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第二章
35. どどーんと登場
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パーティが始まった。
入場口から次々とカップルが姿を現していく。
初々しい生徒たちがレッドカーペットの上を歩く。
彼らの入場を上級生たちは微笑ましい目で見ていた。
特に目立っていたのは、2つのカップルだ。
一つはエリザベスのカップル。
男のほうは伯爵家の長男であり、それほど目立つ存在でない。
だが、エリザベスがとにかく目立つのだ。
燃えるような赤髪と、真紅のドレス。
そしていつも以上にしっかりと巻かれた縦ロール。
華やかだ。
エリザベスの容姿も衣装に負けないほど整ったものであり、強烈な個性を放っていた。
もう一つの目立つカップルはセリーヌ&フレディである。
普段はおかっぱで目を隠し気味のセリーヌだが、今日はしっかりと髪を上げてきている。
そうしていると、セリーヌが中々の美人だと伺える。
さらに、セリーヌの相手であるフレディ。
彼は文句なしのイケメンだ。
第一学年で一番華がある男と言えばフレディである。
優雅な身のこなしは、最近の剣術鍛錬のおかげで一層洗練されている。
フレディの笑みが多くの女子生徒の心を掴んでいた。
この2つのカップルがパーティの中心になっていたのだが。
生徒たちは、まだとあるカップルが登場していないこを不審に思っていた。
それはフローラとノーマンのカップルである。
絶世の美少女フローラと、学園の貴公子ノーマン。
このカップルがパーティの主役になるだろう、と誰もが思っていた。
しかし彼らは姿を見せていない。
そしてカップルの入場が終わり、とうとう最後まで二人は姿を現さなかった。
大勢の生徒ががっかりと肩を落とす。
生徒会長であるハリーはそんな会場の落胆を肌で感じ取っていた。
その落胆を吹き飛ばすように、彼は壇上に上がる。
スポットライトがハリーを照らすと、生徒たちは一斉にハリーを見た。
ハリーはそこに立っているだけで視線を集める。
人々を惹き付けるカリスマ性があるのだ。
「本日は生徒会主催の新入生歓迎パーティにお越し下さり、ありがとうございます」
生徒会長が丁寧な言葉で話し始める。
そうして生徒会長が話すと、ほとんどの生徒の頭からフローラたちのことが抜けていった。
しかし、ハリーの話に耳を傾けられない生徒もいる。
その一人がエリザベスだ。
彼女は気が気ではなかった。
エリザベスはフローラ&ノーマンのカップルが見られるのを、誰よりも楽しみにしていた。
素晴らしい友人。
尊敬する兄上。
二人の姿をみんなに見せつけたい、と彼女は考えていた。
だからこそ、会場に姿を現さないフローラとノーマンをエリザベスは心配していた。
――何かトラブルがあったのでしょうか?
エリザベスはそわそわし始める。
今すぐにでもパーティ会場を出て、フローラたちを探しにいきたい気分だった。
そんなエリザベスの心配を他所にハリーの話は続いていく。
「さて皆様。そろそろ私の話にも飽きてきたことでしょう。ここで一つ大きなサプライズを用意しました」
そうハリーが言うと、皆が期待の目をハリーに向けた。
何が始まるのか?
そんな期待が会場全体に溢れたときだ。
突如として会場の明かりが消された。
ざわざわ、とざわめきが場を支配する。
次の瞬間。
スポットライトがある一点に当てられた。
自然と生徒たちの目が光の方向に向けられた。
会場が驚愕に包まれる。
そこには一組のカップルがいた。
男のほうはノーマン。
黒を基調にしたスタイリッシュなタキシード。
彼は貴公子として堂々たる立ち振舞をしていた。
そして、もう一人。
フローラ・メイ・フォーブズ。
彼女は体のラインに沿ったドレスを着ていた。
今の流行りとされる綺羅びやかさや凝ったデザインはなく、とてもシンプルなドレスである。
スカートも横長ではない。
加えて現在のローウエストとは逆のハイウエストのドレスだ。
それは現在のファッションに対する挑戦である。
人間本来の美しさを現したドレスの型だ。
「なんと……美しい」
「天界から降臨された女神のようだ」
革新的なものを披露したときとは、反対意見が多くなりがちである。
しかし、今回はそうならなかった。
それはひとえに、フローラの美しさにある。
人間本来の美しさを強調したドレスだが、美貌の少女フローラが着ることによって、ドレスはより一層輝く。
またフローラの人望も大きく作用していた。
彼女の人となりを知っている者はフローラの姿を好意的に受け止めた。
さらに、ここが学生のパーティであるのも大きな要因であった。
若い者たちは刺激的なものを求める。
もし学生パーティでなければ大人たちによる猛反発があったかもしれない。
「まあなんて斬新なこと。素晴らしいファッションセンスだわ」
そうエリザベスが呟いたおかげで否定的な意見はさらに少なくなる。
加えて、このパーティに平民が多く出席していることも大きかった。
お金のかかったドレスを着る貴族に対し、嫌悪感を抱く平民は多い。
パーティの度にドレスを変え、さらに一度着たドレスを二度と着ないなんてザラにある。
そんな貴族の贅沢に辟易している平民が多かった。
それと比較してフローラのドレスは長閑な田舎を連想させられるようなシンプルなデザインである。
「俺の妹もあんな服着ていたな」
「何バカなこと言ってんだよ。お前の貧乏な家の服とフローラ様のドレスを一緒にするんじゃない」
「あははっ、それもそうか」
「それにしても、あのドレスは良いな」
そんな会話が聞こえてくる。
平民生徒たちはフローラの衣装を好意的に受け止めていた。
いくつかの理由が重なり、フローラの革新的なファッションは生徒たちに認められたのだった。
入場口から次々とカップルが姿を現していく。
初々しい生徒たちがレッドカーペットの上を歩く。
彼らの入場を上級生たちは微笑ましい目で見ていた。
特に目立っていたのは、2つのカップルだ。
一つはエリザベスのカップル。
男のほうは伯爵家の長男であり、それほど目立つ存在でない。
だが、エリザベスがとにかく目立つのだ。
燃えるような赤髪と、真紅のドレス。
そしていつも以上にしっかりと巻かれた縦ロール。
華やかだ。
エリザベスの容姿も衣装に負けないほど整ったものであり、強烈な個性を放っていた。
もう一つの目立つカップルはセリーヌ&フレディである。
普段はおかっぱで目を隠し気味のセリーヌだが、今日はしっかりと髪を上げてきている。
そうしていると、セリーヌが中々の美人だと伺える。
さらに、セリーヌの相手であるフレディ。
彼は文句なしのイケメンだ。
第一学年で一番華がある男と言えばフレディである。
優雅な身のこなしは、最近の剣術鍛錬のおかげで一層洗練されている。
フレディの笑みが多くの女子生徒の心を掴んでいた。
この2つのカップルがパーティの中心になっていたのだが。
生徒たちは、まだとあるカップルが登場していないこを不審に思っていた。
それはフローラとノーマンのカップルである。
絶世の美少女フローラと、学園の貴公子ノーマン。
このカップルがパーティの主役になるだろう、と誰もが思っていた。
しかし彼らは姿を見せていない。
そしてカップルの入場が終わり、とうとう最後まで二人は姿を現さなかった。
大勢の生徒ががっかりと肩を落とす。
生徒会長であるハリーはそんな会場の落胆を肌で感じ取っていた。
その落胆を吹き飛ばすように、彼は壇上に上がる。
スポットライトがハリーを照らすと、生徒たちは一斉にハリーを見た。
ハリーはそこに立っているだけで視線を集める。
人々を惹き付けるカリスマ性があるのだ。
「本日は生徒会主催の新入生歓迎パーティにお越し下さり、ありがとうございます」
生徒会長が丁寧な言葉で話し始める。
そうして生徒会長が話すと、ほとんどの生徒の頭からフローラたちのことが抜けていった。
しかし、ハリーの話に耳を傾けられない生徒もいる。
その一人がエリザベスだ。
彼女は気が気ではなかった。
エリザベスはフローラ&ノーマンのカップルが見られるのを、誰よりも楽しみにしていた。
素晴らしい友人。
尊敬する兄上。
二人の姿をみんなに見せつけたい、と彼女は考えていた。
だからこそ、会場に姿を現さないフローラとノーマンをエリザベスは心配していた。
――何かトラブルがあったのでしょうか?
エリザベスはそわそわし始める。
今すぐにでもパーティ会場を出て、フローラたちを探しにいきたい気分だった。
そんなエリザベスの心配を他所にハリーの話は続いていく。
「さて皆様。そろそろ私の話にも飽きてきたことでしょう。ここで一つ大きなサプライズを用意しました」
そうハリーが言うと、皆が期待の目をハリーに向けた。
何が始まるのか?
そんな期待が会場全体に溢れたときだ。
突如として会場の明かりが消された。
ざわざわ、とざわめきが場を支配する。
次の瞬間。
スポットライトがある一点に当てられた。
自然と生徒たちの目が光の方向に向けられた。
会場が驚愕に包まれる。
そこには一組のカップルがいた。
男のほうはノーマン。
黒を基調にしたスタイリッシュなタキシード。
彼は貴公子として堂々たる立ち振舞をしていた。
そして、もう一人。
フローラ・メイ・フォーブズ。
彼女は体のラインに沿ったドレスを着ていた。
今の流行りとされる綺羅びやかさや凝ったデザインはなく、とてもシンプルなドレスである。
スカートも横長ではない。
加えて現在のローウエストとは逆のハイウエストのドレスだ。
それは現在のファッションに対する挑戦である。
人間本来の美しさを現したドレスの型だ。
「なんと……美しい」
「天界から降臨された女神のようだ」
革新的なものを披露したときとは、反対意見が多くなりがちである。
しかし、今回はそうならなかった。
それはひとえに、フローラの美しさにある。
人間本来の美しさを強調したドレスだが、美貌の少女フローラが着ることによって、ドレスはより一層輝く。
またフローラの人望も大きく作用していた。
彼女の人となりを知っている者はフローラの姿を好意的に受け止めた。
さらに、ここが学生のパーティであるのも大きな要因であった。
若い者たちは刺激的なものを求める。
もし学生パーティでなければ大人たちによる猛反発があったかもしれない。
「まあなんて斬新なこと。素晴らしいファッションセンスだわ」
そうエリザベスが呟いたおかげで否定的な意見はさらに少なくなる。
加えて、このパーティに平民が多く出席していることも大きかった。
お金のかかったドレスを着る貴族に対し、嫌悪感を抱く平民は多い。
パーティの度にドレスを変え、さらに一度着たドレスを二度と着ないなんてザラにある。
そんな貴族の贅沢に辟易している平民が多かった。
それと比較してフローラのドレスは長閑な田舎を連想させられるようなシンプルなデザインである。
「俺の妹もあんな服着ていたな」
「何バカなこと言ってんだよ。お前の貧乏な家の服とフローラ様のドレスを一緒にするんじゃない」
「あははっ、それもそうか」
「それにしても、あのドレスは良いな」
そんな会話が聞こえてくる。
平民生徒たちはフローラの衣装を好意的に受け止めていた。
いくつかの理由が重なり、フローラの革新的なファッションは生徒たちに認められたのだった。
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