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5章

16 最強の種族

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 ラフが俺と永遠とわと千早を連れて、屋敷から離れて草原を進んでいく。

 綺麗な薄空色の花の絨毯が果てまで続いていそうな素晴らしい草原を、真っ白なアルゼ永遠が駆け回る。
 その後ろを千早ちはやも嬉しそうに走っている。

 --------これだけ見通しのいい草原があるのか。

 木が一本も生えていない、大岩もない、ただただ平坦な草原を見まわす。
 10ムヌッテ以上も歩いているのに風景は変わらず、屋敷を振り返るとかなり離れたことがわかる。
 

 高い草も生えていないこのような平原には大型獣などはいないのだろうかと警戒していると、アルゼ永遠の周りに生き物が集まりだした。
 見たところ、小型の鳥や小さいルセやチョシ、その他名も知らぬ生き物が永遠とわと千早の肩に止まったり周りを走ったり飛んだりしている。

 --------危険な動物はいないか。


「この地は危険な生物はいませんし、どんな生物であろうとも白の番様に害をなすことはできません」

 俺の考えを察したのかラフが呟く。

「あれこそが白の番様である証です。すべての生き物から愛される天より使わされし特別なお方」
 
 --------あの不思議な現象も永遠とわが白の番だからだと言うのか。

 俺とラフの周りには虫くらいしかいないし逃げていくのに、永遠とわの周りには沢山の生き物が集まってゆく。

「少し集まり過ぎですね、行きましょう」

 ラフが先導する形で永遠とわたちのほうへと進むと、生き物が去っていく。

「俺が近寄れる生き物なんてないからな」

 永遠とわと出会ってからは近寄れる距離が縮まったとはいえ、やはり数ムタレにまでも近づくと逃げられてしまう。

「それは久遠くおん様だけではないですよ。われらクウガ族を恐れない生き物はいません。なぜならば最強の種族、あらゆる獣人の頂点ですから」

 --------俺がアルゼ異質な存在だからじゃなかったのか?

「最強…?」

「はい」

 リウアン族こそが最強の種族だと教えられ生きてきた俺には信じがたい言葉だった。
 それに…

「あのたくさんいるクテニ族とやらはどうなんだ。恐れているようには見えないが」

 周りを見回してもクテニ族はいない。

 「獣人の種族によってはクウガ族強い者を恐れるよりも従属したいと本能で感じる種族もたくさんいます。
 その筆頭がクテニ族でありその主従関係は千年以上続いております」

 生き物が慌てて去ってゆき驚く永遠とわが、俺を見つけて満開の笑顔で駆けてくる。

「おぇ!ここひろい。どこまでもおはな!きれい」

 興奮して久遠くおんと呼ばず、おぇと言ってしまっている永遠とわのほうがもっと綺麗だと思うが、恥ずかしくて言えるわけもなく。

「そうだな、すまない俺が来たせいでみんな逃げてしまったな」
「だいじょぶよ」

 ギュと俺の右手を握り、歩き出す永遠とわが元の位置に戻り花の絨毯にペタリと座り、俺にも座れと促す。
 千早とラフも少し離れて座る。


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