上 下
2 / 16

しおりを挟む
勉強くらいしか取柄のない真面目で地味な性格の私は、特別に趣味といえるものも存在しなかった。
趣味がなさすぎて勉強が趣味といっても過言ではなかった。

そんな私に、数少ない友人のうちの一人が、受験勉強の息抜きにでも、とおすすめしてくれたのは、とあるゲームだった。

それはいわゆる乙女ゲームといわれるもので、アニメのような絵で描かれたキャラクターの男の子たちを主人公が恋に落としていくものだった。
最初にすすめられたときは、普段からアニメなども観ない私には、絶対に楽しめないだろう、と思っていた。
しかし、一度ゲームをやりはじめると、私が彼に恋に落ちるのは一瞬だった。

そんな彼が今、現実に、私の目の前にいる。
私の頭がおかしくなったのではない。私の目の前に彼が本当にいるのだ。

現実での彼はアニメ絵ではなかったけれど、確実にあの彼だ。本物だ。といえる何かが感じ取れた。

それは私が5歳のときに急に起こった。
彼に会った途端に、いきなり前世の記憶が蘇ってきたのだ
この時点で察しのいい方ならば、なんとなくおわかりだろうか。
早い話が私は転生したのだ。
どういう理屈なのかは不明だが、とにかく私は彼の住む乙女ゲームの世界の住人として生まれ変わったのだった。

あ、私が前世どうして死んだのかって?
特におもしろい話はないけれど簡単に説明すると、彼に恋をし続けたまま、なんとか今までの努力によって得た学力で高校を卒業すると、家から近い自分の学力にあった大学の経済学部に入学して、4年後普通に卒業。就職も無事に決まり、よーし、これから彼とふたりきりのラブラブ新婚生活が始まるぞー、と思っていたころに彼のゲームの続編の発売が発表された。
私は楽しみだった。愛する彼の新たな一面が、またみられるのだ、とウキウキしながら、スマホを片手にふらふら歩いていると、交差点に突然、進入してきたトラックに轢かれて死んだ。
まぁ、簡単にいうとこんな感じ?その後の記憶はないからたぶん即死だったんじゃないかな。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は婚約破棄したいのに王子から溺愛されています。

白雪みなと
恋愛
この世界は乙女ゲームであると気づいた悪役令嬢ポジションのクリスタル・フェアリィ。 筋書き通りにやらないとどうなるか分かったもんじゃない。それに、貴族社会で生きていける気もしない。 ということで、悪役令嬢として候補に嫌われ、国外追放されるよう頑張るのだったが……。 王子さま、なぜ私を溺愛してらっしゃるのですか?

平和的に婚約破棄したい悪役令嬢 vs 絶対に婚約破棄したくない攻略対象王子

深見アキ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・シェリルに転生した主人公は平和的に婚約破棄しようと目論むものの、何故かお相手の王子はすんなり婚約破棄してくれそうになくて……? タイトルそのままのお話。 (4/1おまけSS追加しました) ※小説家になろうにも掲載してます。 ※表紙素材お借りしてます。

ねえ、ヒロインちゃんにストーカーされてるんだけど!? アホ王子に婚約破棄されたので冒険者になって自由に生きようと思います!

アトハ
恋愛
「シャーロット・フローライト! 貴様との婚約を破棄し、アメリアを新たな婚約者とする!」 「はい! かしこまりました!」  まだだ――まだ笑うな。  内心で踊り狂いガッツポーズをしながら、私はかろうじて神妙な顔を作る。  王妃としてこのバカ王子の支えていくなんて、絶対に嫌っ!  冒険者になって、自由な暮らしを手に入れてみせる!  この日のために、私はコツコツと準備をしてきたのだ。  下町で流行っていた恋愛小説を参考にした。  平民上がりの少女が、王子の心を射止めて結ばれるラブストーリー。  嫉妬に狂って嫌がらせをしていた王子の婚約者が、ラストシーンで断罪。貴族の身分を剥奪の上、追放されるのだ。 「これだあっ!」  王子に付きまとう平民を見たとき、わたしは運命を感じた。  ヒロインちゃんっ! と内心で崇めて、私は彼女を王妃とするべく暗躍する。  バカ王子を操り婚約破棄をけしかけて――  今日に至ったのだ。  我ながら完璧な計画ね! 意気揚々と出ていこうとしたのに―― 「待ってくださいお姉さま!」  ヒロインちゃんは王子の宣言を「嫌です」とバッサリ切り捨てる。  そうして私のもとに駆け寄って来るのだった。 ※ 他の小説投稿サイトにも投稿しています

この異世界転生の結末は

冬野月子
恋愛
五歳の時に乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生したと気付いたアンジェリーヌ。 一体、自分に待ち受けているのはどんな結末なのだろう? ※「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】婚約破棄されかけた令嬢は、走る。

❄️冬は つとめて
恋愛
婚約破棄から婚約解消ヘのバトンタッチ。

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!

蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」 「「……は?」」 どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。 しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。 前世での最期の記憶から、男性が苦手。 初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。 リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。 当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。 おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……? 攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。 ファンタジー要素も多めです。 ※なろう様にも掲載中 ※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~

鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?

完 さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。

水鳥楓椛
恋愛
 わたくし、エリザベート・ラ・ツェリーナは今日愛しの婚約者である王太子レオンハルト・フォン・アイゼンハーツに婚約破棄をされる。  なんでそんなことが分かるかって?  それはわたくしに前世の記憶があるから。  婚約破棄されるって分かっているならば逃げればいいって思うでしょう?  でも、わたくしは愛しの婚約者さまの役に立ちたい。  だから、どんなに惨めなめに遭うとしても、わたくしは彼の前に立つ。  さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。

処理中です...