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ビターな愛を召し上がれ
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○学校 自販機置き場周辺
【SE 自販機から飲み物が落ちる音】
樹 「やっぱ、りんごジュースは
紙パックに限るよなぁ」
樹 ストローを刺し
半分以上一気飲み。
樹 「んあ、そう言えば
今日瑞穂に
呼ばれてたんだっけ。
教室戻らなきゃ」
樹 りんごジュースを
飲み干し、
ゴミ箱へ。
樹 自販機置き場から
立ち去る。
紀芽「そろ~り。
よし、誰もいないね、にしし」
紀芽 どこからとも無く
顔を出す。
紀芽 ゴミ箱を漁り始める。
紀芽「ゴミ箱さんちょっとごめんなさいね
ちょっと失礼しますよ~よっと
ん~どこだ?
これじゃない。これも違う。
ああ、もうばっちぃな
こんな汚い物
ここに置くんじゃないよ
まったくもう」
○学校 教室
【SE ドアの開く音】
樹 「瑞穂来たけど
って、俺の席で何やってんだ?」
瑞穂「樹!?
い、いや別に何も?
大丈夫、ヤラシイこと
何もしてないから」
樹 「いやいや
机でするヤラシイことって
なんだよ、むしろ」
瑞穂「そ、そんなの
乙女の口から言わせないでよ
恥ずかしいじゃん!
この変態、セクハラ!
むっつりスケベ!」
樹 「呼び出されたから
放課後まで残ってたのに
罵られたんですけどヤダー。
何この人怖い」
樹 オネエっぽく
瑞穂「キモい」
樹 「おっと、俺の心は豆腐だぞ?」
瑞穂「やわいね」
樹 「それも自慢じゃないが、絹だ」
瑞穂「うん、やわいね!」
樹 「んで、わざわざ漫才するために
呼んだわけじゃないだろ?」
瑞穂「あ、いや、えっと」
樹 「え、いや、マジかよ」
瑞穂「っ!! う、うん」
樹 「漫才のために呼び出したのkーー」
瑞穂「んなわけあるか、バカー!」
樹 「ガハッ」
瑞穂 全力の右ストレート。
樹 「暴力は・・・
いけない・・・・・・ガクッ」
瑞穂「花も恥じらう
乙女の仕草を目の前にして
よく何も無いと思えたな
このスットコドッコイ!」
樹 「男の俺に女心なんて分かるか!」
瑞穂「分かれよ、この唐変木」
樹 「瑞穂さん
今日ボキャブラリー凄くない?
物理的にも精神的にも
痛いんだけど」
瑞穂「それは樹がニブチンだからだ」
樹 「いや、敏感だぞ。
どれくらい敏感かというと
歩く亀やらキノコやらに
接触しただけで死ぬ」
瑞穂「帰れ、配管工風情が」
樹 「配管工おじさんは偉大なんだぞ!
学ぶことなく幾度と
拐われるお姫様を
飽きることなく助け続けてるんだ!
赤い配管工は偉大なんだ!」
瑞穂「配管工の仕事して」
樹 「それはそう。
姫と配管工じゃ結ばれないのにな」
瑞穂「なんか私たちみたいだね!」
樹 「いや、さすがに
瑞穂が姫は無理ーー」
瑞穂 極限全力の右ストレート。
【SE 骨が折れる音】
【SE 『KO』コール】
瑞穂「いくらガサツな私でも
お、乙女したい時くらい
あ、あるんだからな! ふん!」
樹 「ツンデレになってねえし、
火力高いんよ。
てか『乙女したい時』
ってどういう日本語だよ。
そんなことより救急車を。
骨折れたよ、これ、救急車を頼む」
樹 今にも死にそうな声。
瑞穂「私ね、思ったんだ」
樹 「俺の話聞いて」
瑞穂「このままじゃダメだって」
樹 「トドメ指す気!?」
瑞穂「小さい頃から
たくさん樹のこと見てきたの。
だからね、何が樹にとって
効果的なのか
ちゃんと分かってるつもり」
樹 「弱点バレバレだ」
瑞穂「だから受け取って欲しいの」
樹 「いやだ、まだ死にたくない
俺まだ死にたくないよー!」
瑞穂「はい、これ」
樹 「なに、これ」
瑞穂「チョコ」
樹 「ちょこ?」
瑞穂「そう、チョコ」
樹 「Oh this is chocolate?」
瑞穂「Yes」
樹 「This is Valentine?」
瑞穂「Yeah」
樹 「Oh this is Valentine chocolate!!」
瑞穂「YEAH!!」
樹 「Ah・・・did you make this?」
瑞穂「I did it!!」
樹 「you?」
瑞穂「YES!!」
樹 「やだ、まだ死にたくない
俺まだ死にたくないよー!」
瑞穂「ちょっと、どういう意味!?」
樹 「俺忘れてねえから、忘れねえから
瑞穂が作ったチャーハン!
台所洗剤の味がしたこと!
そのあと3日間
お腹壊して寝込んだこと!
そのせいで
運動会出れなかったこと!
俺絶対忘れねえからな!!」
瑞穂「あれはそう若気の至りだから!
今回は大丈夫だから!
