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第4章 迷い
【40】揺らぐ気持ち
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散々泣いたボクは、いつの間にかオーディンの膝に抱かれていた。
17歳にもなって号泣してしまった気恥ずかしさで顔を上げれない。
川辺にテーブルと椅子が現れ、タパスと飲み物が並べられていた。
大勢いたはずの黒服さんたちは、どこかに消えてオーディンと二人っきりだった。
あんなに泣いた訳を聞かないオーディンが「少しでも食べよう」と椅子へと座らせてくれて、飲み物を手渡してくれた。
「ごめん…なんか色々思い出しちゃって」
照れ笑いをするボクの頭をポンポンって撫でてくれる。
きらめく川面を見ながら二人でタパスを食べた。
その後も、先に進むこともせず寄り添い、川面をただボンヤリと見つめて過ごした。
次の日、ダム建築予定地の視察に出かける用があって、山の光を調べに一緒に行けないオーディンが心配そうに『黒服から離れないこと、危なそうな場所には近づかないこと』と注意した。
けれどボクは昨日の川辺から先に進むことができなかった。
川が見える大きな石の上に座り一人で考えにふける。
シアーズに来てからのこと、オーディンを好きになったこと、エーリスのために奔走したこの2年のこと。
いよいよ夢が現実になろうとしているこの段になって、ボクは怖くなってしまっていた。
―――王位継承権を捨てオーディンの妃になるという現実が間近に迫っていた―――
唯一の跡取りなのに王座を捨てオーディンとの愛を選ぶことは、同性愛に理解が少ないエーリスで、きっとボクは異常者として人々に蔑まれるであろう。二度と国には帰れないし、両親にも会えることはなくなるだろう、それは覚悟してた。
しかし現世の家族のことは意識的に考えないようにしていた。
考えてしまうと胸が張り裂けそうになるから…
覚悟していたはずなのに、懐かしいこの風景がボクの決意を揺すぶる。
『会いたい、会いたい…帰りたい…』 膝を抱え、頭をうずめるようにして声を殺して泣いた。
次の日も、その次の日も、先に進むことができず川辺でずっと過ごした。
樹々の隙間からの木漏れ日がボクの足元をユラユラと照らす。
柔らかな日差しが、シアーズにいるのか現世にいるのかの境界を曖昧にしていく。
『○○―――っ!』 幼い頃の兄が呼ぶ声が聞こえた気がした。
『暗くなる前に帰ってこいって言っただろ?母さんを心配させるんじゃないよ』
叱るような口調だが、声に安堵感があふれている。
心配かけてごめんなさい…
オーディンはあれから一緒にここに来ることはなくなった。
毎日、ボクが川辺の石ころの上で座り込んでいるのを心配した黒服さん達がガゼボを作ってくれた。
陽にあたると赤くなるボクの肌を心配して、天幕を張り巡らせてくれている。
そこでボクは柔らかなクッションに囲まれ、川の流れる音を聞いていた。
何時間も川を見つめては隠れて泣いているボクに付き合ってくれている黒服さんたちに申し訳なくて、先に進まなければと思うのに、ここから先に行けないでいた。
考えることをやめていた現世への未練を断ち切らなければこの先には進めない。
神に会いたい…
本当に王になったら現世に帰れるの?って聞きたい。
(神なんて本当はいなくて、全部ボクの妄想なのかもしれない)
そう思うことで、王にならず現世にいる家族に二度と会えないという未来を選ぶ罪悪感を消そうとしていた。
17歳にもなって号泣してしまった気恥ずかしさで顔を上げれない。
川辺にテーブルと椅子が現れ、タパスと飲み物が並べられていた。
大勢いたはずの黒服さんたちは、どこかに消えてオーディンと二人っきりだった。
あんなに泣いた訳を聞かないオーディンが「少しでも食べよう」と椅子へと座らせてくれて、飲み物を手渡してくれた。
「ごめん…なんか色々思い出しちゃって」
照れ笑いをするボクの頭をポンポンって撫でてくれる。
きらめく川面を見ながら二人でタパスを食べた。
その後も、先に進むこともせず寄り添い、川面をただボンヤリと見つめて過ごした。
次の日、ダム建築予定地の視察に出かける用があって、山の光を調べに一緒に行けないオーディンが心配そうに『黒服から離れないこと、危なそうな場所には近づかないこと』と注意した。
けれどボクは昨日の川辺から先に進むことができなかった。
川が見える大きな石の上に座り一人で考えにふける。
シアーズに来てからのこと、オーディンを好きになったこと、エーリスのために奔走したこの2年のこと。
いよいよ夢が現実になろうとしているこの段になって、ボクは怖くなってしまっていた。
―――王位継承権を捨てオーディンの妃になるという現実が間近に迫っていた―――
唯一の跡取りなのに王座を捨てオーディンとの愛を選ぶことは、同性愛に理解が少ないエーリスで、きっとボクは異常者として人々に蔑まれるであろう。二度と国には帰れないし、両親にも会えることはなくなるだろう、それは覚悟してた。
しかし現世の家族のことは意識的に考えないようにしていた。
考えてしまうと胸が張り裂けそうになるから…
覚悟していたはずなのに、懐かしいこの風景がボクの決意を揺すぶる。
『会いたい、会いたい…帰りたい…』 膝を抱え、頭をうずめるようにして声を殺して泣いた。
次の日も、その次の日も、先に進むことができず川辺でずっと過ごした。
樹々の隙間からの木漏れ日がボクの足元をユラユラと照らす。
柔らかな日差しが、シアーズにいるのか現世にいるのかの境界を曖昧にしていく。
『○○―――っ!』 幼い頃の兄が呼ぶ声が聞こえた気がした。
『暗くなる前に帰ってこいって言っただろ?母さんを心配させるんじゃないよ』
叱るような口調だが、声に安堵感があふれている。
心配かけてごめんなさい…
オーディンはあれから一緒にここに来ることはなくなった。
毎日、ボクが川辺の石ころの上で座り込んでいるのを心配した黒服さん達がガゼボを作ってくれた。
陽にあたると赤くなるボクの肌を心配して、天幕を張り巡らせてくれている。
そこでボクは柔らかなクッションに囲まれ、川の流れる音を聞いていた。
何時間も川を見つめては隠れて泣いているボクに付き合ってくれている黒服さんたちに申し訳なくて、先に進まなければと思うのに、ここから先に行けないでいた。
考えることをやめていた現世への未練を断ち切らなければこの先には進めない。
神に会いたい…
本当に王になったら現世に帰れるの?って聞きたい。
(神なんて本当はいなくて、全部ボクの妄想なのかもしれない)
そう思うことで、王にならず現世にいる家族に二度と会えないという未来を選ぶ罪悪感を消そうとしていた。
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