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18章
命より大事な
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今も雪が降るように舞い降りてくる前世の記憶。辛かった事と共に嬉しかった事、幸せだった日々も次々と蘇ってくる。
「シルヴァリオンはバカだなぁ…」
よりかかる俺の右腕をマッサージするかのように擦っていた手がピクリと止まる。
辛かった時代を覆すほどに愛してもらったし最期まで守ってもらったのに、なんであんな選択をしたのか自分でもわからない。
「許してやってくれな…たんまり怒っといたから」
オレの言葉にマッサージを再開した海瑠が小さくうなずく。コイツがオーディンとはずいぶん性格が違ってしまっている原因はシルヴァリオンが見つからなかったせいだろう。
絶対に一緒になろうと固く誓ったのにやっと見つけたオレはちっとも覚えていない。正太朗としてのオレをシルヴァリオンと確信しきれず、且つどちらをも諦めきれないつらさ。
それら全部がオレのせいなんだ―――――
「あんなとこに隠れやがって十数年もお前を苦しめたアイツをぶん殴っとけば良かったな」
マッサージされてない左手で拳を作って見せるオレの顔を驚いたように見つめる青い瞳が咎めるように見開かれる。
「やめてくれ。俺の命より大事な嫁なんだから」
その言葉に瞬間湯沸かし器のようにオレの顔の熱が上がったのがわかる。
「よ…嫁って!男だしっ!!」
あわてて体を離し【タカハシサン】をカウチに残し立ち上がるとつられて海瑠も立ち上がり、サンデッキの手すりと自分の両腕でオレを閉じ込めにかかる。
のけぞるような形でサンデッキを掴み、迫りくる超絶美形を見上げる。
「おまえ…ほんと前世まんまだな。オレはこんななのに」
前世じゃ神の子だ女神だと称された美貌のかけらもない、黒髪黒目な標準的日本人の平凡なオレ。身長も結局165cmにも届かなかった貧弱な体を見下ろすコイツはまだまだ成長してて細マッチョじゃなくてマッチョの部類に片足を突っ込んでた。
「しょーちゃんはシルヴィそっくりだよ」
「どこがだYO!」
速攻で突っ込むのにコイツは真顔で続ける。
「不思議なんだよね…こんなに清らかで可愛らしくて目を離すことも出来ないくらい魅力的なのに、昔からそれに誰も気づいてないんだ」
「お前それは惚れた欲目すぎだろ」
こんなチンチクリンなオレを絶賛しすぎだろて。
「そんなことない!」
迫りくる美形の顔から逃れて手すりにのけぞるオレの背に逞しい腕が回され支えてくれる。
いや、支えるより迫るのやめてくれし。
「初めて見つけた日もしょーちゃんだけが光り輝いてた。周りが全て消えてしまうくらいに神々しく存在してた」
色気だだもれでウットリと言う海瑠だが、幼稚園児だったころのオレは顔や膝小僧に絆創膏が絶えない小汚い悪ガキだったはずだ。
「しょーちゃんを誰にもとられなくて俺には好都合だったけどね。けど…記憶を取り戻すとともにシルヴィがあふれ出てるみたいで渉もご両親もしょーちゃんが信じられないくらい綺麗になってるって驚いてた」
形のいい唇がそんなことを言いながらオレの唇に重なってくる。
バードフィーダーに来た小鳥が見てるのに。
朝っぱらから深いキスしてくるんじゃないっつーの。
「シルヴァリオンはバカだなぁ…」
よりかかる俺の右腕をマッサージするかのように擦っていた手がピクリと止まる。
辛かった時代を覆すほどに愛してもらったし最期まで守ってもらったのに、なんであんな選択をしたのか自分でもわからない。
「許してやってくれな…たんまり怒っといたから」
オレの言葉にマッサージを再開した海瑠が小さくうなずく。コイツがオーディンとはずいぶん性格が違ってしまっている原因はシルヴァリオンが見つからなかったせいだろう。
絶対に一緒になろうと固く誓ったのにやっと見つけたオレはちっとも覚えていない。正太朗としてのオレをシルヴァリオンと確信しきれず、且つどちらをも諦めきれないつらさ。
それら全部がオレのせいなんだ―――――
「あんなとこに隠れやがって十数年もお前を苦しめたアイツをぶん殴っとけば良かったな」
マッサージされてない左手で拳を作って見せるオレの顔を驚いたように見つめる青い瞳が咎めるように見開かれる。
「やめてくれ。俺の命より大事な嫁なんだから」
その言葉に瞬間湯沸かし器のようにオレの顔の熱が上がったのがわかる。
「よ…嫁って!男だしっ!!」
あわてて体を離し【タカハシサン】をカウチに残し立ち上がるとつられて海瑠も立ち上がり、サンデッキの手すりと自分の両腕でオレを閉じ込めにかかる。
のけぞるような形でサンデッキを掴み、迫りくる超絶美形を見上げる。
「おまえ…ほんと前世まんまだな。オレはこんななのに」
前世じゃ神の子だ女神だと称された美貌のかけらもない、黒髪黒目な標準的日本人の平凡なオレ。身長も結局165cmにも届かなかった貧弱な体を見下ろすコイツはまだまだ成長してて細マッチョじゃなくてマッチョの部類に片足を突っ込んでた。
「しょーちゃんはシルヴィそっくりだよ」
「どこがだYO!」
速攻で突っ込むのにコイツは真顔で続ける。
「不思議なんだよね…こんなに清らかで可愛らしくて目を離すことも出来ないくらい魅力的なのに、昔からそれに誰も気づいてないんだ」
「お前それは惚れた欲目すぎだろ」
こんなチンチクリンなオレを絶賛しすぎだろて。
「そんなことない!」
迫りくる美形の顔から逃れて手すりにのけぞるオレの背に逞しい腕が回され支えてくれる。
いや、支えるより迫るのやめてくれし。
「初めて見つけた日もしょーちゃんだけが光り輝いてた。周りが全て消えてしまうくらいに神々しく存在してた」
色気だだもれでウットリと言う海瑠だが、幼稚園児だったころのオレは顔や膝小僧に絆創膏が絶えない小汚い悪ガキだったはずだ。
「しょーちゃんを誰にもとられなくて俺には好都合だったけどね。けど…記憶を取り戻すとともにシルヴィがあふれ出てるみたいで渉もご両親もしょーちゃんが信じられないくらい綺麗になってるって驚いてた」
形のいい唇がそんなことを言いながらオレの唇に重なってくる。
バードフィーダーに来た小鳥が見てるのに。
朝っぱらから深いキスしてくるんじゃないっつーの。
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