変なもの
そんなに入ってないから!」
男 「そんなにって何だよ
そんなにって」
【SE ドアの開く音】
めぐ「その告白ちょっと
待ったぁぁああ!」
間
【SE ドアの閉まる音】
【SE ドアの開く音】
めぐ「その告白ちょっと
待ったぁぁああ!」
2人「やり直すな!?」
めぐ「ノーリアクションだったから
聞こえてないのかと思いまして」
樹 「いや、分からなすぎて
コメントできなかっただけだよ」
めぐ「これはこれは
私としてことが早計でした」
めぐ チョコに気づく。
めぐ「あぁ、
間に合いませんでしたか
そうですか。
それじゃあ私はこのへんで
お暇しますね」
【SE ドアの開閉音】
【SE ドアの開く音】
めぐ「と言うとでも思ったか、バカめ!
ぬわーはっはっはっ」
2人「ドアで遊ぶな!!」
めぐ「すみませんでした」
めぐ 泣きっ声ぽく
瑞穂「あんた誰? 樹に何の用?」
めぐ「ああ、そうでした。
樹先輩に渡すものが
あったんでした『彼女』として」
瑞穂「か、彼女!?」
樹 「知らない知らない」
瑞穂「知らない間に
彼女が出来てましたってか、はん」
樹 「こんな子知らない」
めぐ「え、樹先輩・・・
私に胸を押し付けさせ
太ももを力強く握り締めたアレは
遊びだったって言うんですか」
瑞穂「樹っ!」
樹 「知らない記憶ですね。ていうか、
押し付けられるほどの
モノなiーー」
樹 2人から殴られる
2人「最低」
樹 「あ、思い出した」
樹 殴られたまま話す
樹 「4月の終わり、
怪我してた女の子を
保健室まで運んだことがあったわ」
めぐ「はい、それです!
私、1年B組の星川めぐみです!
助けて頂いたあの時から私その」
瑞穂 めぐの手提げを奪う。
瑞穂「はん、何これ市販のチョコじゃん」
めぐ「返してください」
樹 「俺もう帰してください」
瑞穂「こんなチョコじゃ
樹は喜ばないな!」
めぐ「壊滅的な
手作りチョコよりマシです」
瑞穂「ぐっ」
樹 「おっと、会心の一撃だ。
これはきつい」
めぐ「彼の周辺のことなら
リサーチ済です。
家族構成はもちろんのこと
友人関係、ご近所付き合い、
食の好みと
身長年齢体重スリーサイズに
至るまで完璧です
もちろん、あなたの事もですよ
川嶋瑞穂さん」
樹 「あらやだ怖い」
瑞穂「料理が出来るからってなに?
知ってるからってなに?
高々1年足らずのぽっと出が
樹への愛でこの私に勝てると
本気で思ってるわけ?」
めぐ「17年も一緒に居て
なんの進展もない人が
随分と強気ですね!」
樹 「まあまあ、2人とも落ち着いて」
2人「樹(先輩)は黙ってて」
樹 「あ、はい」
紀芽「もう埒が明かないわね
あなたたち」
樹 「紀芽先輩」
紀芽「どうも、柏崎紀芽ちゃんデース。
3年生だよ~!
2人も『紀芽ちゃん』
って気楽に呼んでね!」
樹 「ギャルっぽいの来たーー」
めぐ「出ましたね、厄介虫!」
紀芽「あれ、私って有名人?
困ったなぁ、ハハ
あ、でもサイン考えてないから
また今度でいいかな?」
樹 「求めてないんだよなぁ」
紀芽「あれれー、おかs」
樹 「言わせねえよ」
紀芽「やん、樹くん当たり強~い」
瑞穂「誰?」
紀芽「紀芽だよ」
瑞穂「あ、うん、苦手なタイプだ」
紀芽「ひどーい、ぴえんぴえーん」
めぐ「相変わらず情緒不安定ですね」
紀芽「あら、初対面のはずだけど?」
めぐ「さあ?
どこかでお会いしているかも
知れませんよー?」
樹 「すぐ険悪なムードになるね!!」
紀芽「まあ、それはおいといて。
頭から観させてもらったわよ」
瑞穂「頭からって一体どこから?」
紀芽「ドアの影から」
瑞穂「場所じゃなくて
タイミングを聞いたんだけど」
紀芽「ああ、あなたが『樹くん♡』の机を
ぺろぺろハスハスぺろぺろハスハス
ってしてるところからよ」
瑞穂「なっ」
樹 「え」
紀芽「冗談よ」
樹 「なんだ、冗談か」
紀芽「本当はもっとひどい」
樹 「え」
紀芽「冗談よ」
樹 「なんだ、冗談か」
紀芽「相変わらず
後輩ちゃんは可愛いな」
樹 「どこが!?」
瑞穂「離れろ下さい」
めぐ「川嶋先輩日本語変です」
瑞穂「そ、そんなことより何の用!
