プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
95 / 849
3章 弱さと強さと冬ごもり

第95話 ファーストコンタクト⑥ハウス

しおりを挟む
『マスター、微弱な意思が話しかけてきています』

 え? タボさん? アナウンスはあっても、タボさんの方から話しかけてくるなんてこと、今までなかったのに。

『リディア、どうした?』

「タボさんが、微弱な意思、話しかけて、きてるって」

『繋ぎをとってもらえ。我にも通じるようにしてくれ。何かしないとこの部屋からは出られそうにないからな』

 そうだね、ドアないもん。

「タボさん、繋いで。あと、もふさまも、聞こえるよう、して」

『Yes、マスター。微弱な意思とコネクトを開始します。ピーーーーーーー。あちらの魔力が足りません。マスター、魔力の〝付・与〟の、許可を』

「許可、します」

『魔力、付与。コネクト継続。ピーーーーーーー。探索3の機能が使えるようになりました。変換します。〝翻・訳〟作動』

『音声出力クリア。私はメインハウス・デス。新マスターは名前登録をお願いシマス』

 タボさんとはまた違う声だ。

『リディア、名前を言ってみろ』

 わたしはじとっと、もふさまを見た。

「この流れ、名前、言ったら、マスターなる、気がする」

『わかっているじゃないか』

「ダメ。父さま、相談する。タボさん、この部屋出る方法、わかる?」

『メインハウスの意思が微弱すぎるため、情報は導き出せません』

「わたし、魔力、もっと付与する」

『魔力は十分に付与しましたが、マスターと繋がらないと、本来の力が出しきれないようです』

『ほら、リディア、仕方ないだろう?』

 もふさまは面白がっている。

「わたし、名前、リディア」

『新マスター、リディア。音声認証、虹彩認証、静脈認証、クリア。新マスター仕様に調整します』

 虹彩や静脈認証って、めちゃくちゃハイテクじゃない?
 また部屋が青く光った。思わず目をつむる。目を開けると……部屋はわたしに優しい仕様になっていた。

 石造りの冷たい感じのする部屋が、木の温もりを感じさせる木造りになっている。下には絨毯が敷き詰められ、わたしが転んだりしても痛くないように、低い箇所には布のようなもので覆いがされている。そこまで赤ちゃんじゃないけど。本棚は同じだったが、どこからか踏み台が現れ、高い所にある本も取れるよう配慮され、机はわたしが座るのにちょうどいいサイズのものになっていた。

『マスター・リディア、気に入りましたか?』

 さっきと違う女性のような声だ。

「さっきと、声、違う」

『マスター・リディアが小さなお嬢さまでしたので、こちらの声にしてみました。先ほどの方がよろしいようでしたら』

「そのままで、いい、です」

『承知いたしました』

「質問、いいですか?」

『はい、なんなりと』

「この部屋はなんなのですか?」

『ここはハウスのメインルームです。前マスターは、ここで私と話したり、魔道具を作っていました』

「前マスターさん、どうした、ですか?」

『ひと月来なかったら、寿命が尽きたと思え。マスターに相応しい新たな者が来たら、新マスターに従うように言われております』

 亡くなったのか。

「わたし、マスター、いいんですか?」

『この部屋に入れるのは魔力が5000以上の者のみです。魔力量もたっぷりですね。魔力を付与していただき、気づきました。この地に〝魔〟を吹き込んでくれたのは、マスター・リディアだったのですね』

『魔を吹き込んだとは?』

『マスター・リディアの記憶より、聖獣・もふさまとお呼びしていいのでしょうか?』

「記憶?」

『はい、マスター。私は浅い記憶を読み取ることができます』

 ええっ。なんかそれ、どきどきするんですけど。

『もふさまでいいぞ』

 もふさまが許した。

『ありがとうございます。吹き込んだとは、言葉通りの意味でございます。前マスターが訪れなくなってから200年経った頃でしょうか。魔力を消費しないように過ごしておりましたが、それも限界値をこえ、私は眠りにつきました。それがある日、この地に淀みのひとつもない上質な魔力が〝祝印〟されたのでございます。その日から、少しずつ魔力が流れてくるようになりました』

 もふさまがわたしをじっと見る。

「なに?」

『祝印したのか?』

「祝印、なに?」

『大地に口移しで魔力を与えたのか?』

 は?

