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わたし、魔法少女だけど友だちはいるんです(大事なわたしの友だちが)
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「そうだね。キミがそう言うなら、きっとそれがキミにとって正しいことなんだろうね。間違いなく」
緑の目はわたしの返事を聞くとそう答えた。
字面で見ると呆れたような、でも心の底では納得したという言葉を、いつもの悪意のない嫌味に包んで返してくる。
そんなに友だちの心配をしないことが不思議なことなのかな?
そんなんに他人の心配をすることが必要なことなのかな?
やるべきことは、大事なことは、もっと他にあると思うけど。
「そんなに変かな。だってわたしがそんなことしても、この子にとって何の意味ない無駄なことじゃない」
わたしがやるべきことは、この子にとって必要なことは、あんたに言われてとおりにやってるんだから。
「いいや、そんなことは全くないよ。ただ、それでも人間はこういうとき、同じ人間のことを気遣ったり心配したりするものなんじゃないかと思ってただけだよ。意味が無いと知ってても。無駄なことだと解っていても。それが特別な他人なら尚更ね。そういうものが人間というものだと、そう思っただけだよ」
その言い方だと、この緑の目にとってわたしは。
「それで、わたしのことをどう思ったの?」
「キミへの想いは何もかわらないよ。単に人間としてはどうなのかな、と思ったことは確かだけどね」
まるで人間じゃ、ないみたいじゃないか。
「じゃあわたしは、あんたの物差しだと人間失格ってこと?」
「真逆。ボクはキミがどういうひとなのか、少しでも知ることができて嬉しいよ。キミが自身の中にある絶対律を守るひとだということを。誰に対しても、何に対してもね」
それは裏を返せば、わたしが自分勝手で自己中心的な人間って子って言ってるのと同じことだよね。
「それ、褒めてないでしょ?」
「うん、褒めてはいないね。でも自分の内側にそれを持っているひとはそうはいないよ。皆外側からの圧力や拘束で自分を規定されて、漸く人間らしくなるものだからね。ボクが思ったのはキミの場合は違うんだなって、それだけだよ。そもそも自分の意思で自身の全てを決定できるひとなんてほとんどいなからね。巨視的に観れば、皆同じように生きて、同じように死んでいく。人間に虫の一生の違いが判別できないようにね。でも、だからこそ皆同じ人間だ」
この緑の目は知ってるんだろうか。
その「みんな」のなかに入れなかった人間がどうなるか、知ってるんだろうか。
「みんな」のなかで生きていくため、どれだけ我慢しなくちゃいけないか、知ってるんだろうか。
わたしがこんなでも、それでも「みんな」のなかの端っこの影にいられたのは、全部母の教えのお陰だ。
そのことは、ホントに感謝しています。
だってそのお陰で、こうして友だち、できたんだから。
食べらちゃったけど。
「それにしてもキミは結構読書家なんだね。もう太宰治を知ってるなんて」
「それは、図書館で読んだから」
なんといってもお金がかからないからね。
タダで、好きな本が読み放題なんだから。
なんとかし放題って、いい言葉だよね。
いや、いまはそんな話じゃなくて。
大事なことは、わたしの友だちのことなんだから。
そしてそれは、あんたの仕事のはずなんだから。
「そんなことより、わたしの友だちはどうなってるの?」
わたしのことは関係なくて。他人のことはどうでもよくて。
「さっきも言ったように、言われなくても勿論作業は進行中だよ。何の問題も滞りなくね。だからもうすぐ終わるよ。けどその前にひとつキミに訊きたいことがあるんだけどいいかな?」
わたしに訊きたいこと? それはこの緑の目でも、訊かないとわからないことなんだろうか。
「なあに? 珍しいね、あんたがわたしに質問なんて」
「そうかな。ボクはキミのことをもっと知りたいと思っているんだ。寧ろキミの方がボクに何も訊かないよ」
「そんなことないよ。さっきからわたし、あんたに質問してばっかりじゃない」
「キミは確かにボクに色々訊いてくれるけど、ボクのことを訊いてはくれないからね。相互理解はお互いにとって大事だと、ボクは思うよ。だからキミも、ボクのことで知りたいことがあったら何でも訊いてね。何でも答えるから。一方通行の想いほど、寂しく虚しいものはないからね」
そのへんのことについて、訊きたことがいくらでもあるけど、あとで説明するって言ったじゃん。
いいよ、そのときはあんたがしゃべることがなくなるまで、訊きたいだけ訊いてやるから。
この緑の目について訊き放題。
あれ、なんでだろ。なんだかあんまり嬉しくない。
「それで、あんたの訊きたいことってなに? 残念だけどわたしは何でもは答えないよ」
どうでもいいことと関係ないことなら、大体答えるけど。
「構わないよ。キミが答えられることだけ、答えたいことだけを、答えてくれれば。キミというひとが人間としどうなのかは大体わかったけところで、もうひとつ、ボクは思うことがあるんだよ」
「だから、なにを?」
「キミが、その子の友だちとしてどうなのかなって、そう思っただけだよ」
なあんだ、そんなことか。
それならいくらでも答えてあげる。
「そんなの決まってるよ。わたしにとってこの子は友だちなんだから、この子にとってもわたしは友だちだよ。お互いおんなじようにね」
それ以外のなにものでもなく、それ以外のなにがわたしとこの子にあるというのだろうか。
だって友だちって、そういうもの、なんでしょう?
緑の目はわたしの返事を聞くとそう答えた。
字面で見ると呆れたような、でも心の底では納得したという言葉を、いつもの悪意のない嫌味に包んで返してくる。
そんなに友だちの心配をしないことが不思議なことなのかな?
そんなんに他人の心配をすることが必要なことなのかな?
やるべきことは、大事なことは、もっと他にあると思うけど。
「そんなに変かな。だってわたしがそんなことしても、この子にとって何の意味ない無駄なことじゃない」
わたしがやるべきことは、この子にとって必要なことは、あんたに言われてとおりにやってるんだから。
「いいや、そんなことは全くないよ。ただ、それでも人間はこういうとき、同じ人間のことを気遣ったり心配したりするものなんじゃないかと思ってただけだよ。意味が無いと知ってても。無駄なことだと解っていても。それが特別な他人なら尚更ね。そういうものが人間というものだと、そう思っただけだよ」
その言い方だと、この緑の目にとってわたしは。
「それで、わたしのことをどう思ったの?」
「キミへの想いは何もかわらないよ。単に人間としてはどうなのかな、と思ったことは確かだけどね」
まるで人間じゃ、ないみたいじゃないか。
「じゃあわたしは、あんたの物差しだと人間失格ってこと?」
「真逆。ボクはキミがどういうひとなのか、少しでも知ることができて嬉しいよ。キミが自身の中にある絶対律を守るひとだということを。誰に対しても、何に対してもね」
それは裏を返せば、わたしが自分勝手で自己中心的な人間って子って言ってるのと同じことだよね。
「それ、褒めてないでしょ?」
「うん、褒めてはいないね。でも自分の内側にそれを持っているひとはそうはいないよ。皆外側からの圧力や拘束で自分を規定されて、漸く人間らしくなるものだからね。ボクが思ったのはキミの場合は違うんだなって、それだけだよ。そもそも自分の意思で自身の全てを決定できるひとなんてほとんどいなからね。巨視的に観れば、皆同じように生きて、同じように死んでいく。人間に虫の一生の違いが判別できないようにね。でも、だからこそ皆同じ人間だ」
この緑の目は知ってるんだろうか。
その「みんな」のなかに入れなかった人間がどうなるか、知ってるんだろうか。
「みんな」のなかで生きていくため、どれだけ我慢しなくちゃいけないか、知ってるんだろうか。
わたしがこんなでも、それでも「みんな」のなかの端っこの影にいられたのは、全部母の教えのお陰だ。
そのことは、ホントに感謝しています。
だってそのお陰で、こうして友だち、できたんだから。
食べらちゃったけど。
「それにしてもキミは結構読書家なんだね。もう太宰治を知ってるなんて」
「それは、図書館で読んだから」
なんといってもお金がかからないからね。
タダで、好きな本が読み放題なんだから。
なんとかし放題って、いい言葉だよね。
いや、いまはそんな話じゃなくて。
大事なことは、わたしの友だちのことなんだから。
そしてそれは、あんたの仕事のはずなんだから。
「そんなことより、わたしの友だちはどうなってるの?」
わたしのことは関係なくて。他人のことはどうでもよくて。
「さっきも言ったように、言われなくても勿論作業は進行中だよ。何の問題も滞りなくね。だからもうすぐ終わるよ。けどその前にひとつキミに訊きたいことがあるんだけどいいかな?」
わたしに訊きたいこと? それはこの緑の目でも、訊かないとわからないことなんだろうか。
「なあに? 珍しいね、あんたがわたしに質問なんて」
「そうかな。ボクはキミのことをもっと知りたいと思っているんだ。寧ろキミの方がボクに何も訊かないよ」
「そんなことないよ。さっきからわたし、あんたに質問してばっかりじゃない」
「キミは確かにボクに色々訊いてくれるけど、ボクのことを訊いてはくれないからね。相互理解はお互いにとって大事だと、ボクは思うよ。だからキミも、ボクのことで知りたいことがあったら何でも訊いてね。何でも答えるから。一方通行の想いほど、寂しく虚しいものはないからね」
そのへんのことについて、訊きたことがいくらでもあるけど、あとで説明するって言ったじゃん。
いいよ、そのときはあんたがしゃべることがなくなるまで、訊きたいだけ訊いてやるから。
この緑の目について訊き放題。
あれ、なんでだろ。なんだかあんまり嬉しくない。
「それで、あんたの訊きたいことってなに? 残念だけどわたしは何でもは答えないよ」
どうでもいいことと関係ないことなら、大体答えるけど。
「構わないよ。キミが答えられることだけ、答えたいことだけを、答えてくれれば。キミというひとが人間としどうなのかは大体わかったけところで、もうひとつ、ボクは思うことがあるんだよ」
「だから、なにを?」
「キミが、その子の友だちとしてどうなのかなって、そう思っただけだよ」
なあんだ、そんなことか。
それならいくらでも答えてあげる。
「そんなの決まってるよ。わたしにとってこの子は友だちなんだから、この子にとってもわたしは友だちだよ。お互いおんなじようにね」
それ以外のなにものでもなく、それ以外のなにがわたしとこの子にあるというのだろうか。
だって友だちって、そういうもの、なんでしょう?
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