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中等部
華僑との出会い:前編
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中等部に進学し、新しい生活に慣れてきたある日。
学校が終わると、二条と一緒に下校していた。
普段お互い車移動で歩いて帰ることはないのだが、今日は天気も良く気候も穏やかで散歩日和。
初等部の頃もこうして歩いて帰ったこともあるが、中等部の制服姿で二条と並んで歩く姿は、なぜかむずがゆく感じた。
二条は中等部になると、声変わりが始まり、身長もぐんと伸びていた。
初等部の頃、私と変わらなかった身長は、今では少し見上げないと彼と目をあわせることができない。
やっぱり男の子の成長は早いなぁ。
もともと整った顔立ちに身長がプラスされ、声変わりにより低く甘いボイス。
体格も少年から青年へと変わり、勉強もスポーツも軽々とこなすまさにパーフェクト。
そんな彼を女子達が放っておくはずがない。
学園にいる生徒たちは皆お金持ちばかり。
一条家が二条家との婚約を断ったという事実は、きっと皆知っているだろう。
彼自身女性に騒がれることを気にしてはいないが、日に日に彼のファンが増殖している。
来年にはファンクラブとかできてそうだなぁ、それよりもこれだけ何でもそろっているなら、やっぱり乙女ゲームの攻略対象者説は濃厚だよね……。
チラチラと彼の姿を眺めていると、よく遊んぶ公園へ到着した。
「ねぇ二条、帰る前にバスケでもしていかない?」
二条の腕を引き引き留めると、私は公園を指さした。
彼は仕方がないなと幼さが残る笑顔を浮かべると、公園の中へと足を進める。
芝生が敷かれた広場へやってくると、子供たちの笑い声が耳にとどく。
駆け回る子供たちを横目に、私たちは広場に置いてあるボールを手に取ると、空いているコートへ向かって行った。
「今日こそは絶対抜いてやるんだからね!」
私はシャツを捲り上げると、ボールを地面に落とす。
「抜けるもんならな」
ニヤリと口角を上げる彼を睨むと、腰を低くしドリブルをし、彼の元へ走って行く。
いくつものフェイントをかけながら彼を錯乱しようとするのだが……あっさりボールを取られ、二条へと渡ってしまった。
初等部の頃はよりあっさりと奪われ唖然とする。
私の方がリーチが長かったから……今は彼の方が体格がいいもんね。
得意げな顔で立ちふさがる彼の姿に、私はもう一度ボールを受け取ると、またドリブルを始めたのだった。
どれぐらい時間がたったのだろうか……気がつけば日が傾き始めていた。
額に流れる汗を拭うと、私は悔しそうに顔を顰める。
むぅ……もう少しで抜けそうなのになぁ……。
「よし、今日はここまでだ。もう暗くなるから、帰るぞ」
二条はそう言いながら、ベンチにかけていたブレザーを持ち上げると、ボールを片づけに行く。
むーーー!悔しい……ッッ!
私は唇を結び拗ねた表情で、ベンチに置いていたカバンを持ち上げると、急ぎ足で彼の後を追っていった。
「勝ち逃げはなんてずるい~。またやろう、負けっぱなしは悔しいもの」
彼の背中に向かって叫ぶと、おうっと手を上げた。
数日後、お稽古ごとの合間みて、二条とバスケをするために、私たちは公園へ向かうようになった。
しかし何度やっても彼を抜かすことは出来ない。
夢中でボールを蹴り汗だくになると、息が上がってくる。
そんな私の様子とは裏腹に、二条は息一つ上がっていなかった。
汗を拭き公園のベンチへ腰かけると、眼鏡をかけた少年がフェンス越しにじっとこちらを見ていることに気が付いた。
あの眼鏡くん……確か昨日もいたなぁ。
私たちと同じ制服だけど、バスケに興味でもあるのかな?
ふと眼鏡くんとパチリッと目が合うと、彼は慌てた様子で走り去っていった。
何だったんだろう……?
