上 下
12 / 22

※逃亡其の一:前編

しおりを挟む
彼が居なくなった隙を狙って、メイドや護衛騎士に話かけてみるも……彼らは人形のように、何も話さずただただ自分たちの仕事を全うするだけだった。

もういや……こんな場所……絶対逃げ出してやるわ。

そんな彼は出かける前には必ず、私の頬へと軽くキスをしていくのが日課だった。
いったい彼はどこへ行っているのだろうか……。
でも彼がキスをしに来るという事は、彼は部屋からいなくなるのだとわかった。

メイドは用がなければ部屋には入ってこず、護衛騎士はただただ入り口に立っているだけだ。
そうして彼は日が沈み外が暗くなる頃に、私の部屋へと戻ってくる。

そんな日々が続く中、私は彼を見送ると、いつものように昼食の片付けにメイドを呼びつけた。

「ごめんなさい、水をこぼしてしまったの……掃除してくださる?」

その言葉にメイドは、布を取り出し水浸しになった床を掃除する。
掃除をしているメイドを背に、次に私は護衛騎士を呼びつけた。

「私のベットに虫が……っっ」

震える声で護衛騎士にしがみ付くと、ベッドへと視線を向ける。
メイドの床の掃除はまだ半分も終わっていない。
護衛騎士はメイドの様子を見ると、私に背を向け、ベットへと歩いていく。

よしっ、今だ!!!

外へ通じる扉をサッ開き私は部屋の外へと逃げ出したが……先ほどまで私に背を向けていた護衛騎士がなぜか私の前へと立ちはだかる。
えっ……どうして……?
いつのまに……?

突然現れた騎士の姿に驚きのあまり目を丸くしたままに、その場に立ち尽くしていると、表情を変えず無言のままに私の腕を強く掴み、部屋へと投げ入れられる。
私は部屋の床へ尻餅をつき倒れこむと、騎士の冷たい瞳に強く唇を噛んだ。
何なの……、一体どうなっているのよ!!
小刻みに震える私の姿を騎士が一瞥すると、外へ続く扉がゆっくりと閉めてしめられていく。
外からガチャリと鍵の音が響くと、私は悔しさに強く拳を握りしめた。


その日の夜、彼が私の部屋へと戻ってくると、いつもの笑顔の底に何か黒いものが渦巻いていた。
あの日の彼の姿が頭を掠めると、自然と体が強張っていく。

「逃げ出そうとしたみたいだね……」

そう呟くと、彼はゆっくりと私が座っていたベットへと腰かけ、笑顔を絶やさず話を続ける。

「どうすればわかってくれるのかな……?そうだ、悪い子にはしっかり躾が必要だよね?」

ゾッとする微笑みに、肩が大きく跳ねた。
彼はゆっくりと私へと近づいてくる中、私は一歩また一歩とベッドの上を後ずさっていく。
ジリジリと距離を詰められると、背中が壁につき、もう逃げ場がない……。

「どんなお仕置きがいいかな?」

彼は私を押さえつけるように跨ると、耳元へ顔を寄せ囁いた。

「いやっ……」

彼の吐息を感じ……手足が震え始める。
必死に彼から逃げようと胸を強く押し返すが……やはりビクリとも動かない。
笑顔のままに私を見据えると、私の両手首を片手で持ち上げ頭の上に固定した。
そうして壁についていた体を引き寄せ、ベットへと強く抑え込まれる。

身動きが取れない私の姿にゆっくりと彼の空いた手が、私の服を脱がしていった。

「いやああ、やめて……」

足をバタつかせ必死に抵抗してみるが、彼は私の足の間へ膝を入れ込むと、抵抗できないように捕えていく。

「ほら、そんなに暴れないで。あぁ……君の肌はいつみても美しい……」

身につけるものを全て取り払われ、私は泣きそうになりながら彼の瞳を見上げてみる。
すると彼は軽く頬へキスを落とすと、敏感な胸の高鳴りへと指をそわせていった。

「あぁっ……、やぁん」

強い刺激に体がビクッと大きく跳ねると、彼が楽しそうにもう一度弾く。

「いやぁぁ、あぁ、やめてぇ……っっ」

「君はいけない子だ。これはお仕置きなんだから……そんな気持ちよさそうな声を出してはいけないよ?」

優しい声色で私の耳元で囁く中、彼は私の胸を執拗に弾いたかと思うと、唇が胸の突起を吸い上げる。

「あぁぁ、あんっ、やぁっ」

ビクビクと体が反応する中、彼の手が私の太ももへとおりていき、股の間へと手をそわせていった。

「いやぁあああ、そこは……っっ、あぁぁぁん」

愛蜜が溢れ出る場所へ指先が触れると、ピチャピチャと水音が響く。

「こんなにも濡らして、いけない子だ」

そう囁くと、彼の手の動きが速くなり、一気に奥へと突き上げた。

「あぁっ、あぁん、ひぃっ、あぁぁっ」

「ここが好きなんだよね?」

何度も何度も最奥を強く突かれ、私の愛蜜が彼の手のひらに滴りおちていく。

「あんっ、あぁ、あん、やぁぁぁ、ふぅあぁぁ」

与えられる刺激が全身に駆け巡ると、頭が真っ白になり、体の力が抜けていく。
はぁ、はぁ、はぁ……。
肩で息をする中、私はトロンとした目で彼の瞳を見上げてみる。
すると彼は優しい笑みを浮かべながらに、グッタリとする体を持ち上げると、優しく抱きしめた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く

