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第26話 ポーの訪問
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マジョール王国の王都タランガ。
王都であるがゆえに、宗教に関連した施設も多い。
その一角に英雄の1人となった僧侶ポー・ドゥースが寝起きする家がある。
ドラゴンを倒して英雄となったポーながら、普段は僧侶の1人にすぎない。ドラゴン退治から戻った当初、何かと英雄としてポーを祀り上げようとした人がいた。しかしポーが微笑みつつ、はっきり「無用」と断ったことで、間もなく静かな毎日に戻っていた。
そんなポーのところに、共にドラゴンを倒して英雄となったオーブ侯爵から手紙が届いた。
「うーむ」
手紙を読んだポーは、ここしばらくの新聞を引っ張り出してくる。
「いろいろと起こっていたようだが、これに関わっていたとはなあ」
オーブ侯爵からの手紙には、ラシャンスの頼みで少女の誘拐事件の解決に関わったことが分かりやすく記してある。さらにラシャンスの行方について手がかりがあれば、できるだけ早めに教えて欲しいとも付け加えていた。
「一度、様子を見に行ってみるか」
誘拐事件を掲載した記事とオーブ侯爵からの手紙を読み比べたポーは、久しぶりにラシャンスの家を訪ねてみようと考えた。
一旦決めてしまえば、ポーの行動は早い。
家族に出かける旨を告げた後、手早く荷物をまとめて家を出る。
しばらく歩いて大通りに出たポーは、通りがかった商人の荷馬車に「ちょっと連れていってもらえるかな」と同乗を頼み込む。英雄となったポーと意外な出会いをした商人はポーの願いを「どうぞどうぞ」と快く引き受けた。
商人から聞かれるがままにポーは冒険での出来事を話した。
「…があってな」
「ははあ!」
「…となったんだ」
「おお!そうでしたか!」
ポー達5人の英雄譚は、新聞記事から小説、詩、演劇、音楽など、様々に形を変えて世の中に広まっている。その中には過剰な演出を加えられているものもあったが、ポーを含めてファルツァーらは苦笑しつつ見逃してきた。
そうしたものを見知った人であっても、実際に英雄達から話を聞きたがる人は多い。ポーが同乗を頼んだ商人も似たようなものだった。
貴族であるオーブ・レ・ジェールは近寄りがたく、王国からの任についているファルツアー・ゴルドーやディスタント・ドラムスには頼みにくい。魔法使いのラシャンス・シトロナードはどこかに行ってしまった。僧侶であるポー・ドゥースが一番身近な存在となる。
ポーからすれば、もう何百回と繰り返した話だけに、話の盛上げ方も分かっている。
子供には子供が楽しめるように、大人なら大人が興味を持つように語り口を変えていく。
僧侶として法話で鍛えた口調が、英雄となってこんな形で活かせるとはポー自身も予想していなかった。
ポーを乗せた馬車は王都の外れまで来る。
「ああ、この辺で止めてくれ」
馬車を止めさせたポーに、商人は不思議そうな顔をする。
「どちらまで行かれるのですか?行き先までお送りしますよ」
ポーは「いやいや、ここまでで十分だ。ありがとう」と礼を述べつつ、商人に銀貨を差し出した。
「いえいえ、このくらいのことで。むしろ楽しませてもらったくらいですから」
商人は大きく両手を振った。
「なんの、受け取ってくれ」
謝礼の受け取りを拒んだ商人に強引に銀貨を握らせたポーは、馬車から降りると帽子を振って商人を見送った。
そこからポーがしばらく歩くと、ラシャンスの家が見える。
「ふーむ、以前と変わらない…か?」
ラシャンスの家の前まで来たポーは、家の周りを観察した。
