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いざ、翠の森へ
ビビリですみません!
しおりを挟む女は度胸っ!!
そう覚悟を決めて、合言葉を言うため2人と一緒に森の入り口のリンゴの木の前にもどる。
言うための覚悟は決めました。
決めましたが、まだ聞かれる覚悟はできてません。
あがけるものなら、いくらでもあがいてやる!!
すいません。
だって、本当に言いたくなぁーーーーいっ!!!
「・・・・2人とも、今すぐ耳を両手でしっかりと塞いでください」
「はぁ?」
「クローディア?」
私のいつにない真剣な様子に、2人は少しどころか大分戸惑っていたがそんなことは大して問題じゃありません。
「迷いの森を抜ける為のこの合言葉は、私以外は絶対に聞いちゃダメです!」
「な、なんで」
「なんでもですっ!!!」
「お、おまえ・・・目が血走ってるぞ?」
「これは迷いの森を抜けられることに、嬉しくて興奮してるだけです」
「ひ、ひいぃ!!」
思わずアルフレド様の胸ぐらをつかんでしまいましたが、私は冷静ですよ?
なんで、そんな怯えた目で見てるんですか?
「・・・・わかった。俺とアルフレド様は言う通りに耳を塞いでいよう」
「ジ、ジークフリート!!絶対に何か隠してるぞ、こいつ!!」
「何も隠してませんよ?」
ニッコリ。
「ひっ!!」
おかしいな。
こんなに笑ってるのに、アルフレド様ってばどんどん顔が青くなっちゃって!
ジークフリート様なんて、何も聞かずに耳を塞いでくれているじゃありませんか!
「あ!そしたら、耳を塞ぐ前に2人ともあそこの木の下まで移動してください!」
「はぁ?なぜあんなところまで、わざわざ離れなきゃいけないんだっ!!」
「念のためです」
「・・・・くっ!!」
目に力を込めて、アルフレド王子をじっと見つめる。
お願いだから、察してくれ!!と願いを込めてだったのだけれど、王子は怯えた顔をするだけで意図は汲んでくれなかった。
くそっ!!
この場にイザベルがいてくれれば!!
聡い彼女なら、多くを語らなくてもすぐにこちらの気持ちを理解してフォローにまわってくれるのに。
「・・・・行きましょう、アルフレド様」
「じ、ジークフリート!お前は気にならないのか?!」
「静かに。気になりますが、だからこそ今は彼女の言う通りにしましょう」
「わ、わかった」
ジークフリート様に説得されたのか、アルフレド様もそれ以上つっかかってくることはなく、2人はお願いした通りにリンゴの木からはだいぶ離れたところまで移動していく。
「そしたら、私がいいって言うまで、耳をしっかり塞いでくださーーーーーい!!」
「あぁ・・・・わかった」
「フン!!やればいいのだろう!やれば!」
遠くからでも、2人が耳を両手で塞いでいる姿が見えた。
「2人とも聞こえますかーーーーー!!」
「「・・・・・・・」」
2人の反応は特になし。
よし!あとは、念のために。
「あいつは一体、何がしたいんだ?」
耳を塞ぐフリのまま、アルフレドもジークフリートに教えてもらったように一応子声で口をなるべく動かさないよう気をつけながら声を出している。
「よっぽどその合言葉とやらが、我々に聞かれたくないことなんでしょう」
ジークフリートも耳に手は当てているが、彼のもフリで軽く添えているだけだ。
「アルフレド様の、でべそーーーー!!!」
「なっ・・・・!?」
「静かに!たぶん、我々がちゃんと耳を塞いでるか確認の為にわざと言っている言葉かと」
「くっ!!お、俺はでべそじゃない!!」
両手両足に力を入れて踏ん張り、アルフレドは全身に沸いた怒りをなんとか外へと散らす。
そのかいがあったようで、クローディアも我々がちゃんと耳を塞いでいて声が聞こえてないと判断したようだ。
何やら息を大きく吐き、深呼吸も何度もしてからよしっ!!と気合をいれている姿が見える。
ここまであのクローディアがするとは、一体どんな合言葉だと言うのか?
