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第四章 魔大陸編

噂の波及

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アルンガルト王国

「それは誠なのか?あの初日に王城から出したあの2人か?」

「はい。間違いございません。ジュラムの商人の間で広まっている噂だけですと眉つばですが、冒険者ギルドのこちらの手の者に確かめさせました。タクヤ・リュウザキというSS級冒険者が冒険者ランクシステムで認定されています。竜を倒したとのことです。ガノの国ではその内の一部と思われる竜の鱗が売り出されています。」

「それで、タクヤ・リュウザキの素生は勇者どもに確認したのか?あの時、女も一人一緒に出たであろう、あれはどうした。」

「はい、間違いなく勇者達と一緒に召喚されすぐに勇者でなかったと申し出て城を出た者にございます。女はアヤ・ミヤベと言いますが、記録になかったそうです。」

「あの者たちは死んだのではなかったのか?余はそのように報告を聞いた記憶があるが。」

「翌日、すぐに王都内を探しましたが、冒険者ギルドへの登録もなく、門兵の記憶で徒歩で王都を出て行ったようだと解りましたのですぐに各方面に追手を出したのですが国境の街まで行っても消息を掴めず、途中の街や村でも誰も立ち寄った形跡がなかったために、魔物に食い殺されたものと推察できるとご報告いたしました。」

「まったく、ステイタスカードを回収しなかったのは何とも不手際だったな。」

「お父様、あの場合、仕方ないことです。訓練すら受けていない召喚直後の者が何の備えもなく国を出るなど考えておりませんでしたわ。それよりも今はその古代遺跡の話しです。
かの者たちですら到達できたのであれば、我らが勇者であれば造作もないこと。一人一つまでという制限があるとしても、全部で33個の遺跡級レアアイテムが手に入る可能性がありますわ。我らはただでさえ、駒としての勇者の数が他の2国より少ないのですから、より早く古代遺跡に達して、遺跡級アイテムを全員分確保せねばなりません。戦力では役立たずの勇者でも、勇者は勇者ですからアイテムを確保できる可能性がありますわ。こんな時に役だって貰わないと。」

「姫の申し通りじゃな。して訓練は順調なのか?」

「トップのマトバの2パーティーは順調ですね。B級冒険者レベルに達していると言われています。後は若干訓練は遅れていますが、通常の鍛錬兵よりは遥かに使えるレベルになっています。ただ、マトバ達とは明らかに差がありますので待遇もそれなりにしていますわ。」

「まあ、それはよい。隷属の首輪はきちんと作用しているのだろう?どのような待遇でも反抗は出来ぬじゃろう。よしでは残り一週間、更に訓練の時間を長くしレベルアップさせよ。その後は東大陸に出陣じゃ。途中の街には魔王討伐に行くと言って食料と兵の宿泊の援助を拠出させよ。古代遺跡の攻略は勇者に任せ、兵は他国の勇者が来た場合の足止めをさせるのだ。」

「王命確かに賜りました。すぐに手はずを整えます。」



ドボルグ帝国

「爺、この噂お主はどう思う。」

「いきなりな感じもしますが、SS冒険者が現れたのは事実です。帝国で飼っているS級冒険者どもに確認しましたが、聞いたこともないと言う話でしたが。現在無所属のようです。そのために詳細な情報は得られませんが、冒険者ギルドの水晶板が間違いを起こすことはありませんし。名前はタクヤ・リュウザキ。召喚者達に確認したところ同じ世界の名前でもおかしくないと言うこと。アルンガルト王国の勇者が33名で他と比べて少ないので不思議に思っていましたが、もしかしたら逃げた勇者かもしれません。」

「勇者の話はどうでもよいが、古代遺跡の方だ。余が持っている念話の腕輪。これによって帝国の権威が保たれ、速やかな情報の収集と指示が出せるのだ。テンバのマジックアイテムポーチはどこへ行ったか不明だったと言うではないか。今回それではないのか?」

「陛下、この度のマジックアイテムバックはそれとは別の物と思われます。噂によると召喚勇者と思われる者は2人おり、2人ともがマジックバックを所持していたということでございます。何でも一人一つのみ獲得が出来、遺跡には異世界転移者のみが入れるようになっていたとのことです。タクヤ・リュウザキのパーティーは5人。アイテムを5ではなく2つしか持ていなかったのも、この理由なら納得できます。」

「遺跡級アイテムか。召喚者の戦力以上に強力なアドバンテージになるな。恐らく他の2国も同じように考えるだろう。わが帝国だけがこのチャンスを見逃すこともできんしな。」

「左様でございますな。古代遺跡は常に出現する物でなないと伝承されておりますし、黒竜の谷の先にあるという古代遺跡に向かうより余程、現実的ではないかと思います。」

「黒竜の谷か。先々代の皇帝が虎の子のS級冒険者パーティーを送り込んで全滅したんであったな。」

「はい、記録では歴代最強と言われたパーティーと精鋭の騎士団を送りましたが誰も戻って来ておりません。あれでどれほど帝国が窮地に立たされたか。」

「それで、召喚者どもはどうなっている?順調に仕上がったいるのか?」

「はい。勇者の呪いという言葉を信じて頑張っております。現在、B級相当にまで育っております。S級冒険者たちにもニンジンをぶら下げておりますので競って鍛えております。」

「よしでは、訓練の練度を上げA級相当にまで上げさせるのだ。その間、軍を編成し魔族大陸方面の防御を固めろ。1週間後には全ての準備を終え出発せよ。」

「「「御意」」」



聖精霊教皇国

「これはご精霊様の御加護ですね。聖精霊に一番愛された我ら教皇国が遺跡級アイテムを得るチャンスです。」

「猊下、お言葉ながらこのような噂に惑わされましては、教皇国の威信に傷がつくかと。」

「だまらっしゃい。いいですか。こたびの古代遺跡は我らが宿敵、あの魔族の跋扈する東大陸に出現したのですよ。魔族どもには過ぎたる遺跡。これは我らに魔大陸に侵攻せよという聖精霊様の御心の現れです。これを手に入れることは聖精霊様のご意思ですよ。」

「申し訳ございません。考えが至りませんでした。」

「よいのです。聖精霊様のお考えは崇高で我ら人には考えが及ばないほど深いものです。それで子羊達はどのような様子ですか?」

「はい、皆、聖精霊様の御加護に感謝し、中にはテトラス(5属性)使いの者も出ております。中級魔法は問題なく発動できますが、上級魔法の発動には至っておりません。また聖剣使いの3人、聖槍使いの2人は、テンプル騎士団の中隊長レベルに達しております。武器、防具を整えましたら大隊長と引けを取りません。各団長レベルかと。」

「素晴らしい。召喚直後は正に子羊のように弱弱しかったですが、聖精霊様の御加護のお陰ですね。それでは、旅装を整えてすぐに魔大陸に出発しなさい。我らの聖なる地は、汚れた魔大陸から一番遠い地に有りますからね。他の国々に後れを取る訳にはいきません。移動し宿泊地で訓練を続ける様に。移動中は身体を休めるように十分な馬車を用意しなさい。全ての聖精霊教会に通達するのです。これは聖戦です。途中の援助をおしみなくするようにと。」

「「「「お言葉賜りました。」」」」
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