miniko
恋愛
お茶会の参加中に魔獣に襲われたオフィーリアは前世を思い出し、自分が乙女ゲームの2番手悪役令嬢に転生してしまった事を悟った。 ゲームの結末によっては、断罪されて火あぶりの刑に処されてしまうかもしれない立場のキャラクターだ。 断罪を回避したい彼女は、攻略対象者である公爵令息との縁談を丁重に断ったのだが、何故か婚約する代わりに彼と友人になるはめに。 ゲームのキャラとは距離を取りたいのに、メインの悪役令嬢にも妙に懐かれてしまう。 更に、ヒロインや王子はなにかと因縁をつけてきて……。 平和的に悪役の座を降りたかっただけなのに、どうやらそれは無理みたいだ。 しかし、オフィーリアが人助けと自分の断罪回避の為に行っていた地道な根回しは、徐々に実を結び始める。 それがヒロインにとってのハッピーエンドを阻む結果になったとしても、仕方の無い事だよね? だって本来、悪役って主役を邪魔するものでしょう? ※主人公以外の視点が入る事があります。主人公視点は一人称、他者視点は三人称で書いています。 ※連載開始早々、タイトル変更しました。(なかなかピンと来ないので、また変わるかも……) ※感想欄は、ネタバレ有り/無しの分類を一切おこなっておりません。ご了承下さい。

【完結】君は私を許してはいけない ーーー 永遠の贖罪

冬馬亮
恋愛
少女は、ある日突然すべてを失った。 地位も、名誉も、家族も、友も、愛する婚約者も---。 ひとりの凶悪な令嬢によって人生の何もかもがひっくり返され、苦難と苦痛の地獄のような日々に突き落とされた少女が、ある村にたどり着き、心の平安を得るまでのお話。

【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?

との
恋愛
「取り替えっこしようね」 またいつもの妹の我儘がはじまりました。 自分勝手な妹にも家族の横暴にも、もう我慢の限界! 逃げ出した先で素敵な出会いを経験しました。 幸せ掴みます。 筋肉ムキムキのオネエ様から一言・・。 「可愛いは正義なの!」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済み R15は念の為・・

婚約者からブスだと言われて婚約破棄されたので、私は結婚相手は容姿で決めません!

高坂ナツキ
恋愛
「アイリス・エンダーハイム! 貴様との婚約は第一王子の権限で今夜破棄する!」  公爵家のパーティーに参加していたら、突然私の婚約者……ラグランジュ王国第一王子ゲオルグ・ラグランジュが意味不明なことを叫びだした。  ゲオルグの傍には見たこともない令嬢がしな垂れかかっているし、どうやら私の婚約者は隠れて浮気をしていたらしい。 「ゲオルグ様、一体どういうつもりか教えてくださいな。公爵家のパーティーで突然そのような戯言を言うなど……」 「うるさい! 貴様のようなブスは王妃に相応しくないのだ!」 「……ブ……?」 「俺様のような美形の隣には同じくらい輝きのある女性が相応しい。王妃がブスなど諸外国に馬鹿にされるではないか!」  は? 私がブスだから婚約を破棄するって? 正気? これは魔導具が好きな一人の少女が、婚約者からブスだという理由で婚約破棄されてからの物語。

【短編集】人間がロボットになるのも悪くないかも?

ジャン・幸田
大衆娯楽
 人間を改造すればサイボーグになる作品とは違い、人間が機械服を着たり機械の中に閉じ込められることで、人間扱いされなくなる物語の作品集です。

処刑された女子少年死刑囚はガイノイドとして冤罪をはらすように命じられた

ジャン・幸田
ミステリー
 身に覚えのない大量殺人によって女子少年死刑囚になった少女・・・  彼女は裁判確定後、強硬な世論の圧力に屈した法務官僚によって死刑が執行された。はずだった・・・  あの世に逝ったと思い目を覚ました彼女は自分の姿に絶句した! ロボットに改造されていた!?  この物語は、謎の組織によって嵌められた少女の冒険談である。

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

藤森フクロウ
ファンタジー
 相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。  悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。  そこには土下座する幼女女神がいた。 『ごめんなさあああい!!!』  最初っからギャン泣きクライマックス。  社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。  真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……  そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?    ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!   第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。  ♦お知らせ♦  余りモノ異世界人の自由生活、コミックス3巻が発売しました!  漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。  よかったらお手に取っていただければ幸いです。    書籍のイラストは万冬しま先生が担当してくださっています。  7巻は6月17日に発送です。地域によって異なりますが、早ければ当日夕方、遅くても2~3日後に書店にお届けになるかと思います。  今回は夏休み帰郷編、ちょっとバトル入りです。  コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。  漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。  ※基本予約投稿が多いです。  たまに失敗してトチ狂ったことになっています。  原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。  現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。  

専属奴隷として生きる

佐藤クッタ
恋愛
M性という病気は治らずにドンドンと深みへ堕ちる。 中学生の頃から年上の女性に憧れていた 好きになるのは 友達のお母さん 文具屋のお母さん お菓子屋のお母さん 本屋のお母さん どちらかというとやせ型よりも グラマラスな女性に憧れを持った 昔は 文具屋にエロ本が置いてあって 雑誌棚に普通の雑誌と一緒にエロ本が置いてあった ある文具屋のお母さんに憧れて 雑誌を見るふりをしながらお母さんの傍にいたかっただけですが お母さんに「どれを買っても一緒よ」と言われて買ったエロ本が SM本だった。 当時は男性がSで女性がMな感じが主流でした グラビアも小説もそれを見ながら 想像するのはM女性を自分に置き換えての「夢想」 友達のお母さんに、お仕置きをされている自分 そんな毎日が続き私のMが開花したのだと思う

処理中です...