あんたもまさか」
紀芽「ご明察。
樹くんの初めてを貰いに来た」
めぐ「は、初めてって、そんな
フレンチです」
樹 「ここでフランス人の登場だ」
紀芽「多分、ハレンチよ」
樹 「こりゃ失敬」
瑞穂「見なよ、樹。後輩ちゃん顔真っ赤」
樹 「ありゃあ
メンタルクランチしちゃったか」
紀芽「文字通り、さよならバイバイね」
瑞穂「もっとタフに生きなくちゃな」
樹 「タイプはワイルドってことで」
瑞穂「hello,it my dream」
紀芽「夢ならば
どれほど良かったでしょう」
樹 「そろそろやめて差し上げろ?」
紀芽「夢に見ちゃうから?」
瑞穂「大丈夫。別れはいつか来る」
めぐ「育てて歩かないでください!!」
紀芽「私、樹くんがいればどんな悲しみも
苦しいも『それで良かったね』って
笑えるわ」
樹 「モロパクリじゃないですかやだー」
瑞穂「でも、何がハレンチだったんだ?」
樹 「あーそれは」
紀芽「セッーー」
樹 「ファイナルフュージョン!!」
紀芽「1番を0番にドッキング!!」
樹 「その手を辞めろぉぉぉ!!」
瑞穂「ああ、なるほど!
『初めて』ってそういう」
樹 「瑞穂もその手を辞めろぉぉお!!」
紀芽「6番と9番でドッキング!!」
瑞穂「完成!! シックスナーー」
樹 「言わせねえよ!!」
めぐ「不潔だァァァ!!!」
樹 「無実だァァァ!!!」
紀芽「うるさい」
2人「はい」
瑞穂「でも、残念だったな
紀芽・・・さん」
紀芽「呼び捨てでいいわ」
瑞穂「でも、残念だったな、紀芽!」
紀芽「何が!?」
樹 「律儀にテンション合わせるんだ」
瑞穂「樹のファーストチョコは
この私が小5の頃に貰ってる!」
めぐ「小学生の頃の話を持ち出すなんて
器が小さいですね」
瑞穂「あんたに言われたくないね」
めぐ「どこ見てるんですか
八つ裂きにしますよ!?
別にでかけりゃ良いってもんでも
ないでしょう!!」
紀芽「そこんとこどうなの?」
樹 「正直どうでもいい」
紀芽「揉めれば?」
2人「最低」
樹 「言ってない言ってない」
紀芽「違うの?」
樹 「・・・・・・」
めぐ「大きい方が好きなんですか」
樹 「しゃらくせぇー!!!
大きさなんてどうでもいいんじゃ
そう、男たるもの求めるものは
『味』だぁぁあ!!!!」
3人「うわぁ」
樹 「もういっそ殺して」
紀芽「それはそれで。話戻すけど」
樹 「おっと?」
紀芽「私たち3人で争奪戦をしましょう」
瑞穂「争奪戦?」
紀芽「そう。樹くんを賭けた愛の勝負よ」
樹 「な、なんだって」
めぐ「先輩うるさいです」
樹 「はい」
紀芽「それぞれ樹くんに対する
愛情を語り、表現し、愛の強さで
雌雄を決するの」
めぐ「勝つとどうなるんです?」
紀芽「知らないのか?
チョコを食べさせることが出来る」
樹 「全部食べるけど」
樹 女性陣に睨まれる。
樹 「はい、すみません。
出しゃばりました」
めぐ「ふっふっ良いですよ
その勝負乗りましょう」
瑞穂「わ、私も乗る!!」
紀芽「っとその前に」
紀芽 谷間から板チョコを出す。
全員「うわぁ・・・」
紀芽「これが私のチョコよ」
瑞穂「どこから出してんの」
めぐ「札束とか挟む人いますよね」
樹 「凄い板チョコだ。とても溶けてる」
瑞穂「そりゃ谷間から出てきたらな」
めぐ「溶けますよね」
樹 「それにひとかじりされてますけど」
紀芽「気にしないで」
樹 「気になるね、
とても気になっちゃうね!」
瑞穂「樹! そんなの食べちゃダメ!」
紀芽「そんなのって何よ
私の温もり付きチョコよ!!」
めぐ「セクハラだ、セクハラ上司だ」
樹 「あ、確かにあれ、先輩の胸の」
紀芽「きゃぁあ、言うな!」
樹 突き飛ばされる。
2人「ならやるな!?」
樹 「もうしっちゃかめっちゃかだ」
紀芽「ほんと」
樹 「誰のせいですか」
紀芽「てへ」
瑞穂「可愛くないぞー」
めぐ「そーだそーだ」
紀芽「さて、気を取り直して行くわよ」
めぐ「メンタル強すぎませんか?」
瑞穂「誰かさんとは大違いね」
樹 「豆腐の話か?」
瑞穂「フランスの話よ」
めぐ 椅子を持ち出す。
樹 「おっと誰か来たようだ」
瑞穂「辞めなさい」
めぐ「っ!?」
瑞穂「死ぬよ」
めぐ「ちっ」
瑞穂「私が」
全員「お前がかい」
瑞穂「仲良いんだね」
樹 「拗ねるのかーい」
瑞穂「私もハモリたかった」
樹 「そこかぁ」
紀芽「はいはい。
それじゃあ、切り替えていくわよ」
樹 「部活みたーい」
めぐ「はい部長!」
紀芽「何かね、めぐりくん」
めぐ「誰が警部ですって?
