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第一章 アルンガルト王国編

追手と盗賊団

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お昼過ぎに目覚めた時、俺の腕の中で安心したように彩が眠っていた。こうしてみると彩って若き日の夏○雅子みたいで超美人なんだな。スタイルもいいしね。そんな風に意識してなかったから気付かなかった。

「おはよ、拓哉。」

「おはよう、彩。ってもう昼過ぎだと思うけど。」

「えっ、もうそんな時間なの?そろそろ出発しなきゃね。」

「そうだな。準備して行こうか。」

その後、もう一度お風呂に入ってサッパリした後、簡単に食事を済ませて荷物をまとめて出発しようとした時に、俺の索敵に反応があった。すこし嫌な予感がして石室の中に隠れて様子をみることにした。俺自身は気配遮断スキルがあるから大丈夫だと思うけど、彩が少し心配だったけどこっちに気付かれずにそのまま街道を進んで行ったようだ。通り過ぎたのは俺達が出てきた、アルンガルト王国の騎士3人。索敵の反応には注意と警戒の反応があり、警戒はあきらかに俺に対する敵意をもったものの反応だから、さっきの騎士3人が俺に対して明確な敵意を持って王都から出てきたってことは明らかだ。

「彩、今のはアルンガルト王国の騎士で、少なくとも俺の索敵反応では俺に対する敵意を持っていた。つまりあの王が俺や恐らく彩に対して手を打ってきたってことだと思う。」

「そうなの?こんなに早く。」

「まあ予想通りって感じだけどな。運よくここであいつらを先行させてよかったかもしれない。ただこれでこの国を出るまでは他の街や村に寄れなくなったな。街道も避けた方がいいかもしれない。」

「どうするの、拓哉。」

「能力的にはあいつらは何人来ても撃退できると思う。ただあいつらを相手にして時間を取られるよりもサッサとこの国を出た方がいいと思う。少し強行軍になるけどいいか?」

「うん、頑張って付いて行く。」

それよりもこうやって抱っこして走った方が早いからしばらく窮屈かも。そう言って彩をお姫様抱っこして進むことにした。それと寝室で使った岩も切りだして無限倉庫に入れた。何かの役に立つかもしれないし。それより大岩をいくつか収納したので少し目立つ感じになってしまった。多少の偽装工作が必要だな。


その後は、彩を抱きかかえたままの移動を続けた。最初は恥ずかしがっていた彩だけど、何日もそうして移動するうちに当たり前になったようだ。お陰で俺もいろいろと新しいスキルを習得できた。移動しながらの会話も平気になったし、彩から飲み物や食べ物を貰って食べることも余裕になった。

あと新しい発見として、武器や防具への魔法の付与が出来るようになったことと、この魔法ないしスキルの付与を彩に対してもできるようになった。ただしこれはかなり深くつながった状態でないとできなかったし、一度に一つだけしかできないようだ。

また深い口づけをしている時に、彩が俺の魔力を感じれるようになった。それをきっかけにして、自分自身の魔力を感じる訓練を俺に抱かれながらの移動中に続けて、彩も初級魔法と思われる魔力消費が5の魔法の発現ができるようになった。

いくつかの山を越え、俺も彩も魔物狩りで少しレベルが上がった頃、やっと国境近くまで辿り着いた。いつものように街道を視野に入れ山の中を進んでいいると前方に大きな索敵反応が出た。この頃には索敵LVは5となりカンストして、その上位スキルと思われる「探知」スキルを取得していた。また気配遮断スキルもカンストして「隠密」スキルを取得している。この二つのスキルはともに彩にも付加している。

いずれにせよ、この「探知」スキルでかなり詳細な情報までわかるようになった。恐らく、この探知スキルはレベルが上がることによって、「超視覚」や「超聴覚」などのパッシブスキルが加わってより詳細な情報収集が出来るようになるスキルだと思っている。と言うのも探知スキルがLV2になったことで情報量が一気に増えたからだ。

彩に合図して彩にも隠密スキルを発動して二人で問題の洞窟まで近寄ってみた。俺の探知スキルで洞窟内部まで確認すると、どうやら盗賊のアジトみたいだ。商人の馬車を襲って来たばかりみたいで、かなり盛り上がっている感じだ。全部で20名ほどだ。

「彩、どうする?このままこいつらを避けて国境を越えてもいいけど、相当にあくどい盗賊みたいだ。捕まっている人もいるみたいだな。兎族の少女みたいだけど。」

「別に正義を主張する訳じゃないけど、目の前で困っている人がいるなら助けてあげたいかも、拓哉の力に頼るけど。」

「そうだな。どのみちどこかで対人戦を経験しとかないといけないとは思ってたんだよ。恐らくはあのゲス王国とは戦うことになるだろうしね。ただ、彩は無理しなくていいからね。相手は俺達とは違う世界の住人とはいえ人間だし。」

