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第一章
12. 誰もが勘違い
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フローラがフレディをいけ好かないやつだと考えているとき。
逆にフレディはフローラが初なために萎縮していると考えていた。
ハモンド伯爵領は王都周辺にあり、中央の貴族は辺境の貴族を田舎者だと馬鹿にする傾向にある。
当然だが、伯爵が侯爵よりも偉いなんてわけはなく。
フォーブズ侯爵家は場所だけみれば田舎だが、決して軽んじられる存在ではない。
異国民からの侵略に備えるための軍事指揮権を有しており、さらには伯爵よりも広い領地を持っている。
立派な大貴族なのだ。
反対にフォーブズ家のような小競り合いが絶えない地域の領主たちは、中央貴族を平和ボケした連中だと見下していた。
そんな事情を全く知らないフレディはフローラを男慣れしていない田舎娘だと考えていた。
「これは失礼。まずは名乗るのが先でしたね。私はフレディ・K・ハモンド。よろしく」
一応、クラス内では自己紹介を済ましている二人。
しかし、フレディは紳士の嗜みとして名乗った。
中身はともかく、フレディの見た目や仕草は異性を引きつけるモノがあった。
そういう意味では、フローラとフレディは似た者同士なのかもしれない。
「フローラ・メイ・フォーブズと申します。こちらこそ、よろしくお願い致します」
フローラは淑女の礼をする。
「まだ学院に馴染めていないのかな?」
フレディはフローラが一人でいることを気に病んでいると思っていた。
フローラがボッチを気に病んでいるはずがなく。
むしろ、彼女はボッチをエンジョイしているのだが。
だが、フレディの言う通り、フローラは学院に馴染めているかとどうかと言われれば、馴染めていなかった。
学院よりもよっぽど実家のほうが楽だ、と彼女は考えていた。
さらには、もうすでに実家に帰りたいとすら思っていた。
「そう……ですね。あまり馴染めておりませんわ」
「まだ、始まったばかりだ。これから慣れていけばいい。そういう私も緊張しているのだけどね」
「フレディ様もですか?」
「君のような素敵な女性との会話に、緊張しているのさ」
フレディはキザなセリフ吐いて、フローラにウィンクを飛ばした。
フローラは全身がぞわぞわとし、鳥肌が立った。
フレディのことを気持ち悪いと思ったのだ。
――いきなり、ウィンクしてどうしたんだ? 目にゴミが入ったわけじゃないよな?
とフローラはフレディを凝視した。
しかし、フレディーはまじまじとフローラに見つめられ、
――ふむ、なかなかいい反応だ。これなら押せば行けそうだな。
と、見当違いなことを思っていた。
「私もまだ学院に馴染めていないから、どうかな? 私と友達にならないか?」
とフレディが言った瞬間。
フレディはどこからか強い視線を感じた。
彼はあたりを見渡す。
すると、エリザベスがフレディたちを睨んでいた。
これに対し、フレディは、
――おっと、エリザベス嬢を怒らせてしまったか、これはしまったな。フローラ嬢と仲良くすると、エリザベス嬢と敵対することになる。女同士の争いって怖いな。
と考えていた。
無論、エリザベスが睨んでいた理由はまったく別にある。
――わたくしを差し置いてフローラさんと仲良くなるなんて許せませんわ!
とエリザベスは思っていた。
そして、肝心のフローラだが、
――おい、フレディ。赤髪ドリルちゃんに睨まれてるぞ。痴情のもつれに、オレを巻きこまないでくれよ。
と思っていた。
フローラはフレディが遊び人であることを見抜いている。
エリザベスとフレディが恋愛関係にあり、そこに自分が巻き込まれたのだと考えた。
三者三様。
フローラもエリザベスもフレディも皆が勘違いをしていた。
と、まあそんな感じで。
フレディはエリザベスに睨まれて肩をすくめた。
しかし、彼はここで黙って去るような男ではない。
「そうだ、フローラ嬢。今度のパーティ。私と一緒に踊らないか?」
「パーティ……ですか?」
「もうすぐあるじゃないか。生徒会主催のダンスパーティが。どうだ? 私と踊る気はないか?」
フレディはフローラに断られるはずがないと思っている。
彼はこれまでずっとちやほやされて生きてきた。
顔が良くて、話上手。
家柄も悪くなく、多少女遊びが酷いことを除けば優良物件だ。
女性の扱いに長けているフレディは田舎娘のフローラに断られるとは微塵も思っていなかった。
「あの……えーっと」
――パーティなんてあったっけ?