私はめぐみです」
瑞穂「順番はどうすんの?」
紀芽「シンプルに
瑞穂ちゃん、めぐりちゃん
紀芽ちゃんの順番で
いいと思うよ?」
めぐ「巡らないでください」
紀芽「ごめんごめん、めぐむちゃん」
めぐ「わざとですよね?!」
紀芽「テヘッ」
めぐ「『テヘッ』じゃありません!」
紀芽「ヘケッ」
樹 「違うそうじゃない」
瑞穂「思わず突っ込んでんの」
紀芽「やん」
めぐ「セクハラです」
樹 「なんでだよ」
瑞穂「セクハラだー」
樹 「話進まないなぁ、帰っていい?」
瑞穂「いくわ、私のターンドロー!」
樹 「黙って帰ればよかった」
瑞穂「10年以上寄り添った
私の愛を舐めるなよ、雑種!!
コイツが私の愛の形だ!!」
瑞穂 スマホケースから
写真を取り出す。
3人「こ、これは!?」
樹 「なに」
紀芽「ブレブレじゃないの」
めぐ「何を撮ろうとしかのかさえ
サッパリです」
瑞穂「ふふ、これはな
『ゴムプールで
水浴びをしている
樹の写真』だ!」
3人「な、なんだ(です)って」
樹 「いやマジでなんだって!?」
瑞穂「これ私の初めて」
樹 「なんでスマホにまで入ってんだよ」
紀芽「幼なじみの特権である
幼い頃からの成長記録が今ここに
くっなんという破壊力なの
震えて上手く
撮れていないことすらも
愛がなせる技だと言うの!?」
樹 「凄い、俺には何も見えないけど
各々がダメージを受けている
怖い」
めぐ「ぐっなんていう奥ゆかしさです。
でも、私も負けてられません!!
私のターン! ドロー!!
私は手札から
樹先輩の家計簿を発動!!」
瑞穂「なんだって!?」
紀芽「どういうものなの!?」
樹 「どういうことなの!?」
めぐ「この手帳は、学校内・帰り道等、
樹先輩が買い物したものと日時、
値段を記したものなのです!」
瑞穂「私すら出来ずにいた
ストーキング行為を
この子はこの幼さにして
やってのけたというの」
紀芽「恐ろしい子」
樹 「ほんとにな!」
めぐ「降参ですか?
まあ、無理もないですよね」
紀芽「いいえ、まだよ」
めぐ「どんなに足掻こうと
この私の手帳に勝てるものなど
ありはしませんけどね」
紀芽「ふふ、それはどうかしらね」
瑞穂「何する気」
紀芽「デッキが0になるまで
何が起こるかわからないから
ゲームは面白いのよ
私のターン!」
樹 「いいこと言ってる感出してるけど
パクリだから」
紀芽「ドロー!!」
瑞穂「なんで毎回胸からなの」
紀芽「あなたたち、
これが何か分かるかしら」
瑞穂「なにってただのストローでしょ?」
めぐ「ま、まさか」
瑞穂「めぐみん、分かるの」
めぐ「誰が爆煙魔法の使い手ですか
吹き飛ばしますよ?」
紀芽「もういいかしら」
めぐ「はい
大体察しがついていますけどね」
瑞穂「分からないの私だけ」
樹 「お、おい、それってまさか」
紀芽「ええ、そのまさかよ」
めぐ「そんな、バカな。
有り得ません、そんな」
樹 「そんな、バカな。いや、バカか」
紀芽「このストローはね」
めぐ「そんな、そんなことって」
紀芽「樹くんの使用済みストローよ!」
瑞穂&めぐみ
「ぐわぁぁぁぁぁあああ」
【SE ライフが0になる音】
瑞穂「使用済みシリーズだと」
めぐ「この私ですら
躊躇った使用済みシリーズを」
瑞穂「この女は」
めぐ「この人は」
瑞穂&めぐみ
「平然とやってのけたというの!」
紀芽「当然よ。このくらい愛の前では
なんの問題にもならないわ」
樹 「社会的問題になるんだわ」
めぐ「くっ私はまだ
倫理の壁の中だと言うことですか」
樹 「お前はもう外だよ」
瑞穂「こんなことなら
パンツの1つや2つ
盗んでおくんだった」
樹 「幼なじみ怖いぴえん」
紀芽「私の勝ちね、
さあ、樹くん私にチョコを」
樹 「い、嫌だ。来るな、来るなぁ」
瑞穂「樹、往生際が悪い」
めぐ「そうです
女の子に恥を
かかせるものじゃありませんよ」
樹 「離せ、瑞穂、めぐみちゃん。
なんでさっきまでバトってた
お前らが一致団結してんだよ」
めぐ「先輩知らないんですか」
瑞穂「昨日の敵は今日の友ってね」
樹 「まだワンデイすら経ってない」
紀芽「め・し・あ・が・れ」
樹 「ぎゃぁぁぁぁあ!!!!」
樹 「(M)父さん母さん
先立つ不孝をお許しください。
口の中に押し込まれた
ヌチョヌチョのチョコレート。
鼻に抜けるカカオの香りは、
少しだけアンモニアの臭いを
帯びていた。
舌の上で転がる酸っぱい感覚は
恋なのだろうか。
遠のく意識の中で
微かに感じた青春の味は
とても苦かったような気がした」
FIN
【SE 自販機から飲み物が落ちる音】
樹 「やっぱ、りんごジュースは
紙パックに限るよなぁ」
樹 ストローを刺し
半分以上一気飲み。
樹 「んあ、そう言えば
今日瑞穂に
呼ばれてたんだっけ。
教室戻らなきゃ」
樹 りんごジュースを
飲み干し、
ゴミ箱へ。
樹 自販機置き場から
立ち去る。
紀芽「そろ~り。
よし、誰もいないね、にしし」
紀芽 どこからとも無く
顔を出す。
紀芽 ゴミ箱を漁り始める。
紀芽「ゴミ箱さんちょっとごめんなさいね
ちょっと失礼しますよ~よっと
ん~どこだ?