「おい、続きをやるぞ!」
彼の声に慌てて振り返ると、私は慌ててコートへと戻って行った。
学校が終わると、二条と一緒に下校していた。
普段お互い車移動で歩いて帰ることはないのだが、今日は天気も良く気候も穏やかで散歩日和。
初等部の頃もこうして歩いて帰ったこともあるが、中等部の制服姿で二条と並んで歩く姿は、なぜかむずがゆく感じた。
二条は中等部になると、声変わりが始まり、身長もぐんと伸びていた。
初等部の頃、私と変わらなかった身長は、今では少し見上げないと彼と目をあわせることができない。
やっぱり男の子の成長は早いなぁ。
もともと整った顔立ちに身長がプラスされ、声変わりにより低く甘いボイス。
体格も少年から青年へと変わり、勉強もスポーツも軽々とこなすまさにパーフェクト。
そんな彼を女子達が放っておくはずがない。
学園にいる生徒たちは皆お金持ちばかり。
一条家が二条家との婚約を断ったという事実は、きっと皆知っているだろう。
彼自身女性に騒がれることを気にしてはいないが、日に日に彼のファンが増殖している。
来年にはファンクラブとかできてそうだなぁ、それよりもこれだけ何でもそろっているなら、やっぱり乙女ゲームの攻略対象者説は濃厚だよね……。
チラチラと彼の姿を眺めていると、よく遊んぶ公園へ到着した。
「ねぇ二条、帰る前にバスケでもしていかない?」
二条の腕を引き引き留めると、私は公園を指さした。
彼は仕方がないなと幼さが残る笑顔を浮かべると、公園の中へと足を進める。
芝生が敷かれた広場へやってくると、子供たちの笑い声が耳にとどく。
駆け回る子供たちを横目に、私たちは広場に置いてあるボールを手に取ると、空いているコートへ向かって行った。
「今日こそは絶対抜いてやるんだからね!」
私はシャツを捲り上げると、ボールを地面に落とす。
「抜けるもんならな」
ニヤリと口角を上げる彼を睨むと、腰を低くしドリブルをし、彼の元へ走って行く。
いくつものフェイントをかけながら彼を錯乱しようとするのだが……あっさりボールを取られ、二条へと渡ってしまった。
初等部の頃はよりあっさりと奪われ唖然とする。
私の方がリーチが長かったから……今は彼の方が体格がいいもんね。
得意げな顔で立ちふさがる彼の姿に、私はもう一度ボールを受け取ると、またドリブルを始めたのだった。
どれぐらい時間がたったのだろうか……気がつけば日が傾き始めていた。
額に流れる汗を拭うと、私は悔しそうに顔を顰める。
むぅ……もう少しで抜けそうなのになぁ……。
「よし、今日はここまでだ。もう暗くなるから、帰るぞ」
二条はそう言いながら、ベンチにかけていたブレザーを持ち上げると、ボールを片づけに行く。
むーーー!悔しい……ッッ!
私は唇を結び拗ねた表情で、ベンチに置いていたカバンを持ち上げると、急ぎ足で彼の後を追っていった。
「勝ち逃げはなんてずるい~。またやろう、負けっぱなしは悔しいもの」
彼の背中に向かって叫ぶと、おうっと手を上げた。
数日後、お稽古ごとの合間みて、二条とバスケをするために、私たちは公園へ向かうようになった。
しかし何度やっても彼を抜かすことは出来ない。
夢中でボールを蹴り汗だくになると、息が上がってくる。
そんな私の様子とは裏腹に、二条は息一つ上がっていなかった。
汗を拭き公園のベンチへ腰かけると、眼鏡をかけた少年がフェンス越しにじっとこちらを見ていることに気が付いた。
あの眼鏡くん……確か昨日もいたなぁ。
私たちと同じ制服だけど、バスケに興味でもあるのかな?
ふと眼鏡くんとパチリッと目が合うと、彼は慌てた様子で走り去っていった。
何だったんだろう……?
「おい、続きをやるぞ!」
彼の声に慌てて振り返ると、私は慌ててコートへと戻って行った。
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