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異世界へ行った彼女の話:第十九話
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あの日エルヴィンの誕生祭が終わって……部屋へ戻った頃には、夜は大分に更けていた。
オリヴィアに着替えを手伝ってもらいながらに、私はすぐにベッドの中へ潜りこむと、重たくなる瞼をそっと閉じる。
今日は色々あったな……。
花火喜んでもらえてよかった。
それに新しい出会いもあった。
ライト殿下だっけ……グレンの声と本当によく似て驚いたな。
見た目は似ていなかったけれど仕草や、物腰も何だか似ていて……。
でも彼には弟はいないとそう話していた。
だからきっと……本当に偶然似た人がこの世界に居ただけなのだろう……。
そう思っても、小さな希望の光がずっと胸の中でくすぶるのを感じていた。
「今何しているんだろう……。ちゃんと生活できているのかな……。あぁ……グレンに会いたい……」
そうぼそりとひとりごちると、私は深い夢の中へと吸い込まれていった。
その日私はこの世界へ来て、初めて夢を見た。
グレンと過ごす幸せな夢……。
夢の中の彼は柔らかな笑みを浮かべ、私の隣を並んで歩く。
喧嘩したり、笑いあったり、泣いたり、様々思い出がいくつも描かれていった……。
そんな幸せなひと時に……深く閉じた瞳からポロリと涙がこぼれ落ちた。
そうして翌日から、またいつもと同じ日常へと戻っていく。
相も変わらず塔へ赴く毎日。
エルヴィンの研究助手を務めながらに、自分の研究もしっかりと進めていく。
しかし池へ潜る為の魔術研究はなかなかうまく運ばず、成果は未だ何も出ていなかった。
様々な複合魔術をいくつも作成してみるが……どれもいまいちうまく発動はしないんだよね。
思った効果が得られないというか……本当に無限の可能性があるだろう、幾重にも存在する魔術の幅広さに、私はしばし頭を抱えていた。
そしてあの生誕祭で話していたライト殿のお誘いは来る気配はなく、そのことに私はどこかほっとしていた。
だって彼に会うと、どうしてもグレイを思い出してしまう。
あの日彼の夢を見たのもきっと、ライトに出会ったのも理由の一つだろう。
彼の夢を見れることは幸せだけど……目覚めた時に彼の居ない世界は、どうしようもなく寂しいから……。
そうして何事もない日々が続いたとある日、いつものように私は塔へやってくると、研究室には珍しくカジュアルな姿をしたエルヴィンが居た。
「おはよう、……その恰好どうしたの?」
「開口一番なんだ……俺がローブではなく、普通の恰好をしていたらおかしいのか?」
「ちっ、違うよ!えーと、珍しいなと思っただけで……」
慌ててそう否定してみると、エルヴィンは苦虫を噛み潰したような表情を見せる。
その姿に小さく肩を跳ねさせると、私は恐る恐るに彼の様子を覗っていた。
「怒ってない……そう怯えるな。そのだな……今日は街へ出かけようと思ってるんだが……あんたも一緒に……くっ、来るか?」
「えっ、あっ、うん!迷惑じゃなければぜひ!」
何とも緊張した様子で途切れ途切れに彼の様子に戸惑う中、私は深く頷くと、いつの間にか私の後ろに、オリヴィアが佇んでいた。
「まぁ!!殿方とのお出かけ……!!それでしたら目一杯着飾らないといけませんわ!エルヴィン様、少々お時間を頂いても宜しいでしょうか?」
オリヴィアの言葉にエルヴィンは軽く頷くと、慌てた様子で私に背を向けた。
「あっ、待ってっ、良いよこのままで……、ちょっ、ちょっと引っ張らないで~~~」
断りの言葉など聞く様子もなく、オリヴィアは私の腕を強く引っ張ると、そのまま扉の外へと連れ出されていく。
抵抗も空しく……そのまま部屋へ連れ戻されると、私はオリヴィアの着せ替え人形となった。
これはもう終わるまで解放してもらえそうにないな……。
ルンルンと軽いステップを踏むオリヴィアを横目に、私はあきらめるように大きなため息を吐きだすと、用意された椅子へと腰かける。
只のお出かけに、ここまで必要なのかな……。
あぁでも彼は貴族様だし……変なローブ女が隣にいたら外聞が悪いかな。
そうしてしっちゃかめっちゃかにオリヴィアに着飾られること数十分……ようやくオリヴィアが一息つく頃には、私はクタクタに疲れ果てていた。
はぁ……疲れた……。
出かける前に疲れるってどういうことだろう……。
ようやく解放された事に、私はほっと胸をなでおろしていると、オリヴィアの甲高い声が部屋に響き渡った。
「はぁ~完璧ですわ~~!本当にお美しい……殿方のハートを鷲掴みですわね。この純白のワンピース、絶対姫様に似合うと思っておりましたの!」
オリヴィアはウキウキした様子で、大きな鏡を運んでくると、私の前に置いていく。
鏡に映り込む自分の姿は、ノースリーブの白いサンドレスを着せられていた。
顔には軽く化粧を施され、清楚系のお嬢様が似合いそうな服装に、私は小さく眉を潜めて見せる。
えっ、これ……似合っているの……?
