悠遠の誓い

angel

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12章

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『しょーちゃん!しょーちゃ…』

なんだよ海瑠かいるうるさいよ。オレまだ眠いし。
お前…何泣いてんだ?男前が台無しだぞ。

あぁ、懐かしいな海瑠かいるの匂いだ。
懐かしい?なんでだコイツがオレから離れるわけないだろ。やっぱ海瑠がいない方が夢だったんだ。
もう一回一緒に寝ようぜ。あ、眠る前におやすみのキスしてほしいな。深くないヤツでいいからさ。触れるか触れないかのアレお願いします。





「…タ!おいショタ!」

うっすら目を開くとわたるのドアップがあった。
んだよ、お前かよ。

わたるまで泣いてる。いつも笑ってるわたるの泣き顔初めて見たけど泣いても目がなくなるんだな。


白い部屋。オレの腕につながる点滴。


あれ?




ここ…病院………?



「海瑠…は」

いたんだ。さっきまで傍にいた。

「まだ寝てろて。すごい血やったんやで」

「どこ…」

起き上がりたいのに渉が押さえてくる。離せったら。


うっすら残るこの匂い。

「…やだ。離せ…!海瑠…海瑠…」

点滴の針を引き抜き、起き上がろうとするのに渉がおさえてくる。

「動いたらアカンて!頼むし、寝ててくれ。センセー!センセー呼んで!」

看護師さんがドアを開けるとフワリと海瑠のコロンの香りが強まる。
オレは渉を突き飛ばし、ベッドから転げるように降り部屋を出て叫んだ。

「―――――かいる!!!!!」

頭がガンガンする。視界が歪む。夢じゃない、この香りは―――――

壁を伝いながら廊下を歩く。くそっ、オレの足!しっかり歩けよ!

「海瑠!…いるんだろ。海瑠!!海瑠っ」

看護師さんが怒ってるけど関係ない。
裸足のせいか寒気がして世界が色を失っていく。
だめだ………行かないで。もうオレを置いて行かないでくれ。

「ショタっ!動くなって、部屋もどろ」

「やだぁ…どけって!」


海瑠かいるがいないとダメなんだ、電車に一人でなんて乗れないし髪も自分じゃ洗えない
ドライヤーも使えないしエレベーターも乗れやしない
海瑠がいないと… 一人じゃ歩けない。息も出来ないんだ、だから、だから…

「かいるっ!待って…行かないで―――――」

渉を押しのけ暗い廊下の手すりをたどり香りのしたほうに歩く


海瑠がいないんじゃダメなんだ。そんな成長ならいらない。こんなダメなオレを好きって言ってくれただろ?シルヴァリオンだと思ってたっていい。そうじゃないって失望されてもいい。オレにはお前しかいないんだから…だから……



海瑠かいる―――――っ!!!」





掴んでた廊下の手すりが急になくなりバランスを崩したオレは、床に打ち付けられる寸前に強い腕に抱きしめられた。







目の端に映る金の髪と甘い懐かしい香り。

廊下に転げながらオレを受け止めたその腕がオレを抱きしめてくれる。


「うっ、ぐぅ、っうぐっ。ヒック」
「しょーちゃ……」

絶対に離さない。抱き留めてくれた海瑠の首に腕を回す。
なんでか右腕はグルグルに包帯で固定されて動かせないから左手一本で縋り付く。

捕まえた。やっと見つけたんだ。オレのだ…オレの海瑠かいるだ。
 

「うわぁあん、んあぁ!…ぃる、かいるぅ。…やだっ!!も…どこにも、ウック…っちゃヤダあああぁ…!」


白い廊下でみんなが見てるのにオレは子供みたいに泣いた。
死んだって離さない。どこにも行かせない。やっと捕まえたんだ。オレのだ…オレの……

「うっ、ぐぅ…オレのだっ…グスッ。ぜってーに渡さない…っ!」

「うん、うんっ。ごめん、ごめんねしょーちゃん」


大勢が見てるのに抱きついたまま離れないオレの頭を撫で、頬にキスをくれる。

「離れないから安心して」

抱きつく腕を緩め、久方ぶりに海瑠かいるの顔を見る。
金髪がピカピカしてて青い目が透き通るように綺麗で。思い出の中の幼馴染よりちょっぴり大人っぽくなったその顔はやっぱりイケメンで。細めた目が優しい笑みの形になる。

「一生……死ぬまで一緒にいよう」 



一生…?死ぬまで…?



「しょーちゃん愛してる」


病院の廊下で大勢が見てるのに、薄く開いた唇が近づいてきて夢のようにオレの唇にキスをした。


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