これじゃない。これも違う。
ああ、もうばっちぃな
こんな汚い物
ここに置くんじゃないよ
まったくもう」
○学校 教室
【SE ドアの開く音】
樹 「瑞穂来たけど
って、俺の席で何やってんだ?」
瑞穂「樹!?
い、いや別に何も?
大丈夫、ヤラシイこと
何もしてないから」
樹 「いやいや
机でするヤラシイことって
なんだよ、むしろ」
瑞穂「そ、そんなの
乙女の口から言わせないでよ
恥ずかしいじゃん!
この変態、セクハラ!
むっつりスケベ!」
樹 「呼び出されたから
放課後まで残ってたのに
罵られたんですけどヤダー。
何この人怖い」
樹 オネエっぽく
瑞穂「キモい」
樹 「おっと、俺の心は豆腐だぞ?」
瑞穂「やわいね」
樹 「それも自慢じゃないが、絹だ」
瑞穂「うん、やわいね!」
樹 「んで、わざわざ漫才するために
呼んだわけじゃないだろ?」
瑞穂「あ、いや、えっと」
樹 「え、いや、マジかよ」
瑞穂「っ!! う、うん」
樹 「漫才のために呼び出したのkーー」
瑞穂「んなわけあるか、バカー!」
樹 「ガハッ」
瑞穂 全力の右ストレート。
樹 「暴力は・・・
いけない・・・・・・ガクッ」
瑞穂「花も恥じらう
乙女の仕草を目の前にして
よく何も無いと思えたな
このスットコドッコイ!」
樹 「男の俺に女心なんて分かるか!」
瑞穂「分かれよ、この唐変木」
樹 「瑞穂さん
今日ボキャブラリー凄くない?
物理的にも精神的にも
痛いんだけど」
瑞穂「それは樹がニブチンだからだ」
樹 「いや、敏感だぞ。
どれくらい敏感かというと
歩く亀やらキノコやらに
接触しただけで死ぬ」
瑞穂「帰れ、配管工風情が」
樹 「配管工おじさんは偉大なんだぞ!
学ぶことなく幾度と
拐われるお姫様を
飽きることなく助け続けてるんだ!
赤い配管工は偉大なんだ!」
瑞穂「配管工の仕事して」
樹 「それはそう。
姫と配管工じゃ結ばれないのにな」
瑞穂「なんか私たちみたいだね!」
樹 「いや、さすがに
瑞穂が姫は無理ーー」
瑞穂 極限全力の右ストレート。
【SE 骨が折れる音】
【SE 『KO』コール】
瑞穂「いくらガサツな私でも
お、乙女したい時くらい
あ、あるんだからな! ふん!」
樹 「ツンデレになってねえし、
火力高いんよ。
てか『乙女したい時』
ってどういう日本語だよ。
そんなことより救急車を。
骨折れたよ、これ、救急車を頼む」
樹 今にも死にそうな声。
瑞穂「私ね、思ったんだ」
樹 「俺の話聞いて」
瑞穂「このままじゃダメだって」
樹 「トドメ指す気!?」
瑞穂「小さい頃から
たくさん樹のこと見てきたの。
だからね、何が樹にとって
効果的なのか
ちゃんと分かってるつもり」
樹 「弱点バレバレだ」
瑞穂「だから受け取って欲しいの」
樹 「いやだ、まだ死にたくない
俺まだ死にたくないよー!」
瑞穂「はい、これ」
樹 「なに、これ」
瑞穂「チョコ」
樹 「ちょこ?」
瑞穂「そう、チョコ」
樹 「Oh this is chocolate?」
瑞穂「Yes」
樹 「This is Valentine?」
瑞穂「Yeah」
樹 「Oh this is Valentine chocolate!!」
瑞穂「YEAH!!」
樹 「Ah・・・did you make this?」
瑞穂「I did it!!」
樹 「you?」
瑞穂「YES!!」
樹 「やだ、まだ死にたくない
俺まだ死にたくないよー!」
瑞穂「ちょっと、どういう意味!?」
樹 「俺忘れてねえから、忘れねえから
瑞穂が作ったチャーハン!
台所洗剤の味がしたこと!
そのあと3日間
お腹壊して寝込んだこと!
そのせいで
運動会出れなかったこと!
俺絶対忘れねえからな!!」
瑞穂「あれはそう若気の至りだから!
今回は大丈夫だから!
