プラス的 異世界の過ごし方

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8章 そうしてわたしは恋を知る

第321話 初試験の結果

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「どうだった?」

 レニータが真剣な顔でわたしに尋ねる。周りのみんなが一斉にわたしを見た。

「できた……と思う」

 わーと教室が沸く。
 軽く答え合わせをしたが、どれもそれなりにいい点だと思う。

 わたしに教えるためにみんなも勉強を頑張っていたからか、清々しい顔をしている。
 3日に渡った1年生初の試験が終了した。
 明日と明後日で結果が分かり、その後1週間は試験休みとなる。
 補習にならなければ。

 試験休みの1日目はクジャク侯爵家で食事会がある。セローリア令嬢とヤーガン令嬢とふたりの保護者を巻き込んだものだ。どちらのオッケーももらっている。
 これでテストは終わったから、ふたりへの贈り物に取り掛かれる。

 食事会が終わったら、父さまと対策を練ろう。風評被害が起きていた。王都でウチの食品を売る店は閑古鳥が鳴き、父さまとホリーさんが相談して店を一時的に閉めた。こちらの都合で休むので、従業員さんにはその間分の給金を払うという。バッグの店はウチのだと周知されてないのか、被害はない。リンスやその他のものも大丈夫だそうだ。食品だけ売れなくなった。食品が売れないのは大打撃のはずだが、父さまは心配してなかった。従業員さんたちにゆっくり休みをやれると喜んでいるぐらいだ。手紙じゃ埒があかないので、父さまと直にあって話さないとね。

 テスト勉強のみんなへのお礼は食事で腕をふるうことになっている。
 お礼だから魔物のお肉を奮発しよう。
 ステーキ、煮込み、揚げ焼き……何がいいかな? あ、コロコロお肉を入れた炒飯にしようかな。野菜で包んで食べればお肉がいっぱいでも胃もたれしないし。スープは野菜のポタージュでこってりさせて、それとキッシュを作ろうかな。あとは酸味をきかせたサラダにしよう。デザートはプリンだ!
 よし、決めた。

 そんな話をしていると男の子たちも食べたいと言うので、寮父のトムさんや男子寮の料理人の方と相談して、合同で作ることになった。料理人の方たちと男子寮の厨房で用意をさせてもらった。みんな料理が好きな人たちだから、学ぶこともあって面白い。わたしの味つけもものすごく興味を持って、こうしたらもっと染み込むのでは? など意見も飛び交い、わたしにとっても有意義なものになった。ある程度すんだところで、わたしはデザートを作るために女子寮の厨房に引きこもらせてもらった。一応売り物にもしているから、レシピは簡単には明かせないんだ。
 厨房を締め切ったので、もふもふ軍団をのびのびさせて、先にご飯を食べてもらう。

「リディア、このニンジのサラダおいしーでち」

 アオにキャロットラペを褒められた。ダンジョン産のオレンジがいい仕事するんだよね。みつけた粒マスタードもたんまりいれている。

『お肉の入ったご飯好き』
『おいしい!』

 ふふふ、バターとお醤油でコクを出してるからね!

『このスープはまた優しいお味ですねぇ』

 ベアは気にいると思った。隠し味にブンブブンの蜜を入れてるからね。

『私はこれが気に入ったぞ。卵だよな? 卵がプリプリだ』

 そう、そのプルフワの卵としょっぱいパイ生地と一緒にアムっとすると、すっごくおいしいんだよね。キッシュも大好きだ。

『リディア……我も』

 夕飯の時にわたしと一緒に食べるから今は食べないと言ったもふさまも、見ていて食べたくなってしまったみたいだ。

「今食べて、夕飯の時に食べなくていいの?」

 もふさまは考え込んでいる。

「じゃあ、軽く食べる? 炒飯に使ったお肉の残りを使う一品になるけど」

『なになに?』

 もふさまじゃなくて、レオに聞かれる。

「骨にしがみついているお肉、骨のキワは取りにくいんだけど、ちゃんとおいしいんだよ。これ見目は悪いけど、こうやってこそげ取って」

 薄くスライスしたパンに、葉っぱ野菜とお肉、マヨ醤油ソースを挟んで、サンドイッチだ。
 はいっとお皿に入れて出すと、もふさまは一口で飲み込んじゃった。

『うまいな。パンに挟むには分厚い肉もいいが、こういう細切れになったものをギュッと詰め込んで食べるのもいい。味は間違いない』

『リディア、私も食べたい』

「おいらも!」

 レオが言ったのを皮切りに、みんなも食べたいというので、全員分のサンドイッチを作ることになった。骨にこびりついたお肉も無駄なく使えてよかったんだけどさ。

 そんなことをしているうちにプリンも固まったようなので、半分は男子寮に持って行こう。男子寮の分は大きな器に15個作った。料理人の方々に取り分けてもらおう。女子は見栄えも味のひとつになるので、ガラスの器に入れて作った。細やかな気配りだわ、わたし。

 お礼のご飯は大成功だった! もふもふ軍団の反応もよかったから、心配はしてなかったんだけど。一緒に食べたもふさまも、あっという間に平らげて。
 寮のみんなは大絶賛してくれた。この日は特別とレノアやローマンおばあちゃんとも一緒に食べた。喜んでもらえた。次の日男子からもおいしかったと興奮したように言ってもらえた。

 テストがどんどん返されて、次の日には各学年上位50人の名前が張り出された。1年生はD組36人名前が全員載るという快挙だ。A組を差し置いて上位を占領だ。クラスの中ではジョセフィンが1位で、わたしは3位。学年総合では8位だった。もちろん補習はなし! わーい、1週間のお休みだ!

 それにしてもダリアには頑張ったねと泣かれて参った。本当にみんなわたしを心配してくれていたようだ。貴族の中で一番点数が低かった入園試験に、ひと月授業を受けていない。冬のアベックス寮との対決までまだ時間はあるけれど、最初からつまづいたらという不安もあったのだろう。

「でもさ、確かに詰め込んで勉強はしたけどさ」

 ジョセフィンは少し考えてから言った。

「ねぇ、リディア。入園試験のとき、何かあったの?」

「何かって?」

 聞いている意味がわからないとキャシーがジョセフィンに尋ねる。

「いくら今回頑張ったっていっても、全教科、ひと月も授業に出ていないのに、補講も1回で切り抜けたし。本当はリディア、試験ができてるんじゃないかなって思ったの。回答欄をずらして答えを書いたとか。答えの文字が間違っていたとか」

 そろっとみんながわたしに視線を移す。

「実は、遅刻したの」

「ち……こく?」

「うん。事情があって、遅れて試験を受けたの。だから、時間が足りなくて……」

「途中から受けて、受かったの?」

「あ、え、うん」

「席につけ」

 先生がのんびりした調子で言う。

「シュタインの入園試験のことが気になっているようだな。事情があって遅刻したんだ。残り15分で試験を受けた。解いたところは全問正解だった」

 バッと後ろの席のわたしをみんなが振り返る。

「遅れてきたゆえに正しい答えがわかったのかと疑問が持たれないよう、後日、入園試験の結果には加味されることはないが、不正をしていないかがわかるよう試験を行った。満点だった」

「なんだ、最初から言ってよ! 本当に心配したんだから」

 そうだそうだとブーイングが起こる。

「ごめん。ここで習ったことの試験ができるかはわからなかったから……」

「変なところで謙虚なんだから」

 レニータの呟きに、みんなが頷いた。
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