「そんなこと……」

 ん? 口移しというか……。

「顔から、転んだ、ある」

 引っ越してきた当日で、前世を思い出してすぐだった気がする。いきなり転んで……。

「でも、もふさまと、会う前。まだ魔力通ってない。わたし、違う」

『いいえ、マスター・リディアの魔力です。間違いなく。マスター・リディアから漏れてくる魔力で少しずつ機能が回復してきました。でもコンタクトを取れるほどではなかった。繋いでくださった〝仮想補佐〟さまにも感謝申し上げます』

『いえ、私はマスターのほんの、お・〝手伝い〟をしているだけで。私のことはタボとお呼びください』

『それでは、タボ、私のことはハウスとお呼びください』

『ハウス、それでは、マザーチップを〝交換〟しませんか?』

『私からお願いをしようと思っていました』

 友情!? なに、なんか芽生えてる? 
 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

『マスター、これで私たちは離れていても連結が取れるようになりました』

 LINE交換みたいな感じ?
 嬉しそうなタボさんの弾んだ声だ、初めて聞いた。

「この部屋、来たい時、出たい時、どうすればいい?」

『タボに言うのでも、私に言っていただくのでも。家の中でしたら、末端・壁を触りメインルームと思っていただければ大丈夫です。部屋に帰りたい時は、そうおっしゃってください』

「ってことは、家、以外から、でも?」

『そこまで離れていなければ、可能です』

 それ凄くない? マズいことあったらここに転移できるってことだよね? 逃げ込めるってことだよね?

「わたしだけ?」

『本来ならマスターのみに許すことですが……上質な魔力をいただいているので、可能なこともあると思います。もふさまは魔力が並外れておりますので問題ありません。他はどのような方を?』

「家族」

『家族、ですか?』

『データ、共有』

 ハウスさんとタボさんが同時に言った。

『ああ、なるほど。んー、まあ、なんとかしましょう。3日ください』

 人っぽいやりとりだ。

「ありがと」

『マスターが私なんぞに礼を!』

 ええ?
 机の上が花でいっぱいになった。

『マスター・リディア。いつでもいらしてくださいね』

「あ、さっきの、モニター、なに?」

『モニター?』

「映像、流れた」

『映像……ああ、マスターが〝王子いうことわかれば〟とおっしゃっていたので、端末が記憶していた信号を映像化してみました。王子とやらは違っていましたか?』

「あ、ううん。王子、合ってる」

 そうか、はからず覗き見しちゃったみたいだけど、あれは実際に話していたことか。

『マスター、母君が部屋をノックしています』

 わたしは部屋に戻してとお願いした。



+++++++++++++++

名前:リディア・シュタイン(5) 人族 
性別:女
レベル:1
職業:???
HP:55/57
MP:5003/5137
力:13
敏捷性:15
知力:75
精神:77
攻撃:15
防御:15
回避:90
幸運:82
スキル:生活魔法(火A・水A・土A・風A・光S・無SS)
    自動地図作成(レベル5)
    探索(レベル3)
    仮想補佐(タボ・レベル13)
    隠蔽(レベル1)
    付与(レベル1)
    鑑定(レベル2)
    翻訳(レベル1) 
    仮想補佐網・創造(ハウス・レベル53)
ギフト:+

UP
MP +130
自動地図作成 レベルアップ
探索     レベルアップ
仮想補佐   レベルアップ
鑑定     レベルアップ
スキル追加:翻訳
      仮想補佐網・創造
+++++++++++++++
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。 偶然にも居合わせてしまったのだ。 学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。 そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。 「君を女性として見ることが出来ない」 幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。 その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。 「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」 大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。 そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。 ※ ゆるふわ設定です。 完結しました。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜

白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます! ➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

私はモブのはず

シュミー
恋愛
 私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。   けど  モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。  モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。  私はモブじゃなかったっけ?  R-15は保険です。  ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。 注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

処理中です...