変なもの
そんなに入ってないから!」
男 「そんなにって何だよ
そんなにって」
【SE ドアの開く音】
めぐ「その告白ちょっと
待ったぁぁああ!」
間
【SE ドアの閉まる音】
【SE ドアの開く音】
めぐ「その告白ちょっと
待ったぁぁああ!」
2人「やり直すな!?」
めぐ「ノーリアクションだったから
聞こえてないのかと思いまして」
樹 「いや、分からなすぎて
コメントできなかっただけだよ」
めぐ「これはこれは
私としてことが早計でした」
めぐ チョコに気づく。
めぐ「あぁ、
間に合いませんでしたか
そうですか。
それじゃあ私はこのへんで
お暇しますね」
【SE ドアの開閉音】
【SE ドアの開く音】
めぐ「と言うとでも思ったか、バカめ!
ぬわーはっはっはっ」
2人「ドアで遊ぶな!!」
めぐ「すみませんでした」
めぐ 泣きっ声ぽく
瑞穂「あんた誰? 樹に何の用?」
めぐ「ああ、そうでした。
樹先輩に渡すものが
あったんでした『彼女』として」
瑞穂「か、彼女!?」
樹 「知らない知らない」
瑞穂「知らない間に
彼女が出来てましたってか、はん」
樹 「こんな子知らない」
めぐ「え、樹先輩・・・
私に胸を押し付けさせ
太ももを力強く握り締めたアレは
遊びだったって言うんですか」
瑞穂「樹っ!」
樹 「知らない記憶ですね。ていうか、
押し付けられるほどの
モノなiーー」
樹 2人から殴られる
2人「最低」
樹 「あ、思い出した」
樹 殴られたまま話す
樹 「4月の終わり、
怪我してた女の子を
保健室まで運んだことがあったわ」
めぐ「はい、それです!
私、1年B組の星川めぐみです!
助けて頂いたあの時から私その」
瑞穂 めぐの手提げを奪う。
瑞穂「はん、何これ市販のチョコじゃん」
めぐ「返してください」
樹 「俺もう帰してください」
瑞穂「こんなチョコじゃ
樹は喜ばないな!」
めぐ「壊滅的な
手作りチョコよりマシです」
瑞穂「ぐっ」
樹 「おっと、会心の一撃だ。
これはきつい」
めぐ「彼の周辺のことなら
リサーチ済です。
家族構成はもちろんのこと
友人関係、ご近所付き合い、
食の好みと
身長年齢体重スリーサイズに
至るまで完璧です
もちろん、あなたの事もですよ
川嶋瑞穂さん」
樹 「あらやだ怖い」
瑞穂「料理が出来るからってなに?
知ってるからってなに?
高々1年足らずのぽっと出が
樹への愛でこの私に勝てると
本気で思ってるわけ?」
めぐ「17年も一緒に居て
なんの進展もない人が
随分と強気ですね!」
樹 「まあまあ、2人とも落ち着いて」
2人「樹(先輩)は黙ってて」
樹 「あ、はい」
紀芽「もう埒が明かないわね
あなたたち」
樹 「紀芽先輩」
紀芽「どうも、柏崎紀芽ちゃんデース。
3年生だよ~!
2人も『紀芽ちゃん』
って気楽に呼んでね!」
樹 「ギャルっぽいの来たーー」
めぐ「出ましたね、厄介虫!」
紀芽「あれ、私って有名人?
困ったなぁ、ハハ
あ、でもサイン考えてないから
また今度でいいかな?」
樹 「求めてないんだよなぁ」
紀芽「あれれー、おかs」
樹 「言わせねえよ」
紀芽「やん、樹くん当たり強~い」
瑞穂「誰?」
紀芽「紀芽だよ」
瑞穂「あ、うん、苦手なタイプだ」
紀芽「ひどーい、ぴえんぴえーん」
めぐ「相変わらず情緒不安定ですね」
紀芽「あら、初対面のはずだけど?」
めぐ「さあ?
どこかでお会いしているかも
知れませんよー?」
樹 「すぐ険悪なムードになるね!!」
紀芽「まあ、それはおいといて。
頭から観させてもらったわよ」
瑞穂「頭からって一体どこから?」
紀芽「ドアの影から」
瑞穂「場所じゃなくて
タイミングを聞いたんだけど」
紀芽「ああ、あなたが『樹くん♡』の机を
ぺろぺろハスハスぺろぺろハスハス
ってしてるところからよ」
瑞穂「なっ」
樹 「え」
紀芽「冗談よ」
樹 「なんだ、冗談か」
紀芽「本当はもっとひどい」
樹 「え」
紀芽「冗談よ」
樹 「なんだ、冗談か」
紀芽「相変わらず
後輩ちゃんは可愛いな」
樹 「どこが!?」
瑞穂「離れろ下さい」
めぐ「川嶋先輩日本語変です」
瑞穂「そ、そんなことより何の用!