「いや、いくらかこぎれいになっておる…かな?」
開け放たれた2階の窓から少しだけ部屋の中が伺えるものの、ポーが見える範囲では人がいる雰囲気はない。しばらく様子を伺っていたポーは、玄関に近づくと持っていた杖で扉を3度叩いた。
「はーい」
すぐに扉が開いて古代魔法で7歳となったラシャンス、つまりレトワールが顔を出した。
「こんにちは、お嬢さん」
レトワールにポーが微笑みつつ挨拶する。
「ポー……・ドゥース様、…初めまして」
レトワールは取り繕いつつ挨拶を返した。
「ほほぅ、私のことを知っているのだな」
ポーが微笑みつつ問いかける。
「お師匠様からお話を聞いていましたし、凱旋パレードの時にも遠目にお見掛けしました」
オーブに聞かれた時と同じように対応する。
「そうか、そうか。実はちょっと様子を見に来たんだが、入っても良いかな?」
「はい、どうぞ」
レトワールはポーを客間へと招き入れた。
「うむうむ、よく片付いておるな。さすがはラシャンスの一番弟子と言ったところか」
「ふふっ、ありがとうございます」
何度も訪問者を迎え入れたレトワールは、いつ来客があっても良いようにと客間の掃除だけは欠かさないようにしていた。
「お茶を用意しますので、そちらで少しお待ちください」
「うむ」
ポーは記憶にあったものよりきれいになったソファに腰かけた。
すぐに戻ってきたレトワールはお盆にお茶と焼き菓子を乗せて持ってくる。
カップに熱いお茶を注ぐと、菓子とともにポーの前に差し出した。
「どうぞ」
「ありがとう」
自分のお茶を注いだレトワールは、ポーと向かい合わせに座った。
ポーがお茶をすすったのを見て、レトワールもひと口飲む。
「うまいな」
「ありがとうございます」
ポーだけが菓子を口に入れた。
「菓子もうまい」
「ありがとうございます」
「ラシャンスの魔法の弟子だそうだが、家事の腕前はラシャンスと並んでいるのではないかな」
「ありがとうございます」
レトワールは内心で大笑いしつつ、すました顔でお礼を述べた。
それも当たり前。ラシャンス本人なのだから。
ポーは改めて部屋中を見回す。レトワールはポーの視線の先を追いかける。
壁際にある本棚には、魔法書がきれいに並べてある。もちろん本棚もレトワールが数日おきに整理したもの。さらに雑巾がけまでしていた。
ラシャンスの時には気が向いた際に魔法で埃を吹き飛ばしていたくらい。それでもそこそこきれいにはなるのだが、あえて自分の手で雑巾がけをしていたのは、ポーのような目ざとい人への対策だ。
「前にもここに来たことはあるが、本やら巻物やら魔法陣やらで座る場所すら無かったな」
「…はは」
レトワールが『掃除をしてあるのがこの部屋だけだと知ったらどうしよう…』と思った途端、何かを察したようなポーが「どれ、他の部屋も見てみようかな」と微笑みつつ言った。
慌ててレトワールは腰を浮かしかける。
「いえ、その…」
何とか取り繕うとするレトワールに、ポーが大きく笑った。
「まあ、良いさ。健康を損ねない程度にきれいにしてれば…な」
「は、はい」
ポーが真面目な顔になる。
「ところで魔法の勉強はどうしている?」
「お師匠様がいろいろ書き置いたものをいただきましたから、それを見ながら何とか」
「ふーむ」
ポーは天井を見る。
「魔法を極める…だったかな」
「はい、お師匠様は、そんな風に言っていました」
天井を見ながらポーがつぶやく。
「何だかなあ」
ため息交じりのポー言葉に、何となく否定されたように感じたレトワールは「いけませんか?」と聞く。
すぐさまポーは「いや」と否定する。
「旅の目的としては十分さ。あのラシャンスらしい」
「ですよね」
「しかし、とったばかりの弟子を放っておくってのはなあ」