「・・・・・おい、まだか?」
「まだです」
そして気合をいれて口元に手を当てて大声を出す準備を終えたクローディアだが、そこから声を発するまでに少々時間がかかっていた。
「まだなのかっ!!」
そして、アルフレド様が苛立ちに震え始めた時。
「愛する愛しのルーク様!!お願いですから、わたしを助けてくださいっ!!!」
「なんだとっ!!」
「!?」
彼女の叫びにすぐさま反応したのは、なんとジークフリートの方が早かった。
アルフレドはむしろ、そっちの方が驚いた。
そのすぐ後にクローディアのいる部分から大きな光が空に向かって大きく伸び、ジークフリートとアルフレドは彼女の元へと走っていく。
ジークフリートの速さは尋常ではなく、決して足が遅くはないアルフレドとの差があっという間に開いてしまった。
「・・・・・・くっ!!」
それは守る者と守られる者として、普段の身体の鍛えかたからして全く違うのだから当然の結果ではある。
だがそれでも、真っ先に彼女の元へと向かう姿への悔しさに唇を噛み締めながらアルフレドはその背中を必死に追いかけた。
ジークフリートが駆けつけた時にはすでに放つ光は細いものとなっており、クローディアの手の甲の印からまっすぐ森の奥へと進む方向を指し示している。
「クローディア、大丈夫かっ?!」
「・・・・聖なる光を失わない」
「クローディア?」
クローディアは自分の手の甲から伸びる光に釘付けになっており、とても真剣な目でその光の先を見つめていて隣に立つジークフリートの存在に気づいていない。
「ラ○ュタの位置を示している」
「ハァ!ハァ・・・・おい、俺たちが向かうのは緑の魔女だぞ!!お前は一体どこに行こうとしてるんだっ!!」
「!?」
そこへ全力疾走で息を切らしたアルフレドが怒りながら彼女の前にきたことで、ようやくこちらの存在に気づいた。
「あ、あれ!?ふ、2人とも、いつの間にここに戻ってきたんですかっ!!」
「そんなの今に決まってるだろう!!それより、さっきのはどういうことだ!?お前は俺たちをどこへ連れて行くつもりだっ!!」
「し、仕方がないじゃない!だってあんなの見たら、誰だって我慢ができないに決まってる!!」
先ほどまでの真剣な様子は一気に吹き飛び、顔を真っ赤にしたクローディアは慌てた様子で怒るアルフレドに何やら弁解を始めていた。
「我慢だとっ!?何をわけのわからないことを!!」
「いいですか、アルフレド様!雲の中には、夢とロマンと愛がつまってるんです!!」
特に大きく縦に膨らんだ雲には、少年少女達の無限の可能性が!
「お、俺たちが向かうのは空じゃなくて森の中だ!!いや、それよりもさっきの・・・・むぐっ!」
そして怒りに任せて、顔を真っ赤にしながら先ほどのことを彼女にばらそうとしたアルフレド様の口をすぐさま塞ぐ。
「それで、俺たちはどっちに向かえばいいんだ?」
「あ、はい!こっちです!」
クローディアの手の甲からまっすぐ伸びた光は、森のある方角をまっすぐさしていた。
「じ、ジークフリート!!」
「・・・・今は、緑の魔女様の元へ向かうのが先決です」
「くっ!!」
なぜかとてもご機嫌な様子でスキップで進むクローディアを先頭に、ジークフリートとアルフレドが進む。
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「い、痛いって!ちょっと待ってくださいよっ!」
クローディアの腕を掴んでぐいぐい引っ張りながら、アルフレドは光に向かって先の道を急ぐ。
「・・・・・・ッ」
そしてその後ろを歩くジークフリートの拳は、強くきつく握りしめられていた。
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