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秘密のミッション

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 結婚後、1年以内?あたりのお話です。

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 あれからも廃神殿を訪れては神に感謝を祈り、川辺の東屋でお茶したりしてボクは皇宮での息苦しさを癒していた。
 皇宮というところは跳梁跋扈ちょうりょうばっこ渦巻く場所で、跡継ぎが生まれないと囁かれたり、なんとか取り入ろうと隙あらばすり寄ってくる人がいたりで(近寄ることも出来ずに黒服さんに排除されているが)
 沢山の贈り物の返礼品選びや舞踏会の招待状やお願い事の処理に僕はとても疲れていた。

 それに気づいたオーディンが

「皇妃としての仕事なぞしなくていい。他国の王の謁見?そんなものになぜシルヴィを見せねばならないのだ。舞踏会だ?シルヴィが行きたいならば私もついていくがシルヴィが望まぬ行事に参加する必要はない」

 オーディンがそう宣言してくれて、この廃神殿のある山の上に宮殿を建ててくれた。


「シルヴィは毎日ここに訪れるのだからここに宮殿を建てるべきだった。気づくのが遅れて申し訳なかった」

 誰にも頭を垂れることのない、この世界一の絶対権力者が僕の右手を両手に包みながら跪き頭を下げた。

 それからはオーディンもこちらで寝起きし、宮殿に出向き政務をする生活を送っている。
 ここは宮殿というほどには大きくないけれど、母国のエーリスの王宮に匹敵するくらいの大きさはあるかもしれない。
 ここで起きてオーディンと一緒に朝食を食べ、皇宮に向かうのをお見送りする。

 黒服さんがいっぱいいるのに、朝のお別れのキスは深くて長くてそのせいで変な場所がオッキしちゃうから困る。
 名残惜しそうに出かけていくオーディンを見送った後は日課の廃神殿に行き、神に感謝を捧げる。

 あとは特にすることもなく、川のほとりに作った施術院という孤児を育てる建物の子供たちと遊んだり楽しく過ごしている。
 もちろんその時も、そこら中に見知った黒服さんたちが常にいて見守ってくれていて安心だ。



 今朝も熱烈なキスでようやくオーディンを送り出した後、火照る頬を冷ましながら周りへ視線をめぐらす。
 正面玄関の扉を閉めた後、警護のために立つ黒服さん。
 オーディンの外套を着せる係の人。
 ボクの専用警護の綿さんほか数名の黒服さんが見つめる中、ボクは両の拳を握りしめやる気満々の表情で告げた。




「皆さん、今日はよろしくお願いします!」





 ボクは今、秘密ミッションの真っただ中にいる。

 絶対にオーディンに知られてはならない。
 そのためには黒服さんたちの協力がなくてはならないのだ。

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 お久しぶりです!
 BL小説大賞はじまりましたね。
 新作「ひとりぼっちの嫌われ獣人のもとに現れたのは運命の番でした」を連載中です。
 よければそちらも読んでいただけると嬉しいです!

「転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった」
「悠遠の誓い」
 も合わせてエントリーしていますのでぽちっと投票していただけると大喜びします♪



 オーディン&シルヴァリオンのその後の何気ない日常話ですが、数日よろしくお願いします。


                                             angel
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