「いえ、私でしたら構いません」
「そうは言っても」
ポーはため息をつく。
「よかったら、私の家に来ないか?ラシャンスほどではないが、私も魔法を教えてあげることはできる。何より小さな女の子が一人暮らしをしているのは物騒だろう」
ポーの申し出に、レトワールは「本当に大丈夫ですから」と言い張る。
「近所の皆さんも良くしてくれますし」
何度か押し問答を繰り返した後、断り続けるレトワールにポーが根負けした。
「分かった。もし何かあったら、すぐに連絡するなり逃げてくるなリしなさい」
レトワールが「ありがとうございます」と頭をさげると、一旦会話が途切れる。
しばらくして、ポーが「ところでラシャンスから手紙があったんだってね」と切り出した。
「はい、ご存知でしたか」
「オーブに知らされてね。見せてもらえるかな?」
レトワールは首を振る。
「最初のお手紙はオーブ様が、次のお手紙はグリーノール国王陛下がお持ちになりました」
ラシャンスが旅先から手紙を送ったのはごまかしだが、その手紙の行方は事実だ。
しかしポーは納得いかなそうな雰囲気で「ふーむ」とあごを撫でる。
「ラシャンスから届いた手紙は2通だけ…と?」
ポーから追及を受けたレトワールは『しまった』と内心で叫んだが、取り澄ました顔で「そうです」と答えるよりなかった。
「これまた随分と弟子を放置する師匠だなあ」
そう嘆きつつ、ポーはレトワールをジッと見る。
「あはは、そうですねえ」
苦笑いしたレトワールは、服の下に湧き出る冷や汗が洪水となったような気がした。
「ん?」
「あれ?」
そこで2人の視線が窓の外を向く。
ラシャンスの家の前で馬車が止まったような音が聞こえたからだ。
馬車から誰かが下りたような音がしたのち、玄関のベルが鳴った。
これ幸いとレトワールがソファから立ち上がる。
「すみません。ちょっと行ってきます」
ポーが「うむ」と言うのと同時に、レトワールは玄関に向かった。
王都であるがゆえに、宗教に関連した施設も多い。
その一角に英雄の1人となった僧侶ポー・ドゥースが寝起きする家がある。
ドラゴンを倒して英雄となったポーながら、普段は僧侶の1人にすぎない。ドラゴン退治から戻った当初、何かと英雄としてポーを祀り上げようとした人がいた。しかしポーが微笑みつつ、はっきり「無用」と断ったことで、間もなく静かな毎日に戻っていた。
そんなポーのところに、共にドラゴンを倒して英雄となったオーブ侯爵から手紙が届いた。
「うーむ」
手紙を読んだポーは、ここしばらくの新聞を引っ張り出してくる。
「いろいろと起こっていたようだが、これに関わっていたとはなあ」
オーブ侯爵からの手紙には、ラシャンスの頼みで少女の誘拐事件の解決に関わったことが分かりやすく記してある。さらにラシャンスの行方について手がかりがあれば、できるだけ早めに教えて欲しいとも付け加えていた。
「一度、様子を見に行ってみるか」
誘拐事件を掲載した記事とオーブ侯爵からの手紙を読み比べたポーは、久しぶりにラシャンスの家を訪ねてみようと考えた。
一旦決めてしまえば、ポーの行動は早い。
家族に出かける旨を告げた後、手早く荷物をまとめて家を出る。
しばらく歩いて大通りに出たポーは、通りがかった商人の荷馬車に「ちょっと連れていってもらえるかな」と同乗を頼み込む。英雄となったポーと意外な出会いをした商人はポーの願いを「どうぞどうぞ」と快く引き受けた。
商人から聞かれるがままにポーは冒険での出来事を話した。
「…があってな」
「ははあ!」
「…となったんだ」
「おお!そうでしたか!」
ポー達5人の英雄譚は、新聞記事から小説、詩、演劇、音楽など、様々に形を変えて世の中に広まっている。その中には過剰な演出を加えられているものもあったが、ポーを含めてファルツァーらは苦笑しつつ見逃してきた。
