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アヴァロニア城への帰還
モブでいいと思いました!
しおりを挟むマーサ王妃が長い眠りからついに目覚めたことは王都の民たちには元気に回復したと伝えられ、その日の夜はそのお祝いにとお城で盛大にパーティーが開かれることになった。
街でも王妃様の快気祝いだ!!と、祭りが開かれることになり、城の中も外もその準備にとみなが盛大に盛り上がっている。
マーサ王妃も自分が毒のために長いこと眠りについていたことやバーチのことを聞くと、少しだけ驚いた表情を見せつつ、分かりましたと最後はとても穏やかな笑みを浮かべていた。
詳しい話はバーチが王都についてから話すこととなり、マーサ王妃が戻ってきてからアビゲイル第二王妃には、変な動きがないようにとさらに見張りの兵士が王の命令で付けられている。
城のパーティーには今回の功労者ということでクローディアもぜひにと呼ばれ、着ていくドレスがないからとすぐさま断ったのだが、それならば自分のドレスをお貸ししするわと、ただ今王妃の部屋にて色々なドレスの試着会が行われていた。
「まあ、この色のドレスも似合うわね。どれにしようか悩むわ~~」
「・・・・ほ、本当に、私がこれを着るんですか?」
すでに何枚も試着した後なのだが、どれもこれも結婚式すらまだしたことのない私にはドレスそのものが初体験な上、見るからに豪華で質の良いものと分かるこのドレスを自分のようなモブが着ていることがなんともいたたまれない!
「もちろんよ。うーーーん、やっぱり黄色かしらね?」
今着ているのは、王妃様の言う通りの黄色のドレス。
肩を大きく出した、現代の結婚式でも花嫁が着るドレスで流行ってた胸元からのドレスだ。
胸元には黄色とオレンジのバラの花がいくつも散りばめられ、腰から大きく広がった部分には大きなバラの花が広がったかのようやデザインになっている。
腰から下には斜めのラインで黄色の濃さを変えたレースやリボンがボリュームを出しながらゴージャスに広がり、私のボリュームの乏しい胸もとの上には、細く繊細なデザインの小さい宝石を連ねたネックレスが首元からデコルテラインを光らせていた。
普段店の制服のような同じ上下を毎日着ている身としては、こんなに素晴らしいものを身につけて歩くのはーーーーー正直とっても心臓とお腹が息苦しい!
コルセットって、こんなに締め付けるものなんですかっ!?
「ほら、とても可愛いわ!」
「あ・・・・ありがとう、ございます」
しかもこれに高めのヒールを履いて歩くとか、どんな拷問だ!!
絶対にパーティー会場ですっ転ぶ姿しか思いつかないよ?
確かにこのドレスは可愛い!
私だってアラサーと言えども女子だし、結婚式で何色のドレスを着てみたいかと無駄に悩んでトキめいたことだってある!
しかし、まさかそのお相手ができる前にお色直しの際にイメージしていたドレスを今着る羽目になるとは。
いつどんな時に自分の願いが叶うか、本当に分からないですね。
「さ、あとは髪型とメイクね。どうせなら、雰囲気を変えて・・・・・」
「な、なんだか、すごく楽しそうですね?王妃様」
心の底からウキウキしてるのが、こっちにまで伝わってくる。
「ごめんなさいね、実はアルフレドが生まれる時に占ってもらった魔法使いに、生まれてくるのは女の子だと言われて、気持ちがすっかり女の子でいたのよ。もちろん、アルフレドのことは心から愛しているけれどやっぱり娘も欲しかったわって」
「そうなんですか。あれ?でも、義理とはいえ、確か娘になる予定の人がいたような?」
と思ったその時。
「王妃様!!ここにクローディアがいるとお聞きしましたがっ!!」
バタンッ!!!
勢いよく部屋に入ってきたのは、その未来の義理の娘に当たる婚約者のエリザベートことエリザベス。
「え、エリザベスッ!?」
「王妃様、僭越ながらわたくしにも協力させてくださいませんこと?」
「あらあら。もちろんよ、エリザベス♪」
「覚悟なさいませ、クロエ。あなたをわたくしの友として、恥ずかしくなくない淑女に短時間で仕上げてみせますわっ!!!」
「け、けっこうですぅぅぅーーーーー!!」
お妃様が目覚めてからほとんど初対面に近かったはずのこの2人は、すぐに意気投合してしまい、今も意見ががっちりとあってしまっている。
それから私は、ただのモブなのに、真なるお嬢様とお妃様から地獄の『淑女』特訓がスタートしてしまった。
どうしよう、これならもしかしたらゾンビ相手に魔法でやりあってた方がまだ良かったかもしれない。
その頃ーーーーー玉座の間では、王の前にジークフリートが跪き、旅の中で起こったことの報告をしていた。
「ご苦労であったな」
「いいえ、アルフレド王子の勇気ある行動と努力があってこそです」
「いや、お前達のおかげであのアルフレドが本当にずいぶんと変わった」
「!?」
この場にはいないアルフレド王子は今、城の兵士一人一人に話しかけ、臣下と交流を自分から持つことを楽しそうにしていた。
あんな息子の姿は、今まで見たことがない。
「それならば、クローディアのおかげかと」
「そうか。やはり、あの娘か」
あの長らく封印された神・ボルケーノ様を蘇らせるという、奇跡を起こした娘。
そしてまた今回も長い眠りについた我が妻を目覚めさせるという奇跡にも、彼女はその一端を大きく担っている。
「不思議な娘じゃの」
「はい、本当に」
「して、アビゲイルの様子はどうじゃ?」
「はっ!今のところ、室内から出る気配はないとのことでした」
王妃の毒殺未遂に大きく関わっているという、第二王妃のアビゲイル。
バーチが王都につき王座の前でその全てを話すことも王に伝えている。
このままでは終わらないだろうと思って警戒をしているのたが、どうやらボルケーノ様が力を貸してくれているようで何かをしようとすると、彼女の周りには炎が上がり身動きが取れないようだ。
度々、火事に怯え叫ぶ声が彼女の部屋から聞こえている。
彼女と繋がる大臣等、臣下達も今回のことで一気に一網打尽にする予定だ。
すでにその為の準備は始まっている。
「そうか・・・・引き続き、頼んだぞ」
「かしこまりました!」
今回の城のパーティーでも何かの動きがあるかもしれないと、騎士院の者達も総出で城と街の警備に分かれて守れるようすでに連絡をグレンに伝えている。
ただの祝いのパーティーでは終わらないことを予感し、ジークフリートは緊張に身を引き締めた。
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