フローラはここで初めてダンスパーティの存在を知った。
周りの話を聞いていればわかるものだが、フローラはどうでも良いことは覚えないタチなのだ。
いや、どうでも良くないことでも覚えないのだ。
この時期、生徒たちはパーティで踊る相手を必死に探している。
女は良い殿方を、男は綺麗な子を。
水面下ではパートナー探しによる熾烈な争いが行われていた。
「返事はまた今度でいいよ。じゃあ、またね」
とフレディは言い、フローラのもとを颯爽と去っていった。
フローラはフレディの後ろ姿を見ながら、
「断り損ねましたわ」
と呟く。
正直パートナーは誰でも良い、とフローラは思っている。
だが、フレディのようなリア充だけは嫌だった。
それはモテなかった前世の記憶から来る妬みだ。
しょうもない妬みである。
逆にフレディはフローラが初なために萎縮していると考えていた。
ハモンド伯爵領は王都周辺にあり、中央の貴族は辺境の貴族を田舎者だと馬鹿にする傾向にある。
当然だが、伯爵が侯爵よりも偉いなんてわけはなく。
フォーブズ侯爵家は場所だけみれば田舎だが、決して軽んじられる存在ではない。
異国民からの侵略に備えるための軍事指揮権を有しており、さらには伯爵よりも広い領地を持っている。
立派な大貴族なのだ。
反対にフォーブズ家のような小競り合いが絶えない地域の領主たちは、中央貴族を平和ボケした連中だと見下していた。
そんな事情を全く知らないフレディはフローラを男慣れしていない田舎娘だと考えていた。
「これは失礼。まずは名乗るのが先でしたね。私はフレディ・K・ハモンド。よろしく」
一応、クラス内では自己紹介を済ましている二人。
しかし、フレディは紳士の嗜みとして名乗った。
中身はともかく、フレディの見た目や仕草は異性を引きつけるモノがあった。
そういう意味では、フローラとフレディは似た者同士なのかもしれない。
「フローラ・メイ・フォーブズと申します。こちらこそ、よろしくお願い致します」
フローラは淑女の礼をする。
「まだ学院に馴染めていないのかな?」
フレディはフローラが一人でいることを気に病んでいると思っていた。
フローラがボッチを気に病んでいるはずがなく。
むしろ、彼女はボッチをエンジョイしているのだが。
だが、フレディの言う通り、フローラは学院に馴染めているかとどうかと言われれば、馴染めていなかった。
学院よりもよっぽど実家のほうが楽だ、と彼女は考えていた。
さらには、もうすでに実家に帰りたいとすら思っていた。
「そう……ですね。あまり馴染めておりませんわ」
「まだ、始まったばかりだ。これから慣れていけばいい。そういう私も緊張しているのだけどね」
「フレディ様もですか?」
「君のような素敵な女性との会話に、緊張しているのさ」
フレディはキザなセリフ吐いて、フローラにウィンクを飛ばした。
フローラは全身がぞわぞわとし、鳥肌が立った。
フレディのことを気持ち悪いと思ったのだ。
――いきなり、ウィンクしてどうしたんだ? 目にゴミが入ったわけじゃないよな?
とフローラはフレディを凝視した。
しかし、フレディーはまじまじとフローラに見つめられ、
――ふむ、なかなかいい反応だ。これなら押せば行けそうだな。
と、見当違いなことを思っていた。
「私もまだ学院に馴染めていないから、どうかな? 私と友達にならないか?」
とフレディが言った瞬間。
フレディはどこからか強い視線を感じた。
彼はあたりを見渡す。
すると、エリザベスがフレディたちを睨んでいた。
これに対し、フレディは、
――おっと、エリザベス嬢を怒らせてしまったか、これはしまったな。フローラ嬢と仲良くすると、エリザベス嬢と敵対することになる。女同士の争いって怖いな。
と考えていた。
無論、エリザベスが睨んでいた理由はまったく別にある。
――わたくしを差し置いてフローラさんと仲良くなるなんて許せませんわ!
とエリザベスは思っていた。
そして、肝心のフローラだが、
――おい、フレディ。赤髪ドリルちゃんに睨まれてるぞ。痴情のもつれに、オレを巻きこまないでくれよ。
と思っていた。
フローラはフレディが遊び人であることを見抜いている。
エリザベスとフレディが恋愛関係にあり、そこに自分が巻き込まれたのだと考えた。
三者三様。
フローラもエリザベスもフレディも皆が勘違いをしていた。
と、まあそんな感じで。
フレディはエリザベスに睨まれて肩をすくめた。
しかし、彼はここで黙って去るような男ではない。
「そうだ、フローラ嬢。今度のパーティ。私と一緒に踊らないか?」
「パーティ……ですか?」
「もうすぐあるじゃないか。生徒会主催のダンスパーティが。どうだ? 私と踊る気はないか?」
フレディはフローラに断られるはずがないと思っている。
彼はこれまでずっとちやほやされて生きてきた。
顔が良くて、話上手。
家柄も悪くなく、多少女遊びが酷いことを除けば優良物件だ。
女性の扱いに長けているフレディは田舎娘のフローラに断られるとは微塵も思っていなかった。
「あの……えーっと」
――パーティなんてあったっけ?
フローラはここで初めてダンスパーティの存在を知った。
周りの話を聞いていればわかるものだが、フローラはどうでも良いことは覚えないタチなのだ。
いや、どうでも良くないことでも覚えないのだ。
この時期、生徒たちはパーティで踊る相手を必死に探している。
女は良い殿方を、男は綺麗な子を。
水面下ではパートナー探しによる熾烈な争いが行われていた。
「返事はまた今度でいいよ。じゃあ、またね」
とフレディは言い、フローラのもとを颯爽と去っていった。
フローラはフレディの後ろ姿を見ながら、
「断り損ねましたわ」
と呟く。
正直パートナーは誰でも良い、とフローラは思っている。
だが、フレディのようなリア充だけは嫌だった。
それはモテなかった前世の記憶から来る妬みだ。
しょうもない妬みである。
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