っていた。
床に手紙を置いて、テーブルの上から身を乗り出す。
読み終えて驚いたわたしはテーブルから落ちそうになり、レオに咥えられた。
お礼を言ってから、子犬もふさまの背中に乗せてもらって、父さまの仕事部屋に急いでもらう。
「と、と、と、父さま!」
呼びながら入っていくと、父さまは大慌てで、もふさまの前にひざまずく。
なんて言ってるかはわからないだろうけど、察してくれた。
「どうした?」
「アダじゃなくて、エンターさまが来る!」
もふもふ軍団に通訳してもらう。
「え? エンターくんが? なぜ?」
ああ、アダムが情報源なこと秘密なんだっけ。
えーっと、えーと。
「手紙送ったら、心配してきてくれたみたいで」
だってあの時はまだ、トカゲじゃなかったんだもん!
「お断りの手紙を出そう」
「もう、モロールにいるみたい」
「それでもだ。リディーが療養中だと送ろう」
父さまにわたし療養中で領地にいない伝達魔法を出してもらったのだが……アダムはやって来た。領民やオッケーを出した人以外弾かれる結界をものともせず。どうなってるの?
父さま、アラ兄、ロビ兄が対応してくれていたけど、〝お遣いさまの気配があるようですが〟と言われた時に、しらばっくれるのは無理だなと思った。
わたしはアオにこっそり動いてもらって、アダムを客間に通してもらうようお願いした。
父さまたちにもどうするつもりだ?と言われたけれど、出たとこ勝負だ。
もふさまに客間に連れて行ってもらう。
もふさまはわたしをテーブルの上にそっとおろす。
方向転換をしてアダムを見上げる。
アダムと目が合う。
「じょ、冗談ではなく? き、君、もしかしてリディア嬢? 呪い?」
さすがアダム。呪術師の話をして、居場所を知らないかと尋ね、やって来てみたら、わたしは療養中という。呪いでどうにかなったのかと思っていたのだろう。それできっと確かめに来たのだ。
そしてお遣いさまがトカゲを連れて来た。リディアと同じ瞳の色のトカゲを。
もふさまに通訳してもらう。お遣いさまの〝守護補佐〟という力でアダムとは話せるということにした。それにはアダムの魔力も使うのだと。
「もう一度、確認する。君、本当にリディア嬢なんだね」
「その通りよ。元の姿に戻れるかもしれない希望のあるうちは、このことを誰にも知られたくないの。他言無用で」
そう言うと、頷く。
「戻れるんだね?」
わたしは首を横に振った。
わからないし、すぐに眠ってしまって、トカゲに身も心も近づいているのを感じているのだと不安を口にすれば、気の毒そうに見られた。
「僕も数奇な運命な気がしてたけど、君には負けるよ」
と言われた。数奇さで張り合う気ないし。そうジト目で見れば
「その受け答えはまさしくリディア嬢だね。それでどうすれば呪いは解けるんだい? 呪術師の場所がわかれば倒しに行くの?」
そこらへんも実は全くわかっていなくて、ただ居場所は知っていたいから、もし情報があったら教えて欲しいんだと言っているうちに、寒くなって眠ってしまったみたいだ。
起きた時はアダムが帰った後だった。
急ピッチで、呪術師たちの居場所を突き止めると、もふさまに言ったそうだ。
その後、アダムは父さまとも話したらしい。
レオとアオの諜報部員が耳にしたのは、父さまはどうやら呪いをかけた人かその一味が、様子を見にくるだろうと踏み、それで一味を特定しようと考えたみたいだ。だから、わたしが療養中と公表しようと思ったんだ。発表前だけど、アダムが尋ねてきたから確認したっぽい。
アダムはわたしから呪術師の情報があったら教えてと手紙がきて、何があったのかと聞きに来たことにしたみたい。概ね合ってるね。
で、わたしにも言ったけど、何かわかったらすぐに伝えると言ったようだ。
そっか。呪った人はどうなってるんだろう? 成就したと思ってるのかな。そうだね、確かめにくるかもしれない。
誰が確かめにくるか、見届けたい気もするけどトカゲじゃ役立たずだ。
わたしは籠る場所を、兄さまの別荘とすることにした。
あそこが一番暖かいから。
遊びにくるのはダメだと兄妹たちに言った。
なんてったって、わたしこの姿だからね。もふもふ軍団たちだけと過ごすと。
そう視線を落とせば、トカゲの姿を家族といえども晒していたくないのだろうと受け取ったようで、言葉が少なくなる。
もし、何かあったり、連絡があったら、伝達魔法を使ってもらうことにした。
家族には内緒で、わたしは別荘のあるタニカ共和国からエレブ共和国へと移動した。
大きくなったレオに運んでもらう。わたしたちはリュックにおさまってね。
やはりこちらは暖かい。急に眠るのは避けることができそうだ。
さて、何するって? 潜入です!
グレーン農場にね。
ふふふん。まさにこの姿でないと難しいことだ。
わたしは〝やること〟を見い出して、張り切っていた。
70
お気に入りに追加
1,345
あなたにおすすめの小説

お姉様に恋した、私の婚約者。5日間部屋に篭っていたら500年が経過していました。
ごろごろみかん。
恋愛
「……すまない。彼女が、私の【運命】なんだ」
──フェリシアの婚約者の【運命】は、彼女ではなかった。
「あなたも知っている通り、彼女は病弱だ。彼女に王妃は務まらない。だから、フェリシア。あなたが、彼女を支えてあげて欲しいんだ。あなたは王妃として、あなたの姉……第二妃となる彼女を、助けてあげて欲しい」
婚約者にそう言われたフェリシアは──
(え、絶対嫌なんですけど……?)
その瞬間、前世の記憶を思い出した。
彼女は五日間、部屋に籠った。
そして、出した答えは、【婚約解消】。
やってられるか!と勘当覚悟で父に相談しに部屋を出た彼女は、愕然とする。
なぜなら、前世の記憶を取り戻した影響で魔力が暴走し、部屋の外では【五日間】ではなく【五百年】の時が経過していたからである。
フェリシアの第二の人生が始まる。
☆新連載始めました!今作はできる限り感想返信頑張りますので、良ければください(私のモチベが上がります)よろしくお願いします!

転生した愛し子は幸せを知る
ひつ
ファンタジー
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。
次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!
転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。
結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。
第13回ファンタジー大賞 176位
第14回ファンタジー大賞 76位
第15回ファンタジー大賞 70位
ありがとうございます(●´ω`●)
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

モブな私の学園生活
結々花
ファンタジー
日本人・OLの白山 椿は、異世界のシリクサーシェ王国伯爵家三女ミルフィー=ノルークに転生した。
貴族が通う学園卒業後は学園の修復職員に就職。数年後、学園には高位貴族の子息や令嬢が沢山入学してくることになる。
その生徒がおこす出来事を聞いたり見たりするうちに乙女ゲームに似ていることに気づいたミルフィーだが、自分はモブであると結論に至った。
そんな彼女は、乙女ゲームの登場人物らしい生徒が起こすイベントに巻き込まれながらも職務を全うしていく。
これは、そんな彼女の物語。
______
ミルフィー「あれっ?これ乙女ゲームのイベントに似てないか?」
同僚「何やってんですか、あんた」
※フィクションです。誤字脱字あると思います、教えていただければ幸いです。ご都合主義なところありますが、ゆる〜く読んでください。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる