381 / 849
9章 夏休みとシアター
第381話 完売御礼
しおりを挟む
「父さまも同じ考えだ」
庭で騒いでいたからだろう、父さまが家から出てきた。
「エリン、ノエル、父さまと少し話をしよう。リディー、母さまが話したがっていたよ」
わたしは「はい」と返事をした。
エリンとノエルが父さまと家に入っていき、魔物の山を収納袋に戻した。
母さまが話したがっているということだから、お風呂は後だ。兄さまたちにそう告げて部屋へと戻る。
途中で、長く勤めてくれてメイド長になったシエンナが飲み物を聞いてくれた。わたしは食事を取るまで少し休むから飲み物はいらないと伝えた。
部屋に入るともふもふ軍団がリュックから飛び出してくる。
一通り、どんなに活躍したかを聞いた。みんな誇らしいみたいで胸をそらしてキラキラした瞳で言ってくる。歓声をあげれば頬を上気させている。得意気な様子はギュッと抱きしめたくなる。最後はもふさまの番だ。控え目に戦いの描写はなしで数だけ告げてくる。尻尾は左右に揺れている。
もふさまの凄さは知っているけど、やっぱり凄いねーと感想をいえば尻尾が高速で動く。するとまたもふもふ軍団が自慢を始めたのでエンドレスだ。
わたしは母さまが待ってるから、また後で聞くねと一時中断してもらった。
サブサブハウスの仮想補佐であるドロシーに声をかける。
「ドロシー、母さまと連絡取れる? 時間が大丈夫だったらメインルームで話したいって伝えて」
『YES、マスター』
ドロシーは17、18歳のお嬢さんふう設定だ。
すぐに聞いてくれたみたいで、メインルームで落ち合うことになった。
「誰かきたら教えてね。ではメインルームに移動させて」
『YES、マスター』
もふさまともふもふ軍団とメインルームに移動した。
母さまはテーブルについていて、冷たいお茶もテーブルに整えられていた。
「母さま」
「リディー」
母さまは立ち上がって、わたしを抱きしめた。
「母さま、どうしたの?」
「大成功よ!」
「え?」
「化粧水、午前中で完売してしまったわ」
「え、本当に?」
「ええ、問い合わせが止まなくて、ホリーさんが追加できませんかって連絡してきたの。リディーが在庫はたっぷりあると言っていたから、明日にならお届けできると思うって言っておいたわ」
「うん、追加は大丈夫。でも、1000個出したんだよ、初日から売れたの?」
シュタイン領の人口は大体1300人。そのうち町の人口は900人。町の中でもアールの店がある店舗の多い町に住むのは700人ぐらいだ。ざっくりと半分が女性としても350人。そのうち化粧水を使う年齢の女性を半分よりは多めの65%とすると227人。全員が買ってくれるわけはないけど、200個売れたらすごいと思っていた。余っても収納袋に入れておいてその後少しずつ売っていけばいいし、最初は店を覆い尽くす勢いで今日は〝コレが推しです!〟て見ただけでわかるように、いっぱいの化粧水を並べることにした。志を大きく持つ意味でも初日に並べる総数を1000個と決めた。
「ホリーさんが前もって宣伝してくれていたみたいなの。それで近隣の町まで広まっていて、町の人なのに買えなかった方もいたようよ」
みんな意外に新しもの好きだった。
化粧水は1000ギルと高くもないけど安くもないし、未知のものだろうに。
っていうか、女性の〝美〟に対する意識ってのはいつの時代も変わらず、世界を超えても共通みたいだ。
「母さま、美白化粧水を売り出すの、早めてもいいかもね。それから化粧品の開発を進めよう」
こういうのは勢いが大事だ。
「そうね、リディーの〝ファンデーション〟あれ、よかったわ。化粧崩れもしなかったし、それでいて肌に負担も少ないようだわ」
元々あったおしろいに鑑定をかけてそれらの成分を安全そしてさらに優秀なものに変えていった。油分を入れるのも〝おしろい〟との違い。決め手は鉱物の粉だった、鑑定では体に害がないものばかりだけど、ちょっと不安で安全性を確かめるのに実験をしていた関係で、なかなか進みが遅かった。基本ができたら、あとは色味を少しずつ変え、肌の色に合わせて選べるようにするつもりだ。
ちなみにクレンジングは先に出来上がっている。
口紅は、ダンジョンで見つけた植物がなんとも都合がよかった。
名前は〝ベニバナ〟といった。葉っぱがもったりしている透明なジェルのようなもので覆われている。ベニバナは食べられる花だ。そのジェル状なものをもふもふ軍団が食べると、口が色づいて艶々になった。それでこれ、使えるのではと思ったのだ。ベニバナは赤い花が咲くんだけど、葉を覆うジェル状の液にその汁を混ぜるとほんのりピンクになった。汁の量を調整すれば、どぎつい赤からリップぐらいのほんのりピンクもできた。
ファンデーションのように油分を加えない〝お粉〟には、貝の粉を混ぜてキラリとさせたり、植物や鉱物から取った色をつけた。これで絵心がある人が顔に美しいパーツの絵を描くと劇的に美しい顔になる。アイシャドウ、頬紅として活躍予定だ。
色をのせるだけでも十分違うしね。
でもまずみんなに化粧の基本となるスキンケアの概念を身につけてもらわないと!
美容用品で確かな手応えを感じていた。
庭で騒いでいたからだろう、父さまが家から出てきた。
「エリン、ノエル、父さまと少し話をしよう。リディー、母さまが話したがっていたよ」
わたしは「はい」と返事をした。
エリンとノエルが父さまと家に入っていき、魔物の山を収納袋に戻した。
母さまが話したがっているということだから、お風呂は後だ。兄さまたちにそう告げて部屋へと戻る。
途中で、長く勤めてくれてメイド長になったシエンナが飲み物を聞いてくれた。わたしは食事を取るまで少し休むから飲み物はいらないと伝えた。
部屋に入るともふもふ軍団がリュックから飛び出してくる。
一通り、どんなに活躍したかを聞いた。みんな誇らしいみたいで胸をそらしてキラキラした瞳で言ってくる。歓声をあげれば頬を上気させている。得意気な様子はギュッと抱きしめたくなる。最後はもふさまの番だ。控え目に戦いの描写はなしで数だけ告げてくる。尻尾は左右に揺れている。
もふさまの凄さは知っているけど、やっぱり凄いねーと感想をいえば尻尾が高速で動く。するとまたもふもふ軍団が自慢を始めたのでエンドレスだ。
わたしは母さまが待ってるから、また後で聞くねと一時中断してもらった。
サブサブハウスの仮想補佐であるドロシーに声をかける。
「ドロシー、母さまと連絡取れる? 時間が大丈夫だったらメインルームで話したいって伝えて」
『YES、マスター』
ドロシーは17、18歳のお嬢さんふう設定だ。
すぐに聞いてくれたみたいで、メインルームで落ち合うことになった。
「誰かきたら教えてね。ではメインルームに移動させて」
『YES、マスター』
もふさまともふもふ軍団とメインルームに移動した。
母さまはテーブルについていて、冷たいお茶もテーブルに整えられていた。
「母さま」
「リディー」
母さまは立ち上がって、わたしを抱きしめた。
「母さま、どうしたの?」
「大成功よ!」
「え?」
「化粧水、午前中で完売してしまったわ」
「え、本当に?」
「ええ、問い合わせが止まなくて、ホリーさんが追加できませんかって連絡してきたの。リディーが在庫はたっぷりあると言っていたから、明日にならお届けできると思うって言っておいたわ」
「うん、追加は大丈夫。でも、1000個出したんだよ、初日から売れたの?」
シュタイン領の人口は大体1300人。そのうち町の人口は900人。町の中でもアールの店がある店舗の多い町に住むのは700人ぐらいだ。ざっくりと半分が女性としても350人。そのうち化粧水を使う年齢の女性を半分よりは多めの65%とすると227人。全員が買ってくれるわけはないけど、200個売れたらすごいと思っていた。余っても収納袋に入れておいてその後少しずつ売っていけばいいし、最初は店を覆い尽くす勢いで今日は〝コレが推しです!〟て見ただけでわかるように、いっぱいの化粧水を並べることにした。志を大きく持つ意味でも初日に並べる総数を1000個と決めた。
「ホリーさんが前もって宣伝してくれていたみたいなの。それで近隣の町まで広まっていて、町の人なのに買えなかった方もいたようよ」
みんな意外に新しもの好きだった。
化粧水は1000ギルと高くもないけど安くもないし、未知のものだろうに。
っていうか、女性の〝美〟に対する意識ってのはいつの時代も変わらず、世界を超えても共通みたいだ。
「母さま、美白化粧水を売り出すの、早めてもいいかもね。それから化粧品の開発を進めよう」
こういうのは勢いが大事だ。
「そうね、リディーの〝ファンデーション〟あれ、よかったわ。化粧崩れもしなかったし、それでいて肌に負担も少ないようだわ」
元々あったおしろいに鑑定をかけてそれらの成分を安全そしてさらに優秀なものに変えていった。油分を入れるのも〝おしろい〟との違い。決め手は鉱物の粉だった、鑑定では体に害がないものばかりだけど、ちょっと不安で安全性を確かめるのに実験をしていた関係で、なかなか進みが遅かった。基本ができたら、あとは色味を少しずつ変え、肌の色に合わせて選べるようにするつもりだ。
ちなみにクレンジングは先に出来上がっている。
口紅は、ダンジョンで見つけた植物がなんとも都合がよかった。
名前は〝ベニバナ〟といった。葉っぱがもったりしている透明なジェルのようなもので覆われている。ベニバナは食べられる花だ。そのジェル状なものをもふもふ軍団が食べると、口が色づいて艶々になった。それでこれ、使えるのではと思ったのだ。ベニバナは赤い花が咲くんだけど、葉を覆うジェル状の液にその汁を混ぜるとほんのりピンクになった。汁の量を調整すれば、どぎつい赤からリップぐらいのほんのりピンクもできた。
ファンデーションのように油分を加えない〝お粉〟には、貝の粉を混ぜてキラリとさせたり、植物や鉱物から取った色をつけた。これで絵心がある人が顔に美しいパーツの絵を描くと劇的に美しい顔になる。アイシャドウ、頬紅として活躍予定だ。
色をのせるだけでも十分違うしね。
でもまずみんなに化粧の基本となるスキンケアの概念を身につけてもらわないと!
美容用品で確かな手応えを感じていた。
95
お気に入りに追加
1,264
あなたにおすすめの小説
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍化決定
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜
白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます!
➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる