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モブ女子、いざ死の山へ!

キレました!

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グオォォォォーーーーーーーッ!!!!



ブラックドラゴンの咆哮が鳴り響く。



『いい度胸ではないか、小娘!気に入ったぞ!』

「そ、そんなことよりも今すぐジークフリート様を離して!!」



決意を決めても、まだ足はガクガクしている。

この根性なしめ!!

わかってはいるけど、頼むからもう少し頑張りやがれ!!


『よかろう』



ブラックドラゴンが一瞬笑ったような表情を浮かべた後、ゆっくりと団長を地面に下ろす。

よかった。

これで、ジークフリート様は助かる。



「ジークフリート様、ケガは大丈夫ですか?」

「あ、あぁ。俺は大丈夫だが、クローディア!!」


えぇ、分かっていますとも、次に来るのは。



何てバカなことを言ってるんだッ!!とか。

お前の命を犠牲にするわけにはいかない!!とかでしょ??


「よく決意してくれた!お前のおかげで俺の命が助かった!」

「・・・・・・・は?」



ほらねーーーーーーって、何だって??



「本当に、感謝している!」

「はい?」



今、なんて言った??



「王都に戻ったらすぐに援軍を連れて戻ってくるから、それまで少しだけ耐えていてくれ!!」


「・・・・・・・」



えっと、すみません。

この人誰でしょうか?



ジークフリート=ウルンリヒだって??

あんた、バカは休み休み言えって!!

ジークフリート様は、私が何百回やっても自分の命を真っ先にぶつけては私に泣きを見させた方ですよ??



えぇ、何度も願いましたとも。

性格悪くなってもいいから、選択肢やセリフを変えろ!と。

頼むからずる賢く生きてくれ!!と。

使えるものは何でも使え!!と願いましたとも、心から!!




「・・・・・・・」



でもね、これなんですか??

この人誰ですか??

あぁ、あれですか。

私がすっかり忘れていた『幻影』とかいう設定のやつですか。

そうですか。




「く、クローディア?どうかしたのか??」

「!!??」



そうでしたね。

すっかり忘れてましたよ、その設定!!

そういえば道中もおかしいと違和感は確かにありました!!

あんなに甘いイベントが続くなんておかしい!と、思いきれなかったのは私のやましい心のせいです!!

だってときめきどんぶりだったんだから、仕方がないでしょうッ!!

本当は違かろうが顔と体と声は同じだから、それだけでも私は萌えられるんです。

ゲーム脳を舐めんなよッ!!!

だけど、それでも!!



「・・・・・・んな」

「クローディア??」



ちきしょーーーーーっ!!

私が、どんな思いでさっきの選択肢を選んだと思ってんだ!!

どんな覚悟で、死ぬかもしれない選択肢を迷わず選んだと思ってる!?

それなのに。

それなのにーーーーーーーーーッ!!






プチん!





「ふっざけんじゃねぇぇーーーーーッ!!」



その時、私の中の何かがキレた。



「く、クローディアッ!?」


『こ、小娘!!貴様、何をッ!!』


「・・・・・・もう、いい」



もう、遠慮なんてするものか!!

どうせここにあるものはみんな偽物なんでしょ??

そしたら、壊れようがどうなろうが関係ないよね??


私の体の奥底から熱いものがグツグツと煮え滾る。



あぁ。

お待たせしてしまって、ごめんね。

ようやくあんたを使う時がやってきました。

遠慮なく暴れて構わないから、思いっきりやっちゃってよ。



「・・・・・なくなれ」


『な、何?!』


「てめぇら全員、消えてなくなれぇーーーーーーーーーッ!!!!」


「!!??」


「主が許す!!全てを燃やし尽くせ!!
神の炎、アグニ!!!」



ゴオォォォーーーーーーーーッッ!!!