「うん、多分大丈夫。彩も経験しとかなきゃいけないことだし。」

「じゃあ、行くよ。出口はあそこだけみたいだし、正面から撃破して行こう。」

俺達は気配を消したまま洞窟の入り口近くまで進み、雷魔法で見張りの二人を瞬殺した。この魔法が音もなく確実に仕留めるのに一番適してるからね。彩にも付加して何とか使いこなしている。そう言えば雷魔法のスキルを持ってる人誰もいなかったな。あんまりメジャーな魔法じゃないのかな。

気付かれて一度に襲ってこられると面倒なので、俺と彩はすばやく洞窟内に侵入し、入り口近くにいるやつから順次殲滅して行った。隠密スキルで進んでいるので相手に近づくまで気付かれないで瞬殺出来る。このまま最後のボス部屋まで行くかと思ったけど最後、偶々通路の先から出てきたやつに目撃されて大声を出された。残り7人。俺はすぐにボス部屋に飛び込むと向こうは迎撃態勢を取っていた。

「てめいどこのものだ?さっきの商人の護衛は全部始末してきたはずだが、どうやってこの場所まで来やがった。」

俺はそんなアホな会話に几帳面に答える気はないのでサクサクと6人を始末して、盗賊の親玉を軽く痺れさせた後、武器を取りあげた。

「さて、これでこの洞窟に残っているのはお前だけだが、こっちの質問に答えて貰う。返事がなければ一回ごとにお前の手足が切られていくからな。無駄な抵抗はやめろよ。」

親分は完全に戦意喪失状態だ。

「お前達は盗賊団で間違いないか?」

「間違いねえ。黒狼団だ。」

「黒狼団ねぇ。さて、お宝はどこに置いている。あー隠してるのが解ったら、見つかった分お仕置きだからな。」

「そっちの部屋に置いてる。・・・・・」





右足に剣を突き刺した。

「ぐわー、ちゃんと言ったじゃねえか。」

「この右足は要らないようだな。」

「話す、この下だ。この下の隠し部屋に一番のお宝を置いている。」

俺の千里眼でこの下に兎耳の少女が監禁されているがわかっていた。

「なんで兎族の少女を隠してる。」

「な、どうしてそれを。わ、わかった話す。兎族は希少な種族だ。ましてや処女の兎族ならこっちのいい値で売れるからな。この前の奴隷商の馬車を襲った時に手に入れたんでこいつだけは残していたんだ。これで全て正直に話した。命だけは助けてくれ。」

「約束はしてなかったが、正直に話したからそれに免じて許してやる。あと移動するのに馬か馬車を使ってるだろう?どこに置いてある。」

「馬車はつかってねえ。あー、でもさっき襲った商人の馬車ならそのまま置いてあるこれから処分に行かせるところだったんだ、洞窟の裏手から下に降りる道がある、そこに馬と一緒に置いてある。」

「お前の仲間はこの洞窟にいたやつで全部か?」

「ああ、恐らく荷物を運び終わったら宴会する予定だったからな、全員集まってたと思う。」

「最後まで嘘をつかなかったら命だけは助かったのにな。残念だったな。今、全員死んだよ。下に残ってたやつを含めてね。」

「てめー騙しやがったな。」

「おいおい、騙してないぞ。質問に正直に答えろと言ったはずだ。馬車のこと、降り道の罠のこと、仲間の人数、残りの仲間のこと。ほら4つも嘘ついたぞ。」

左足、両手、そして首を刎ねて始末した。まあ、隣の部屋で凌辱されて殺されている商人から奪ってきたと思われる女達のことを思えばこの程度で死ねてよかっただろう。まったく見えすぎるのも考えものだな。

寝室では凌辱の跡が生々しい状態で残っていた、俺がここに来るまでやってたんだろう。しかし死んだ後の身体を使うとか何が楽しいんだか。俺が突入する時にはすでに死んでいたから反応がなかったんだな、きっと。
入口の方から彩が戻ってきた。最初から洞窟の外に盗賊の残りがいることは解っていたので、そっちを彩に任せておいた。



「彩、大丈夫?」

「うん、割と大丈夫みたい。悪意の塊みたいなもの感じてたし躊躇いはなかったよ。」

「そうだよなー。俺も同じ感じ。この親玉とか本当にゲスだったから、切り刻んで殺したし。感覚がおかしくなってるのかな。まあ、そこは後で考えよう。この下に兎族の少女が監禁されているみたい。彩連れてきて。鍵はこれだと思う。」