そうしたものを見知った人であっても、実際に英雄達から話を聞きたがる人は多い。ポーが同乗を頼んだ商人も似たようなものだった。
貴族であるオーブ・レ・ジェールは近寄りがたく、王国からの任についているファルツアー・ゴルドーやディスタント・ドラムスには頼みにくい。魔法使いのラシャンス・シトロナードはどこかに行ってしまった。僧侶であるポー・ドゥースが一番身近な存在となる。
ポーからすれば、もう何百回と繰り返した話だけに、話の盛上げ方も分かっている。
子供には子供が楽しめるように、大人なら大人が興味を持つように語り口を変えていく。
僧侶として法話で鍛えた口調が、英雄となってこんな形で活かせるとはポー自身も予想していなかった。
ポーを乗せた馬車は王都の外れまで来る。
「ああ、この辺で止めてくれ」
馬車を止めさせたポーに、商人は不思議そうな顔をする。
「どちらまで行かれるのですか?行き先までお送りしますよ」
ポーは「いやいや、ここまでで十分だ。ありがとう」と礼を述べつつ、商人に銀貨を差し出した。
「いえいえ、このくらいのことで。むしろ楽しませてもらったくらいですから」
商人は大きく両手を振った。
「なんの、受け取ってくれ」
謝礼の受け取りを拒んだ商人に強引に銀貨を握らせたポーは、馬車から降りると帽子を振って商人を見送った。
そこからポーがしばらく歩くと、ラシャンスの家が見える。
「ふーむ、以前と変わらない…か?」
ラシャンスの家の前まで来たポーは、家の周りを観察した。
「いや、いくらかこぎれいになっておる…かな?」
開け放たれた2階の窓から少しだけ部屋の中が伺えるものの、ポーが見える範囲では人がいる雰囲気はない。しばらく様子を伺っていたポーは、玄関に近づくと持っていた杖で扉を3度叩いた。
「はーい」
すぐに扉が開いて古代魔法で7歳となったラシャンス、つまりレトワールが顔を出した。
「こんにちは、お嬢さん」
レトワールにポーが微笑みつつ挨拶する。
「ポー……・ドゥース様、…初めまして」
レトワールは取り繕いつつ挨拶を返した。
「ほほぅ、私のことを知っているのだな」
ポーが微笑みつつ問いかける。
「お師匠様からお話を聞いていましたし、凱旋パレードの時にも遠目にお見掛けしました」
オーブに聞かれた時と同じように対応する。
「そうか、そうか。実はちょっと様子を見に来たんだが、入っても良いかな?」
「はい、どうぞ」
レトワールはポーを客間へと招き入れた。
「うむうむ、よく片付いておるな。さすがはラシャンスの一番弟子と言ったところか」
「ふふっ、ありがとうございます」
何度も訪問者を迎え入れたレトワールは、いつ来客があっても良いようにと客間の掃除だけは欠かさないようにしていた。
「お茶を用意しますので、そちらで少しお待ちください」
「うむ」
ポーは記憶にあったものよりきれいになったソファに腰かけた。
すぐに戻ってきたレトワールはお盆にお茶と焼き菓子を乗せて持ってくる。
カップに熱いお茶を注ぐと、菓子とともにポーの前に差し出した。
「どうぞ」
「ありがとう」
自分のお茶を注いだレトワールは、ポーと向かい合わせに座った。
ポーがお茶をすすったのを見て、レトワールもひと口飲む。
「うまいな」
「ありがとうございます」
ポーだけが菓子を口に入れた。
「菓子もうまい」
「ありがとうございます」
「ラシャンスの魔法の弟子だそうだが、家事の腕前はラシャンスと並んでいるのではないかな」
「ありがとうございます」
レトワールは内心で大笑いしつつ、すました顔でお礼を述べた。
それも当たり前。ラシャンス本人なのだから。
