22 / 45
邂逅、そして会敵の朝✗22
しおりを挟む
「えーと、それじゃあ、ひとつだけいいかな」
私の言葉を受けて、アーサはおずおずと小さく手を挙げながら口にする。
ああ、勿論だとも。
さあ、なんでも言ってごらん、アーサ。
どんなことであろうとも、私が全て受け留めてあげるからね。
「キルッチが何を言ってるのか解んないけど、あたしには解んないことをキルッチが言ってるのは、分かったよ。なんとなくだけど」
よしよしアーサ、君はそれでいいんだよ。
それだけでも解ってくれれば、充分なのだから。
そう、それだけでも解ってくれたなら。
「それではアーサ。これからどうすればいいかは、ちゃんと解るね?」
「? いや、解らないよ」
アーサは頭の上にはてなマークを浮かべたような顔で、私に応える。
「そうか。ならば一からレクチャーしよう」
ならば教えて進ぜよう。
「まず最初に、アーサが私の前で服を脱ぐんだ」
出来るだけゆっくりと、たっぷりと時間をかけて。
「いやいやいやいや! 解らないってば! だからどうしてそうなるの? なんでそうなっちゃうの!? それじゃあ話が飛んじゃってるよ! 確かに飛んで最初の一に戻ったよ! だけどそれって違うよね! これって本末転倒のムーンサルトだよね! スーツの確認と点検をしてるのに、脱いじゃったら意味ないよね! そもそもあたしがいまここで服を脱ぐ意味がまったく存在しないよね!」
そんなことはないよ、アーサ。
自分を卑下してはいけない。
少なくとも方舟が必要な程度には、私の心は大いに潤うのだから。
上も下も、歴史に残る大洪水になることは確実だ。
もっとも、そんなことになったあかつきには、私にとって記録に残る大きな汚点になることは確実に間違いない。
故に、それだけはなんとしても避けねばならない。
私がこれまでコツコツと危ない橋を綱渡りしてきて積み重ねてきたみんなからの信頼が、ジェンガのように音を立てて倒壊してしまう。
この隊におけるキルエリッチャ・ブレイブレドという人間像が、砂のように崩れ去ってしまう。
それだけは、なにがなんでも回避したい。
みんなとへの信頼関係を失いたくない。
みんなとの人間関係を壊したくない。
私の嗜好を満足させるため、趣味と実益を執行するために。
あるよね? しっかりとした信頼関係。
築いてるよね? ちゃんとした人間関係。
私は先ほどのアーサのように頭に浮かんだ疑問符を振り払う。
そして再びアーサへと向きなおる。
「済まない。ちょっと口が滑ったようだ」
私はきりっとした表情のまま、自分の額にコツンと拳を当てる。
「うわぁ・・・・・・・・・すごいやこのひと。ひと言で済まないことを、似合わない茶目っ気で押し通そうとしてるよぉ・・・・・・・・・」
アーサが仰け反るようにして、微妙に私から距離をとる。
どうしたんだい? アーサ?
そんなふうに、怯えたような顔をして。
何も恐いことなど、ないというのに。
怖いひとなど、ここには何処にもいないというのに。
私の言葉を受けて、アーサはおずおずと小さく手を挙げながら口にする。
ああ、勿論だとも。
さあ、なんでも言ってごらん、アーサ。
どんなことであろうとも、私が全て受け留めてあげるからね。
「キルッチが何を言ってるのか解んないけど、あたしには解んないことをキルッチが言ってるのは、分かったよ。なんとなくだけど」
よしよしアーサ、君はそれでいいんだよ。
それだけでも解ってくれれば、充分なのだから。
そう、それだけでも解ってくれたなら。
「それではアーサ。これからどうすればいいかは、ちゃんと解るね?」
「? いや、解らないよ」
アーサは頭の上にはてなマークを浮かべたような顔で、私に応える。
「そうか。ならば一からレクチャーしよう」
ならば教えて進ぜよう。
「まず最初に、アーサが私の前で服を脱ぐんだ」
出来るだけゆっくりと、たっぷりと時間をかけて。
「いやいやいやいや! 解らないってば! だからどうしてそうなるの? なんでそうなっちゃうの!? それじゃあ話が飛んじゃってるよ! 確かに飛んで最初の一に戻ったよ! だけどそれって違うよね! これって本末転倒のムーンサルトだよね! スーツの確認と点検をしてるのに、脱いじゃったら意味ないよね! そもそもあたしがいまここで服を脱ぐ意味がまったく存在しないよね!」
そんなことはないよ、アーサ。
自分を卑下してはいけない。
少なくとも方舟が必要な程度には、私の心は大いに潤うのだから。
上も下も、歴史に残る大洪水になることは確実だ。
もっとも、そんなことになったあかつきには、私にとって記録に残る大きな汚点になることは確実に間違いない。
故に、それだけはなんとしても避けねばならない。
私がこれまでコツコツと危ない橋を綱渡りしてきて積み重ねてきたみんなからの信頼が、ジェンガのように音を立てて倒壊してしまう。
この隊におけるキルエリッチャ・ブレイブレドという人間像が、砂のように崩れ去ってしまう。
それだけは、なにがなんでも回避したい。
みんなとへの信頼関係を失いたくない。
みんなとの人間関係を壊したくない。
私の嗜好を満足させるため、趣味と実益を執行するために。
あるよね? しっかりとした信頼関係。
築いてるよね? ちゃんとした人間関係。
私は先ほどのアーサのように頭に浮かんだ疑問符を振り払う。
そして再びアーサへと向きなおる。
「済まない。ちょっと口が滑ったようだ」
私はきりっとした表情のまま、自分の額にコツンと拳を当てる。
「うわぁ・・・・・・・・・すごいやこのひと。ひと言で済まないことを、似合わない茶目っ気で押し通そうとしてるよぉ・・・・・・・・・」
アーサが仰け反るようにして、微妙に私から距離をとる。
どうしたんだい? アーサ?
そんなふうに、怯えたような顔をして。
何も恐いことなど、ないというのに。
怖いひとなど、ここには何処にもいないというのに。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる