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第2章 オーディン

【24】 嫉妬

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異母弟のリュドミールの5歳の誕生日を祝うためにシルヴィと共にリムジンで王宮に向かう。
広い車内の隅でチョコンと座る姿が愛らしい。
私が側によると頬を染め体に力が入るのを感じる、あぁ…今日もなんと可愛いのだ私のシルヴィ。

昨夜、あまり可愛がれなかったことを思い出す。
しかしこの体には私の所有印が数多く残されている。
長い髪をかき上げ、1番最初につけた首の後ろ側を確認する。
少し薄くはなっていたが私のつけた印が白い肌を彩っていた。
私の行動を訝しみ、見上げてくるシルヴィのうなじが桜色に染まっていて、側近も車内に控えているというのに押し倒したい衝動が沸き起こる。

髪を元の位置に戻し、私は王宮で会議があるので終わったら黒服と先に帰っているようにと告げた。
シルヴィを王宮で一人にするのは心配で心配でたまらない。
前もってパーティ会場周辺には【影】を配置してはいるが…
外交会議などすっぽかして、ずっと隣で見張っていたい。

パーティ会場に入り異母弟にプレゼントを渡し、私は会議へと向かった。
部屋を出る際に、リュドミールを抱き上げるシルヴィの笑顔が目に入る。
なんと麗しい光景か―――


なんとかして写真に撮ることを黒服から【影】に伝えさせた。





皇子宮に戻れたのは夜遅くなってからだった。
ボンクラ大臣どものおかげでこんな時間になってしまった。
【影】からシルヴィのこの日の様子は聞いていた。
『第2皇子殿下がシルヴィさまを別室に招かれ、何やら話しこまれていた模様』
その報告を受けた時、私の脳内に凶暴な感情が溢れ出した。
私が皇子妃にすると宣言した相手と密室で二人きりになるという行為を許せなかった。
第2皇子には外交と外遊と称して、しばらく国から追い出すことを決めた。

足早にシルヴィの寝室へと駆け込むと、【タカハシサン】を手に今にも寝ようかというところで、私を見るとぎこちない笑みを見せた。
『なにかされたのか…!?』心臓が早鐘を打つ。

第2皇子と何をしてたのかと問い詰めると、そっぽを向いて『婚約者がいるの?』と聞いてきた。
こういう質問をすると言うことは第2皇子から聞いたのだろう。
もしかして嫉妬してくれたのだろうか?
『数人いる』と答えると、セフレもいるのかと問われる。
セフレ…?とは異国語であろうか。話の流れで性欲処理の相手のことだと察し、それも数人いると答えた。
もっと嫉妬してくれ…
無言のシルヴィにそんな想いを込めて【タカハシサン】をギュッと抱く手に触れようとした時

『ボクにも紹介してよ!』などと、とんでもないことを言ってきた。

この私に嫉妬させようとしているのか?

落ち着け…怒りを鎮めるのだ、怖がらせてはならない。
目を合わせず頬を染め俯くシルヴィは私の噴気には気づかない。

「ダメだ、シアーズ属国王家の結婚は皇国の了承が必要だ」

かろうじてそう告げたが、顔を上げたシルヴィが私を見るなり怯えた表情を見せた。
いけない…抑えきれてなかったか。

この夜は怒りに任せて酷いことをしない自信がなかったので、眠っているシルヴィのベッドに訪れるのはやめた。
明日からは性処理相手がほしいなどと考えられないくらいにシルヴィの精を搾り取ると決めた。



次の日、第2皇子の処遇を実行するべく王宮に向かった。
休日であるこの日、シルヴィを皇子宮から決して出さず、一人にもせず、宮殿内を案内して過ごさせるようにと黒服に命じた。
せっかくの休日、シルヴィとずっと一緒に過ごしたかったのに…。



くだらない用事をなんとか済ませ、帰宮し黒服の報告を受ける。
『皇子宮の大浴場をいたく気に入られたご様子で、入りたいと所望されてます』

考えがすっかりと抜け落ちていた露天浴場か…
一緒に入るチャンスだ、即了承する。
ウキウキとした様子でタオルや着替えを抱きしめているシルヴィ。そのようなもの使用人が用意するであろうに可愛いな。
メイドたちに服を脱がされる時になって、私はマズイと遅まきながら気づいた。
所有印の吸い痕を見たとて騒ぎ立てるようなメイドはおらぬのはわかっているが、シルヴィの裸体を見ていいのは私だけだ。
幸いなことにメイドに脱がされることをシルヴィが嫌がってくれたおかげで、その事態は回避できた。
なんと恥ずかしがり屋なのだろう、可愛いな。
イタズラ心が沸き脱がせてくれと言うと、困り顔をしながらも脱がせてくれた。
私の体を見ないようにしているのも可愛らしい。
自分の衣類を脱ぎ、バスタオルを体に巻きつけたシルヴィが長い髪を紐で頭頂部にまとめていた。
団子のように頭頂部にまとめられた髪型が、可愛さを更に増した。

可愛いしか言ってない気がするが、当然である。
この世の可愛いの集合体がシルヴィであるからだ。

湯に入ったシルヴィの頬が色づき、気持ちよさそうな吐息を漏らす。
チラと私のほうを見て恥ずかしそうにする。
別の湯に入りに行くシルヴィの体のあちらこちらに私がつけた所有印が見える。
濃い印、薄くなった印、その全てが愛しい。
もっとたくさんつけたい…白い肌に満開の花が咲いたかのごとく。
シルヴィは自分を洗い終えると、私を洗うと言ってくれた。
シルヴィに髪や体を触られるのは、はじめてな気がする。
欲情しないようにするのに骨が折れた。

『オーディン様 少しづつでもいいので自分で洗う練習しませんか?』

え…こうして毎日洗ってくれないのか?
お互いに洗いあいっこでも良いな。
しかしまだそれを言うのは早いだろう、今はあきらめることとして

「こうして毎日一緒に、この風呂に入ってくれるなら」と返答したらコクンとうなずいた。



うなじに見える吸い痕が随分と薄くなっている、今宵 更に同じ場所に印を刻もう。


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