私の叫んだ言葉と同時に赤黒い炎がブラックドラゴンに団長だけでなく、森そのものに燃え移り、激しく燃え上がる。



「く、クローディア!!なぜ俺まで!!お前をこんなに大事に思っているのに!!」

「・・・・・・はぁ??」

「!!??」


私の瞳孔が完全に開ききり先ほどまで激しい怒りの感情が熱く私の全身を支配していたが、今はそれよりも熱くなのに頭はとてもひんやりとしたものに包まれていた。

私の視線に対して、団長もどきは何かに怯えたように震えはじめる。

か弱い女の子を前にして、なんて対応だコラ。



「寝言は寝てほざけ偽物が。てめぇみてえなクソブタが、愛しいジークフリート様を語らないでくれるかな??」



ニッコリ。

一応笑ったつもりだが、笑顔になっただろうか??


「!!??」


その途端、団長もどきだったものが本当にブタに似た魔物に変化した。



くっそぉぉぉーーーーーーッ!!

こんなクソブタ魔物にときめいていたなんて!!!


「ゆ、許せない」

「ブ、ブヒッ!!??」


今まさに私から逃げようとしたその魔物を、周りにあった炎をまるで生きているかのように動かし、手足を炎の鎖で一気に縛り上げる。


「おいしいローストポークになってね」

「ブヒィィィィーーーーーッ!!」



赤黒い炎に一気に包まれたブタの魔物はローストポークどころか、丸焦げになりすぎた挙句跡形もなくなってしまった。

まだまだ力の加減が難しいようだ。



そして、次はーーーーーーー。



『こ、小娘!!貴様この炎は何なのだッ!?なぜ、物理攻撃も魔法攻撃さえも防ぐ我の鱗が傷つけられる!!』


さっきまでの、威厳たっぷりな余裕の態度はどこへやら。

まさかこんな小娘に傷をつけられるとは、到底思っても見なかったんだろう。

自身の持つ鉄壁な鱗に絶対の自信を持っていた王者が、そのほころびに本気でうろたえていた。


フン、ざまあみろ。



『答えよ!!!』



うるさいなぁ。



「ボルケーノと契約した際に私の魔力なら発動できるからと、1つだけ魔法を教えてもらってたの」


『ボルケーノ、だと??まさか炎の大神が!!』
 

さすがは長生きしてる伝説のドラゴン。
ボルケーノのことをご存知らしい。


「ボルケーノが伝えてくれた魔法、アグニは私の前に在るもの全てを焼き尽くす炎の魔法の中では最強最悪の炎呪文。コントロールが難しくて下手したら味方をも焼き尽くしかねない諸刃の刃」



最初ならなおさらコントロールが効かないだろうから、むやみやたらに使っては行けないとボルケーノから釘を刺されていた。


「あなたの鱗を焼いたのは、この炎が神炎だから。神炎はそこに命があり魔力が少しでもあるなら、その存在を根こそぎ燃やして奪い尽くす」


もう燃やしてはいけない存在はここにはないし、あとは全てを燃やし尽くすだけ。



『し、神炎だと?む、娘よ、ならば我と取引をしないか??』

「取引??」



私の開ききった瞳孔が、まっすぐにブラックドラゴンの赤い目を射抜く。

その目から静かに強く発せられる殺気におびえながらも、ブラックドラゴンは言葉を発した。


『わ、我を助けてくれたなら、そなたを守ると誓おう!!我の力は役に立つぞ!!!』


何それ??


「いらない、今すぐ消えて』


『!!??』




ゴオォォォーーーーーーッ!!!



さらに大きな炎が燃え上がり波のように大きな炎が現れると、ブラックドラゴンの大きな体に向かって赤黒き炎が覆いかぶさった。



『グワオゥゥゥーーーーーーッ!?!』



ブラックドラゴンが絶叫しながら、激しく燃え盛った後に炎の塵となって消え去る。

ゲームの中とはいえ、団長を何10回と殺したやつに情けなんか必要い。

だが、これで現実世界のブラックドラゴンも倒せるフラグが立った!

そこには感謝しておこう。



目の前の炎はさらに森をどんどん焼き尽くし、視界が朱に染まっていく。

まさに、紅い世界。



「・・・・・・キレイ」






あとはーーーーーーーーーー白い魔女だ。


あいつも絶対に、許さない。
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