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王宮について、各自別行動となる。
もっとも、アンとスティーブとは一緒だが。ついでにクリスも。
クリスはこんなのでも王国の第二王子だ。
一応敬わなければ。
もう既に嫌われているのだから関係ない気もするが……。
「おいおい、君も一緒か。まだ貴族を名乗っていたんだな。誰の子かもわからないような娘がよくもこのパーティーに来ようと思えたものだ。」
帝国の公爵令嬢であったお母様を馬鹿にするなんてこの人大丈夫か?
誰の子かわからない子はそこのアンとスティーブでしょ。
どちらも母親似だから何も言われていないだけで。
「申し訳ございません。本当はパーティー参加を辞退しようと思っていたのですが、年に一度の王宮パーティー参加は貴族の義務でもありますので……。」
「ふんっ。まあいい。惨めな格好で笑い者になるのがおちだな。」
言い捨てるだけ言い捨てて二人は腕を組んでいちゃつき始めた。
私に見せつけているつもりなんだろうか?
二人が無駄にいちゃついている間にもひっきりなしに人が挨拶に来る。
当然二人が真面目に挨拶なんてするはずもなく……。
はい、とかご苦労、とかを繰り返している。
しかし王子でも無視しにくい相手が来てしまったようだ。
「お久しぶりです、クリス王子。この度はお招き頂き光栄です。」
その相手は、流れるようなエメラルド色の髪を結ばずに肩まで流した目元にほくろのある美しい、まさに貴公子という言葉の似合う男性だった。
年は私たちよりも二、三歳上に見える。
アンなんか、婚約者がいるのに無視して見とれている。
「久しぶりだな。レオナルド王子は相変わらずのもてっぷりだな。」
レオナルド王子と言えば、帝国の王太子様の名前だ。
と言うことは彼がそうなのだ。
確かに先程まで大勢の女性が集まっているエリアがあったと思ったが、それはレオナルド王子のいる場所だったのか。
確かに色っぽい顔やしぐさをしているので女性は虜になってしまうのだろう。
「ところでそちらの三人の方はどなたなのかご紹介頂いても?」
そう言ってレオナルド王子はチラッと私を見た気がした。
この人は流行に敏感そうだから去年流行のこのドレスを変に思ったのかもしれない。
「ああ。隣にいるこの女性が私の最愛の婚約者、アン・アスター公爵令嬢だ。そしてその後ろにいるのがその姉のサーラと弟のスティーブだ。」
「そうなのですね!では、サーラ様、私とダンスをお願いできますか?」
「なっ、ちょっと待って下さい!姉は足を怪我していましてダンスは……。」
「アンは黙っていてください!」
王族相手に何を言っているのか。
私たちのような貴族が断っていい相手じゃない。
大方、自分より先に私がこの美しい王子と踊るのが気に食わないのだろう。
「どうしてお姉さまはそんなにきつい口調でおっしゃるの?私はただお姉さまにダンスはお辛いと思って……。」
「そうだぞ!なぜいつもアンを虐げるのだ。こんなにも優しく思いやりに溢れている女性を私は今まで見たことがない。だからお前は私に婚約破棄などされるのだ!」
「そうなのかい?」
気のせいか、レオナルド王子の口から冷たい声が出ていたような気がする。
「いや、何でもないよ。それなら尚更サーラ嬢をダンスに誘わないといけないな。仲のよい二人の邪魔をするなんて野暮だからね。」
レオナルド王子はふたりにウィンクをして、エスコート役のスティーブに断りをいれると私の手を引いてダンス会場に導いてくれた。
「足を怪我しているなんてあの子の嘘なんだろう?」
へえ、あの子の嘘を見破る男がいたんだ。
でも嘘を認めていいことなんてない。
「いえ、本当です。」
「そう?じゃあダンスはここら辺でやめにして端の方で休憩しようか。」
「え?」
この王子は何がしたいんだろう……。
もっとも、アンとスティーブとは一緒だが。ついでにクリスも。
クリスはこんなのでも王国の第二王子だ。
一応敬わなければ。
もう既に嫌われているのだから関係ない気もするが……。
「おいおい、君も一緒か。まだ貴族を名乗っていたんだな。誰の子かもわからないような娘がよくもこのパーティーに来ようと思えたものだ。」
帝国の公爵令嬢であったお母様を馬鹿にするなんてこの人大丈夫か?
