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【二章】四人の魔術師
三話 エダム①
しおりを挟むいやもう、本当。ヤっちゃった。としか言いようがない。
元から僕は性に奔放な方ではあった。それが先天的だったのか、後天的なものなのかは今では知りようがないけど。
僕は弱小魔術師の家系であった。
我が家では“自慰が罪”という価値観で『子作りと洗浄以外で性器に触れるな』という教えだった。何故そんな教えなのか一応理由はある。体液には魔力が多く含まれており、家系が弱小ゆえに“少しの魔力も外に出さない、無駄にしない”という考えだったようだ。
そのため随分抑圧された思春期を過ごした。あまり良い思い出はない。
真面目な僕は大人しく従っていたけど、それに効果を感じる事もなかった。途中でアホらしくなって大きな理由もないのに不満が爆発してしまった。それから僕は性行為に溺れる事になる。変装し、エダムではない別の存在として男女問わず体だけの関係を沢山もった。
教えに反したことで、僕はいつの間にか弱小魔術師家系の中で異例の魔力を保持することになる。どうやら出すもの出して、どんどん循環させていく方が魔力は育つようだ。この方法にも才能や向き不向きもあるかもしれないが、意図せず僕には最適解だったらしい。
当然、優秀な僕は一族の誇りのように扱われた。表向きの僕は絵に描いたような良い息子であったが、全くと言っていいほど家族に恩を感じなかった。
縁談の話は沢山きたけど、絶対に結婚もしないし子供も作らないと決めていた。家のための道具になりたくなかったし、思春期の不自由に対する復讐心も大きかった。
それに僕が優秀な事に血筋は関係ない。ヤりまくったのが良かったと、誰にも言わなかった。教えた所で信じたくはないだろう。
そんな時期に王に引き抜かれ、好待遇で魔術の研究をさせてもらってからの人生は本当に楽しかった。王は全く魔力を持たない珍しい存在なのに、魔術師をとても大切にする。魔力無しに劣等感を感じて魔力持ちを排斥する君主だっているというのに、王は稀有な人だったと思う。
そんな王は国内外の魔術師からとても好かれていた。王自身も、魔力がないのに魔術や魔法に興味津々で、よく研究所を訪れては魔術の勉強をしていく。僕はその案内役をする事が多かった。
僕と王は、おじさん同士そこそこ仲が良かったと思う。異常に魔術師を尊敬する王の夢を壊したくなくて、僕はずっと王の前では真面目で落ち着いた執事のような態度を崩さなかった。
でもやっぱり、王ともヤってみたいな~って思ったりするわけよ。王は強く、気高く、優秀なのに、たまに子供みたいなミスをしたりする。男らしく頼りになる王という共通認識の中、どこか守りたくもなる不思議な魅力を持っていた。
流石に誘うだけでも不敬罪になるだろうから絶対にそんな素振りは見せなかったけどね。
塔へ向かう前の餞別に抱かせろって言えば、王は抱かせてくれただろう。でもそれは王の優しさを踏みにじる行為だ。王を傷付けたくないというのもあるが、僕は最後に幻滅される覚悟もなく、結局、昔と変わらず物分かりの良いフリをするだけだった。
それがまさか、数百年越しにヤっちゃうとはなぁ。しかも調子に乗って調教までしてしまった。ルーシャンに才能があったし、体に教え込むのが楽しかったから後悔はない。
記憶が全て戻った今となっては、我ながら最低だとわかっているけど「ラッキーだったな」とも思ってしまう。塔に入って良かったと思えるくらい、どエロいルーシャンは最高のご褒美だったと言える。
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