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Cantabile

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​    〇音楽室

 ​【照明 全体】 

    ​藍  下手向いて

藍 「眞白今日も休み。私のせいだよね
   ・・・私が見捨てたから」

​    彩歌 上手から登場 

藍 「ほんと私なにも・・・出来てない?
   ああもう! なんなのアイツ!
   登のくせにあんな奴誘うんじゃなかった!」

    ​彩歌 恐る恐る声を掛ける

彩歌「藍さん?」

藍 「っ?! って彩歌ちゃんか」

彩歌「すみません、彩歌ちゃんです」

    満月 上手袖から声を出す

満月「放しなさい! 放しなさいよ、この変態!」

一星「誰が変態だ、誰が!」

​    一星 満月を引きながら登場 

2人「一星くん」(琴音・満月)

一星「琴音まで?!
   ああ、もういいから大人しくしろ!」

​    一星 満月を椅子に押し付ける 

琴音「諦めなよ、満月ちゃん」

満月「コイツにこんな力あるなんて思わないでしょ
   普通! もう逃げないわ、放して」

​    一星 満月と睨めっこ 

琴音「一星くん、セクハラ」

一星「ういっす」

​    一星 満月から離れる 

満月「はあ。それで、話は大体聞いたけど、なに?
   私――」

一星「バイトはないだろう」

満月「うるさいわね。バイトがなくても
   私はやらなくちゃいけないことが山ほどあるの。
   あなたと違ってね」

一星「さいですか」

満月「ええ」
 
​    間 
 
琴音「ねえ、満月ちゃん。楽しい?」

満月「え・・・?」

琴音「アレやらなきゃコレやらなきゃって
   そんな毎日で楽しいの?」

満月「楽しいとか楽しくないとか
   そういう問題じゃない。
   私はそうしなくきゃいけないの」

琴音「本当にそうなのかな?
   本当は逃げてるだけなんじゃない?
   頑張らない言い訳にしてる
   だけなんじゃないの?」

​    満月 琴音を突き飛ばす 

満月「あなたに何が分かるの?
   私のこと知りもしないくせに」

琴音「知らないよ。知るわけない。
   だって、満月ちゃん
   いつも何も言ってくれないもん。
   それじゃ何も分からない」

満月「あなたに話して何になるの? 何が変わるの?」

琴音「力になれるかも知れない。
   理解できるかも知れない。
   やる前から決めつけて諦めてるだけでしょう!」

満月「母が癌になって入院して
   家事全部任されて
   今のままじゃ学費すら・・・。
   この状況のどこに私のしたいことが
   出来る時間がどこにあるって言うの!」

琴音「本当にやらせてもらえないのかな?
   なら、どうして満月ちゃんは学校に通えてるの?
   合唱サークルに来れてるの? 満月ちゃんはただ
   向き合うことから逃げてるんだよ」

​    満月 手を振り上げる 

​    琴音 満月を真っ直ぐに見つめて 

​    満月 琴音に向かって振り下ろす 

満月「っ?!」

​    一星 満月の手を後ろから掴む 

琴音「満月ちゃん。
   満月ちゃんはどうして合唱サークルに入ったの?
   どうして愚痴を零しながら居続けたの?」

満月「・・・・・・・」

琴音「思い出して、本当はどうしたかったのか」

満月「私は・・・」

琴音「笑いたかったんだよね。
   家のこと忘れて、好きなことで友だちと
   心から笑いたかった」

満月「ちが――」

琴音「誰よりも!
   誰よりも以前のようなサークルに戻ることを
   願ってた。ただ楽しくて
   笑顔が溢れていたサークルに!
   もう一度笑いたかったんだよ!
   だから諦められなかった。
   でもね、ダメなんだよ。
   願ってるだけじゃダメ
   思ってるだけじゃダメ。
   自分から進まなきゃ」

​    藍・彩歌 リアクション 

琴音「ねえ、満月ちゃん。
   満月ちゃんはどうしたいの?」

満月「私・・・私は!!!」

 ​【照明 CO】 
 
 
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