誰の子かわからない子はそこのアンとスティーブでしょ。
どちらも母親似だから何も言われていないだけで。
「申し訳ございません。本当はパーティー参加を辞退しようと思っていたのですが、年に一度の王宮パーティー参加は貴族の義務でもありますので……。」
「ふんっ。まあいい。惨めな格好で笑い者になるのがおちだな。」
言い捨てるだけ言い捨てて二人は腕を組んでいちゃつき始めた。
私に見せつけているつもりなんだろうか?
二人が無駄にいちゃついている間にもひっきりなしに人が挨拶に来る。
当然二人が真面目に挨拶なんてするはずもなく……。
はい、とかご苦労、とかを繰り返している。
しかし王子でも無視しにくい相手が来てしまったようだ。
「お久しぶりです、クリス王子。この度はお招き頂き光栄です。」
その相手は、流れるようなエメラルド色の髪を結ばずに肩まで流した目元にほくろのある美しい、まさに貴公子という言葉の似合う男性だった。
年は私たちよりも二、三歳上に見える。
アンなんか、婚約者がいるのに無視して見とれている。
「久しぶりだな。レオナルド王子は相変わらずのもてっぷりだな。」
レオナルド王子と言えば、帝国の王太子様の名前だ。
と言うことは彼がそうなのだ。
確かに先程まで大勢の女性が集まっているエリアがあったと思ったが、それはレオナルド王子のいる場所だったのか。
確かに色っぽい顔やしぐさをしているので女性は虜になってしまうのだろう。
「ところでそちらの三人の方はどなたなのかご紹介頂いても?」
そう言ってレオナルド王子はチラッと私を見た気がした。
この人は流行に敏感そうだから去年流行のこのドレスを変に思ったのかもしれない。
「ああ。隣にいるこの女性が私の最愛の婚約者、アン・アスター公爵令嬢だ。そしてその後ろにいるのがその姉のサーラと弟のスティーブだ。」
「そうなのですね!では、サーラ様、私とダンスをお願いできますか?」
「なっ、ちょっと待って下さい!姉は足を怪我していましてダンスは……。」
「アンは黙っていてください!」
王族相手に何を言っているのか。
私たちのような貴族が断っていい相手じゃない。
大方、自分より先に私がこの美しい王子と踊るのが気に食わないのだろう。
「どうしてお姉さまはそんなにきつい口調でおっしゃるの?私はただお姉さまにダンスはお辛いと思って……。」
「そうだぞ!なぜいつもアンを虐げるのだ。こんなにも優しく思いやりに溢れている女性を私は今まで見たことがない。だからお前は私に婚約破棄などされるのだ!」
「そうなのかい?」
気のせいか、レオナルド王子の口から冷たい声が出ていたような気がする。
「いや、何でもないよ。それなら尚更サーラ嬢をダンスに誘わないといけないな。仲のよい二人の邪魔をするなんて野暮だからね。」
レオナルド王子はふたりにウィンクをして、エスコート役のスティーブに断りをいれると私の手を引いてダンス会場に導いてくれた。
「足を怪我しているなんてあの子の嘘なんだろう?」
へえ、あの子の嘘を見破る男がいたんだ。
でも嘘を認めていいことなんてない。
「いえ、本当です。」
「そう?じゃあダンスはここら辺でやめにして端の方で休憩しようか。」
「え?」
この王子は何がしたいんだろう……。
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