あんたもまさか」
紀芽「ご明察。
樹くんの初めてを貰いに来た」
めぐ「は、初めてって、そんな
フレンチです」
樹 「ここでフランス人の登場だ」
紀芽「多分、ハレンチよ」
樹 「こりゃ失敬」
瑞穂「見なよ、樹。後輩ちゃん顔真っ赤」
樹 「ありゃあ
メンタルクランチしちゃったか」
紀芽「文字通り、さよならバイバイね」
瑞穂「もっとタフに生きなくちゃな」
樹 「タイプはワイルドってことで」
瑞穂「hello,it my dream」
紀芽「夢ならば
どれほど良かったでしょう」
樹 「そろそろやめて差し上げろ?」
紀芽「夢に見ちゃうから?」
瑞穂「大丈夫。別れはいつか来る」
めぐ「育てて歩かないでください!!」
紀芽「私、樹くんがいればどんな悲しみも
苦しいも『それで良かったね』って
笑えるわ」
樹 「モロパクリじゃないですかやだー」
瑞穂「でも、何がハレンチだったんだ?」
樹 「あーそれは」
紀芽「セッーー」
樹 「ファイナルフュージョン!!」
紀芽「1番を0番にドッキング!!」
樹 「その手を辞めろぉぉぉ!!」
瑞穂「ああ、なるほど!
『初めて』ってそういう」
樹 「瑞穂もその手を辞めろぉぉお!!」
紀芽「6番と9番でドッキング!!」
瑞穂「完成!! シックスナーー」
樹 「言わせねえよ!!」
めぐ「不潔だァァァ!!!」
樹 「無実だァァァ!!!」
紀芽「うるさい」
2人「はい」
瑞穂「でも、残念だったな
紀芽・・・さん」
紀芽「呼び捨てでいいわ」
瑞穂「でも、残念だったな、紀芽!」
紀芽「何が!?」
樹 「律儀にテンション合わせるんだ」
瑞穂「樹のファーストチョコは
この私が小5の頃に貰ってる!」
めぐ「小学生の頃の話を持ち出すなんて
器が小さいですね」
瑞穂「あんたに言われたくないね」
めぐ「どこ見てるんですか
八つ裂きにしますよ!?
別にでかけりゃ良いってもんでも
ないでしょう!!」
紀芽「そこんとこどうなの?」
樹 「正直どうでもいい」
紀芽「揉めれば?」
2人「最低」
樹 「言ってない言ってない」
紀芽「違うの?」
樹 「・・・・・・」
めぐ「大きい方が好きなんですか」
樹 「しゃらくせぇー!!!
大きさなんてどうでもいいんじゃ
そう、男たるもの求めるものは
『味』だぁぁあ!!!!」
3人「うわぁ」
樹 「もういっそ殺して」
紀芽「それはそれで。話戻すけど」
樹 「おっと?」
紀芽「私たち3人で争奪戦をしましょう」
瑞穂「争奪戦?」
紀芽「そう。樹くんを賭けた愛の勝負よ」
樹 「な、なんだって」
めぐ「先輩うるさいです」
樹 「はい」
紀芽「それぞれ樹くんに対する
愛情を語り、表現し、愛の強さで
雌雄を決するの」
めぐ「勝つとどうなるんです?」
紀芽「知らないのか?
チョコを食べさせることが出来る」
樹 「全部食べるけど」
樹 女性陣に睨まれる。
樹 「はい、すみません。
出しゃばりました」
めぐ「ふっふっ良いですよ
その勝負乗りましょう」
瑞穂「わ、私も乗る!!」
紀芽「っとその前に」
紀芽 谷間から板チョコを出す。
全員「うわぁ・・・」
紀芽「これが私のチョコよ」
瑞穂「どこから出してんの」
めぐ「札束とか挟む人いますよね」
樹 「凄い板チョコだ。とても溶けてる」
瑞穂「そりゃ谷間から出てきたらな」
めぐ「溶けますよね」
樹 「それにひとかじりされてますけど」
紀芽「気にしないで」
樹 「気になるね、
とても気になっちゃうね!」
瑞穂「樹! そんなの食べちゃダメ!」
紀芽「そんなのって何よ
私の温もり付きチョコよ!!」
めぐ「セクハラだ、セクハラ上司だ」
樹 「あ、確かにあれ、先輩の胸の」
紀芽「きゃぁあ、言うな!」
樹 突き飛ばされる。
2人「ならやるな!?」
樹 「もうしっちゃかめっちゃかだ」
紀芽「ほんと」
樹 「誰のせいですか」
紀芽「てへ」
瑞穂「可愛くないぞー」
めぐ「そーだそーだ」
紀芽「さて、気を取り直して行くわよ」
めぐ「メンタル強すぎませんか?」
瑞穂「誰かさんとは大違いね」
樹 「豆腐の話か?」
瑞穂「フランスの話よ」
めぐ 椅子を持ち出す。
樹 「おっと誰か来たようだ」
瑞穂「辞めなさい」
めぐ「っ!?」
瑞穂「死ぬよ」
めぐ「ちっ」
瑞穂「私が」
全員「お前がかい」
瑞穂「仲良いんだね」
樹 「拗ねるのかーい」
瑞穂「私もハモリたかった」
樹 「そこかぁ」
紀芽「はいはい。
それじゃあ、切り替えていくわよ」
樹 「部活みたーい」
めぐ「はい部長!」
紀芽「何かね、めぐりくん」
めぐ「誰が警部ですって?