ポーは改めて部屋中を見回す。レトワールはポーの視線の先を追いかける。
壁際にある本棚には、魔法書がきれいに並べてある。もちろん本棚もレトワールが数日おきに整理したもの。さらに雑巾がけまでしていた。
ラシャンスの時には気が向いた際に魔法で埃を吹き飛ばしていたくらい。それでもそこそこきれいにはなるのだが、あえて自分の手で雑巾がけをしていたのは、ポーのような目ざとい人への対策だ。
「前にもここに来たことはあるが、本やら巻物やら魔法陣やらで座る場所すら無かったな」
「…はは」
レトワールが『掃除をしてあるのがこの部屋だけだと知ったらどうしよう…』と思った途端、何かを察したようなポーが「どれ、他の部屋も見てみようかな」と微笑みつつ言った。
慌ててレトワールは腰を浮かしかける。
「いえ、その…」
何とか取り繕うとするレトワールに、ポーが大きく笑った。
「まあ、良いさ。健康を損ねない程度にきれいにしてれば…な」
「は、はい」
ポーが真面目な顔になる。
「ところで魔法の勉強はどうしている?」
「お師匠様がいろいろ書き置いたものをいただきましたから、それを見ながら何とか」
「ふーむ」
ポーは天井を見る。
「魔法を極める…だったかな」
「はい、お師匠様は、そんな風に言っていました」
天井を見ながらポーがつぶやく。
「何だかなあ」
ため息交じりのポー言葉に、何となく否定されたように感じたレトワールは「いけませんか?」と聞く。
すぐさまポーは「いや」と否定する。
「旅の目的としては十分さ。あのラシャンスらしい」
「ですよね」
「しかし、とったばかりの弟子を放っておくってのはなあ」
「いえ、私でしたら構いません」
「そうは言っても」
ポーはため息をつく。
「よかったら、私の家に来ないか?ラシャンスほどではないが、私も魔法を教えてあげることはできる。何より小さな女の子が一人暮らしをしているのは物騒だろう」
ポーの申し出に、レトワールは「本当に大丈夫ですから」と言い張る。
「近所の皆さんも良くしてくれますし」
何度か押し問答を繰り返した後、断り続けるレトワールにポーが根負けした。
「分かった。もし何かあったら、すぐに連絡するなり逃げてくるなリしなさい」
レトワールが「ありがとうございます」と頭をさげると、一旦会話が途切れる。
しばらくして、ポーが「ところでラシャンスから手紙があったんだってね」と切り出した。
「はい、ご存知でしたか」
「オーブに知らされてね。見せてもらえるかな?」
レトワールは首を振る。
「最初のお手紙はオーブ様が、次のお手紙はグリーノール国王陛下がお持ちになりました」
ラシャンスが旅先から手紙を送ったのはごまかしだが、その手紙の行方は事実だ。
しかしポーは納得いかなそうな雰囲気で「ふーむ」とあごを撫でる。
「ラシャンスから届いた手紙は2通だけ…と?」
ポーから追及を受けたレトワールは『しまった』と内心で叫んだが、取り澄ました顔で「そうです」と答えるよりなかった。
「これまた随分と弟子を放置する師匠だなあ」
そう嘆きつつ、ポーはレトワールをジッと見る。
「あはは、そうですねえ」
苦笑いしたレトワールは、服の下に湧き出る冷や汗が洪水となったような気がした。
「ん?」
「あれ?」
そこで2人の視線が窓の外を向く。
ラシャンスの家の前で馬車が止まったような音が聞こえたからだ。
馬車から誰かが下りたような音がしたのち、玄関のベルが鳴った。
これ幸いとレトワールがソファから立ち上がる。
「すみません。ちょっと行ってきます」
ポーが「うむ」と言うのと同時に、レトワールは玄関に向かった。
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