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舞踏会後、それぞれの決意

伝わらない!!

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そして、場面は再び『RUKKA』の特別VIPルームにいる2人へと戻る。



「あ、そうそう!これをグレイさんからあなたにって預かってたわよ?」


彼女からの話を真剣に聞いていたら、ついつい渡し忘れていた大事な預かり物をクローディアに手渡す。


「グレイさんから?ありがとう!これって、何のお茶の葉なの?」

「飲み過ぎに効くお茶ですって♪」

「・・・・・・お、お母さん!!」


お茶の葉が入った袋を胸に抱きしめながら、くクローディアは目を輝かせながら笑顔で涙を流す。


なるほど。

クローディアの中では、今のところグレイ=コンソラータはそういう存在なのか。


さては、気を許した相手には尽くすタイプなのね。

しかも完璧な気遣い&気配りで相手にとって最高に心地いい空間を作りあげ、ついついお世話をしちゃって『お母さん』ポジション以上に見てもらえない感じかしら。

優しく頼りになる・良い人どまりから、どう『男の人』としてクローディアから見てもらうか?よね。


「・・・・・・ッ!」



って、彼女の本命は別の人だし、その人のことを話してたのにうっかりだわ。


「そうよ、さっきの話の続きだけど、何でこれだけ色々なところに手も足も身体ごと突っ込んでおきながら今さら身を引こうとするのよ?」

「そ、それは」

「それは、どこの馬の骨かも分からない、まだ出会ってすらいないローズとかいう女の為にでしょ?さっきもそれ聞いたけど、全然納得できないわ!」


どうにかこうにか、あの手この手で渋るクローディアから聞き出した内容によれば。

クローディアには未来を見る力が少しだけあるらしく、それによって王都にもう少しすると現れるらしい『ローズ』という女性。

その女性があの騎士さんだけではなく、王子様に爽やか青年のレオくん、あともう1人魔導師のルークさん?という人が、それぞれ運命の相手でその女性となら騎士さんは幸せになれるのだと、それを本気でクローディアは信じているとのことだった。


何度話を聞いてみてもわけが分からない。

なんでそもそも、4人対1人なわけ?


「まだ会いもしていない女性よりも、今彼の側で彼の為に色々動いているあなたの方が、どうして彼を幸せにできるって思わないの?」


「それは・・・・私が、モブだから」

「モブ?」


彼女は時々、私が聞いたことのない単語を使う。

言葉の意味はさっぱり分からないけど、クローディアが自分に自信がないのと、騎士さんがまさか自分に対して想いを向けているなんて考えもしていないに違いないことはよくわかった。


「クロエ、私はそのローズという女がどんな人なのか全然知らないけれど、あなたにしかない大切な魅力がちゃんとあるのよ?」

「・・・・・イザベル」



彼女の手を両手でしっかりと握りしめ、その目を真剣に見ながら伝える。


私はあなたのその優しさと、大きな心に救われたのだから。



「今日騎士院に行ったら、みんながあなたに会えないのを寂しがってたわ」

「!?」

「レオくんなんて、この私には全くへ目もくれないで、あなたを一心に探してたのよ?」

「・・・・レオ。そっか。イザベル、ありがとう!」



少し涙ぐんだクローディアにようやく笑顔が戻る。


よかったわ。

彼女はやっぱり笑顔の方がいいもの♪
 


「ちなみに、そのローズって人はどんな女性なの?」

「えっとね~~♪」


ご機嫌になったクロエは、イキイキした様子でそのローズという女性のことを話してくれた。


「・・・・・なるほどね」


色々なことを話されたが、要約するとこんな感じだ。


明るく、純粋で大人しく優しい性格だが少々危なっかしい。 

一見頼りなく見えるが芯は強く、一度決めた事は最後までやり通すなど粘り強さを見せる事もあるーーーーーーと。


「それで、それがあなたと何が違うの?」

「へ?」


イザベルから見れば目の前の彼女こそ明るく純粋で優しく、時々目的に向かって突っ走る危なっかしいところがあって、それでも最後まで諦めないでその思いをつらぬき通す芯の強さもけっこうあると思うのだが。

いまいち、そのローズという女をそこまで彼女が彼らの『運命の人』として評価しているわけがよく分からない。

普通にどこにでもいる女の子という気もするが、何がそこまで男達を惹きつけるというのか?

見た目が絶世の美女なのかといえば、可愛い系だけどそこまでじゃないそうだし。

じゃあ身体が女性的に魅力的なのかといえば、それも普通だという。


「い、いやその、上手く言えないだけで本当に私とは全然違うんだってっ!!」

「まあ、今はそういうことにしておくわ」


今までが彼に対して全力一直線だったみたいだし、逆に今引くことで彼の方が燃え上がるかもしれないしね。

それに、他の男性をクローディアがちゃんと見るいい機会なのかもしれない。


「とりあえず、私はあなたが大好きよ」

「え!?あ、ありがとう!私もイザベルが大好きだよ!」


彼女は、自分に自信が持ててない。

たくさんの人を笑顔にしておきながら、それをした自分をきちんと認めて褒めてあがることができていない。


他人のことには、あんなにも熱くなれる人なのに。

これは男性陣が気合を入れて頑張らないと、彼女は自分に向けられた愛をありのまま受け取れないかもしれないわね。







「お嬢様。もしよろしければ、そちらのお茶の葉にお湯を注いで参りましょうか?」

「えっ?!」



クローディアとイザベルの話がひと段落ついた頃を見計らって、『RUKKA』の執事さんが丁寧な物腰でありがたい提案をしてくれる。


「持ち込みの物なのにいいんですか?」

「もちろんでございます。大切な方から、お嬢様の体調を気遣ってプレゼントされたものなのでしょう?」

「は、はい」

「それならば、その気持ちのまますぐに飲まれることが何より一番ですよ」

「か、神対応!!ありがとうございます!」

「よかったわね、クロエ」

「うん!!」


銀色の髪となヒゲがなんともオシャレに光るナイスミドルの神執事様に、思わずヒデジィ!と私がこっそり声に出したら


「おや、なぜわたくしの名前が分かったのですか?」

「へ?」

「わたくしの名前は、ヒデジィート=セバスチャンと申します」

「!!??」



ヤバい!!

誰かとこの内側からの気持ちを一緒に共有して叫びたい!!

のに、誰にも伝えられないのが辛い!!



『ローズ』のこともそう。

イザベルにもなんとか伝えたいのに、私の説明が下手くそで伝えられない。




私がジークフリート様を影からではなく、一緒に幸せに?


そんな未来を、こんなただのモブに過ぎない私が本気で望んでもいいんだろうか。
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