私はめぐみです」
瑞穂「順番はどうすんの?」
紀芽「シンプルに
瑞穂ちゃん、めぐりちゃん
紀芽ちゃんの順番で
いいと思うよ?」
めぐ「巡らないでください」
紀芽「ごめんごめん、めぐむちゃん」
めぐ「わざとですよね?!」
紀芽「テヘッ」
めぐ「『テヘッ』じゃありません!」
紀芽「ヘケッ」
樹 「違うそうじゃない」
瑞穂「思わず突っ込んでんの」
紀芽「やん」
めぐ「セクハラです」
樹 「なんでだよ」
瑞穂「セクハラだー」
樹 「話進まないなぁ、帰っていい?」
瑞穂「いくわ、私のターンドロー!」
樹 「黙って帰ればよかった」
瑞穂「10年以上寄り添った
私の愛を舐めるなよ、雑種!!
コイツが私の愛の形だ!!」
瑞穂 スマホケースから
写真を取り出す。
3人「こ、これは!?」
樹 「なに」
紀芽「ブレブレじゃないの」
めぐ「何を撮ろうとしかのかさえ
サッパリです」
瑞穂「ふふ、これはな
『ゴムプールで
水浴びをしている
樹の写真』だ!」
3人「な、なんだ(です)って」
樹 「いやマジでなんだって!?」
瑞穂「これ私の初めて」
樹 「なんでスマホにまで入ってんだよ」
紀芽「幼なじみの特権である
幼い頃からの成長記録が今ここに
くっなんという破壊力なの
震えて上手く
撮れていないことすらも
愛がなせる技だと言うの!?」
樹 「凄い、俺には何も見えないけど
各々がダメージを受けている
怖い」
めぐ「ぐっなんていう奥ゆかしさです。
でも、私も負けてられません!!
私のターン! ドロー!!
私は手札から
樹先輩の家計簿を発動!!」
瑞穂「なんだって!?」
紀芽「どういうものなの!?」
樹 「どういうことなの!?」
めぐ「この手帳は、学校内・帰り道等、
樹先輩が買い物したものと日時、
値段を記したものなのです!」
瑞穂「私すら出来ずにいた
ストーキング行為を
この子はこの幼さにして
やってのけたというの」
紀芽「恐ろしい子」
樹 「ほんとにな!」
めぐ「降参ですか?
まあ、無理もないですよね」
紀芽「いいえ、まだよ」
めぐ「どんなに足掻こうと
この私の手帳に勝てるものなど
ありはしませんけどね」
紀芽「ふふ、それはどうかしらね」
瑞穂「何する気」
紀芽「デッキが0になるまで
何が起こるかわからないから
ゲームは面白いのよ
私のターン!」
樹 「いいこと言ってる感出してるけど
パクリだから」
紀芽「ドロー!!」
瑞穂「なんで毎回胸からなの」
紀芽「あなたたち、
これが何か分かるかしら」
瑞穂「なにってただのストローでしょ?」
めぐ「ま、まさか」
瑞穂「めぐみん、分かるの」
めぐ「誰が爆煙魔法の使い手ですか
吹き飛ばしますよ?」
紀芽「もういいかしら」
めぐ「はい
大体察しがついていますけどね」
瑞穂「分からないの私だけ」
樹 「お、おい、それってまさか」
紀芽「ええ、そのまさかよ」
めぐ「そんな、バカな。
有り得ません、そんな」
樹 「そんな、バカな。いや、バカか」
紀芽「このストローはね」
めぐ「そんな、そんなことって」
紀芽「樹くんの使用済みストローよ!」
瑞穂&めぐみ
「ぐわぁぁぁぁぁあああ」
【SE ライフが0になる音】
瑞穂「使用済みシリーズだと」
めぐ「この私ですら
躊躇った使用済みシリーズを」
瑞穂「この女は」
めぐ「この人は」
瑞穂&めぐみ
「平然とやってのけたというの!」
紀芽「当然よ。このくらい愛の前では
なんの問題にもならないわ」
樹 「社会的問題になるんだわ」
めぐ「くっ私はまだ
倫理の壁の中だと言うことですか」
樹 「お前はもう外だよ」
瑞穂「こんなことなら
パンツの1つや2つ
盗んでおくんだった」
樹 「幼なじみ怖いぴえん」
紀芽「私の勝ちね、
さあ、樹くん私にチョコを」
樹 「い、嫌だ。来るな、来るなぁ」
瑞穂「樹、往生際が悪い」
めぐ「そうです
女の子に恥を
かかせるものじゃありませんよ」
樹 「離せ、瑞穂、めぐみちゃん。
なんでさっきまでバトってた
お前らが一致団結してんだよ」
めぐ「先輩知らないんですか」
瑞穂「昨日の敵は今日の友ってね」
樹 「まだワンデイすら経ってない」
紀芽「め・し・あ・が・れ」
樹 「ぎゃぁぁぁぁあ!!!!」
樹 「(M)父さん母さん
先立つ不孝をお許しください。
口の中に押し込まれた
ヌチョヌチョのチョコレート。
鼻に抜けるカカオの香りは、
少しだけアンモニアの臭いを
帯びていた。
舌の上で転がる酸っぱい感覚は
恋なのだろうか。
遠のく意識の中で
微かに感じた青春の味は
とても苦かったような気がした」
FIN
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