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番外編

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前世での乙女ゲームの知識を持って産まれた私には、小さい頃からずっと疑問に思っていることがある。
「ねぇ、お父様。どうして王妃様がお嫌いなの?」
「ん?いいや。違うぜルビーちゃん。俺はあの女が嫌いなんじゃない。大っ嫌いなんだよ。……そんなことよりも、ルビーちゃん。今日からしばらく暇をもぎとってきたから、好きなところにお出かけに連れてってやるぞ?どこがいい?城下の街?それとも少し遠出して、領内の街に行くかい?」
「……お父様。私は明日も学園があるのですから無理ですわ。久々のおやすみなら、私に構うより、お母様とおふたりでデートでも楽しんできたらいかがです?」
「んー。……ソフィとのデートも魅力的だけど、俺はルビーちゃんともお出かけしたいなぁ。家族3人で仲良くお出かけしようぜ?学園なんて1週間くらい休んだって平気だろ?」
「ダメなものはダメですわ。でも、そうですわね。お母様との馴れ初めをお話ししてくだされば、私もお出かけしたくなるかもしれませんわ」
「……ルビーちゃん。わかった。今回は諦めて夫婦水入らずで楽しんでくるよ。あ、でも後から気が変わってお出かけしたくなったらいうんだよ?」
そういって、父はいつものように何かを誤魔化すように、逃げていった。

フラン・ダックワーズ。王国の北の砦にて、多大なる功績をあげ、若干15歳にして、北方支部の副支部長に就任。その後、王都に帰還し、現在、近衛騎士団の副団長をしている。
その妻サファイアとは国王ディナールと同様に幼馴染であり、ふたりは幼い頃から愛しあっていたが、諸事情により、サファイアとディナールが婚約をすることになった。しかし、ふたりの結婚があと1年後に迫り、未だにフランとサファイアが互いに想いあっていることに気づいたディナールが幼馴染のために、当時の国王を説得し、2人はめでたく結ばれることになった。
……というのが、現在貴族の間でまことしやかに噂されている母と父の馴れ初めなんだけど、私はこの話は、きっと少し違うんだろうな、と思っている。
理由は私が転生者で、ゲームのシナリオを知っているから、というのもあるけど、1番は父親フランの王妃に対する態度である。
父は人目がなければ王妃に対して明らかに態度が悪くなるし、私にも小さい頃から「あの女は嫌な女だから、近づくな」といって、あまり近づくことを良しとしない。
まぁ、私としても愛しのディナール様の妻である彼女に対して、思うところもあるので、父に言われてますので、ごめんなさい。と適度に距離をとる言い訳に使えるのは便利だとは思いつつも、ここまで嫌悪感丸出しにして王妃を嫌う父親と王妃の過去に一体何があったのだろうか、と謎は深まるばかりである。
両親に聞いてもはぐらかされるし、そのことだけはディナール様もいくら聞いても教えてはくれなかった。
試しにディルハム様に聞いてみたところ、この件だけはディルハム様が幼い頃に聞いてみたときにも、誰も教えてはくれなかったみたい。
だけど、はっきりしていることもある。
父が母のことを心底愛していること。
そして、母にそっくりな顔を持つ私も当然、溺愛しているということ。
デートを終え、大量のお土産を抱えてこちらへ歩いてくる父の後ろをついて歩きながら、幸せそうに微笑む元悪役令嬢であった母の姿をみると、過去に何かあったにせよ、きっとこれが母にとってのハッピーエンドルートである気がするので、これでよかったのだと娘の私は思うのでした。


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みんなの感想(7件)

セン🐈
2019.08.27 セン🐈

え、両親何があったよ。笑

解除
珠翠
2019.04.02 珠翠

ルビーちゃんの両親と国王夫妻の過去が気になる!!!

解除
伊予二名
2018.12.28 伊予二名

実際に婚約破棄があったのに何でオマエら仲良いの?と言うお話。読み進めていくと語られるのでしょうか。

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