「解った。」

彩が地下の隠し部屋に行ってる間に俺はお宝とか武器を片っ端から無限倉庫に入れた。ちょっとした商店が開けるんじゃないかって思えるぐらい大量の物品が置かれていた。
こいつらの死体はどうするかなぁって思って、まずは凌辱されてた女性の遺体を焼いてやることにして死体を見てみると、死体の左手から銀のプレートが出てきてた。何だって思って手にしたら死体が光になって消えた。

「な、なんだこれ?」

銀のプレートを見ると、亡くなった女性のステイタスが描かれている。もう一人の女性のプレートも取り出すと光になって消えた。俺は盗賊たちの死体も確認してみたら、こいつらの左手からも銀のプレートが出てきていた。


丁度彩が気を失っていた兎族の少女を抱えて上に上がってきた。

「呼吸はしっかりしてるみたいだけど、拓哉、念の為回復魔法かけてあげて。」

鑑定してみると、

氏名 アリス・ボブキャロット
年齢 15歳
性別 女性
種族 兎族
職業 奴隷
レベル 2
経験値 155
体力  80
魔力  50
筋力  50
敏捷  100
回避  100
防御  50
知恵  80
精神  70
幸運  90
スキル 体術(LV1)、聖魔法(LV1)

ほう、聖魔術を使えるんだ。珍しいかもな。少なくとも聖魔術を使えるやつって勇者の二人と後偉そうな神官みたいなやつ一人しか見たことなかったけどな。ともかく、浄化と回復魔法をかけてやった。体力値は回復しないので精神的な疲れかもしれないな。

「取り敢えずステイタス的には問題ないみたい。ただこれは隷属の首輪だな。これをどうにかできればいいんだけど。下手に取らない方がいいだろうな。呪い系のアイテムみたいだし。」

「解った。」

「あっ、それから彩、ちょっと見てて。」

そう言って周りに散らばっていた盗賊の死体の手から出ていた銀のプレートを取った。するとさっきと同じように死体が光になって消えた。

「それは拓哉の能力?」

「いや、多分この世界の法則なんだと思う。ほら、この銀のプレートにステイタス画面で見れる情報が出てきてるだろう。おや、この隠蔽って言うのは何だろう?隠蔽。おーステイタス画面を隠せるんだ。なるほどこれでステイタスで出てくる職業欄を消せるんだな。恐らく盗賊が街に入る時に使うのかもしれない。こいつだけが持ってるってことは特殊なスキルのかもな。」

「じゃあ、彩の勇者(仮)も隠せるの?」

「多分な。あとでやってみるか。」

「うーんと、今じゃダメ?」

「えっ、ここで?」

「後からだとこの子も一緒になるだろうし、それにちょっとだけ拓哉を感じたい。」

「そうだな。おれも少しモヤモヤしてる感じがあるんだ。立ったままだけどいい?」

「うん、それで。」

俺達は奥の部屋に行って立ったまま深くつながった。流石にゲス親分のベッドでは出来ないしね。いずれにせよ彩の中に出すことで俺の気持ちのモヤモヤ感がすっきりした。彩もそうだったみたいだ。後から思い返したら対人戦の影響が無意識下で出ていたんだと思う。この時に繋がったことで俺と彩は壊れずに済んだのかもしれない。

スキルの受け渡しも出来て、彩も隠蔽が出来るようになった。ただ発動時間は30分ほどみたいなので常時発動しようと思ったら魔法付加のアクセサリーを身につけるなりして対策する必要はあるかもしれない。

そう言う結論に達して盗賊から奪ったお宝のうち常時身につけていられそうな空欄のある指輪がいくつかあったのでそれに隠蔽を付加して身につけることにした。ただその指輪を俺が彩の薬指に付けたのが原因かもしれないけど、彩の職業がタクヤの妻となり、彩の名前がアヤ・リュウザキと変化した。俺の名前も漢字からタクヤ・リュウザキとなった。隠蔽の指輪は必要ないんじゃないって言ったけど、彩は指輪を外すことはなかったし俺もそのままつけてる。

盗賊の洞窟内をくまなく探索してお宝を全部無限収納に収めてみたら、所持金がとんでもないことになった。この盗賊団かなり金持だったようだ。金貨の上の大金貨、白金貨という物まで手に入った。日本円に換算すると15億円ぐらい。あとお宝もかなりいろいろあった。武器や武具などもそのまま使えそうな物もあったし、アクセサリー類がかなりいろいろ手に入った。特に魔法付与しやすいミスリル製の物が多かったし空欄のあるアクセサリーも結構あったので上手く活用できればいいなと思う。

盗賊のお宝を横取りするのは、日本人的感覚からするとそっちの方が悪党っぽい感じもするけど、そのあと目覚めたアリスによると当然の権利みたいだ。そしてアリス自身の所有権も盗賊を倒した俺に移っているらしい。
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