ちょっとこのデザイン若すぎないかな……。
そんな私の事など気にする様子もなく、オリヴィアはまた腕を絡めると、そのまま廊下へと引きずっていく。
見慣れた廊下を歩いていく中、私は城のエントランスへと誘われていった。
そのまま外へ出ると、先ほど見たエルヴィンが馬車の前に佇んでいる。
生誕祭の時のように髪を固め、カジュアルな服装のはずなのに、その姿は英国紳士のようにきまっている。
さすが本物の貴族は違うわね。
私の生まれた世界で同じことをしても……あんな風にかっこよくはならないだろう。
彼の姿に感嘆とした声が漏れるな中、オリヴィアは私の手を離すと、すぐにエルヴィンが優しく私の腕をとる。
そのままスマートに馬車の中へとエスコートされると、お姫様になったような気分で……何だか少し恥ずかしい。
頬に熱が集まっていくのを感じる中、そっとエルヴィンへ視線を向けてみると、彼はいつもと変わらずすました様子だ。
その様子に自分ばかり戸惑っていて……何だか悔しくなる。
そんな事を考えながらに中へ乗り込み、私と向かい合うようにエルヴィンが腰かけると、馬車は静かに出発していった。
*****お知らせ*****
第十八話にて、挿絵を追加致しました!
主人公とエルヴィンのムズムズする感じが、可愛いです(*'ω'*)
ぜひ一度ご覧ください!
オリヴィアに着替えを手伝ってもらいながらに、私はすぐにベッドの中へ潜りこむと、重たくなる瞼をそっと閉じる。
今日は色々あったな……。
花火喜んでもらえてよかった。
それに新しい出会いもあった。
ライト殿下だっけ……グレンの声と本当によく似て驚いたな。
見た目は似ていなかったけれど仕草や、物腰も何だか似ていて……。
でも彼には弟はいないとそう話していた。
だからきっと……本当に偶然似た人がこの世界に居ただけなのだろう……。
そう思っても、小さな希望の光がずっと胸の中でくすぶるのを感じていた。
「今何しているんだろう……。ちゃんと生活できているのかな……。あぁ……グレンに会いたい……」
そうぼそりとひとりごちると、私は深い夢の中へと吸い込まれていった。
その日私はこの世界へ来て、初めて夢を見た。
グレンと過ごす幸せな夢……。
夢の中の彼は柔らかな笑みを浮かべ、私の隣を並んで歩く。
喧嘩したり、笑いあったり、泣いたり、様々思い出がいくつも描かれていった……。
そんな幸せなひと時に……深く閉じた瞳からポロリと涙がこぼれ落ちた。
そうして翌日から、またいつもと同じ日常へと戻っていく。
相も変わらず塔へ赴く毎日。
エルヴィンの研究助手を務めながらに、自分の研究もしっかりと進めていく。
しかし池へ潜る為の魔術研究はなかなかうまく運ばず、成果は未だ何も出ていなかった。
様々な複合魔術をいくつも作成してみるが……どれもいまいちうまく発動はしないんだよね。
思った効果が得られないというか……本当に無限の可能性があるだろう、幾重にも存在する魔術の幅広さに、私はしばし頭を抱えていた。
そしてあの生誕祭で話していたライト殿のお誘いは来る気配はなく、そのことに私はどこかほっとしていた。
だって彼に会うと、どうしてもグレイを思い出してしまう。
あの日彼の夢を見たのもきっと、ライトに出会ったのも理由の一つだろう。
彼の夢を見れることは幸せだけど……目覚めた時に彼の居ない世界は、どうしようもなく寂しいから……。
そうして何事もない日々が続いたとある日、いつものように私は塔へやってくると、研究室には珍しくカジュアルな姿をしたエルヴィンが居た。
「おはよう、……その恰好どうしたの?」
「開口一番なんだ……俺がローブではなく、普通の恰好をしていたらおかしいのか?」
「ちっ、違うよ!えーと、珍しいなと思っただけで……」
慌ててそう否定してみると、エルヴィンは苦虫を噛み潰したような表情を見せる。
その姿に小さく肩を跳ねさせると、私は恐る恐るに彼の様子を覗っていた。
「怒ってない……そう怯えるな。そのだな……今日は街へ出かけようと思ってるんだが……あんたも一緒に……くっ、来るか?」
「えっ、あっ、うん!迷惑じゃなければぜひ!」
何とも緊張した様子で途切れ途切れに彼の様子に戸惑う中、私は深く頷くと、いつの間にか私の後ろに、オリヴィアが佇んでいた。
「まぁ!!殿方とのお出かけ……!!それでしたら目一杯着飾らないといけませんわ!エルヴィン様、少々お時間を頂いても宜しいでしょうか?」
オリヴィアの言葉にエルヴィンは軽く頷くと、慌てた様子で私に背を向けた。
「あっ、待ってっ、良いよこのままで……、ちょっ、ちょっと引っ張らないで~~~」
断りの言葉など聞く様子もなく、オリヴィアは私の腕を強く引っ張ると、そのまま扉の外へと連れ出されていく。
抵抗も空しく……そのまま部屋へ連れ戻されると、私はオリヴィアの着せ替え人形となった。
これはもう終わるまで解放してもらえそうにないな……。
ルンルンと軽いステップを踏むオリヴィアを横目に、私はあきらめるように大きなため息を吐きだすと、用意された椅子へと腰かける。
只のお出かけに、ここまで必要なのかな……。
あぁでも彼は貴族様だし……変なローブ女が隣にいたら外聞が悪いかな。
そうしてしっちゃかめっちゃかにオリヴィアに着飾られること数十分……ようやくオリヴィアが一息つく頃には、私はクタクタに疲れ果てていた。
はぁ……疲れた……。
出かける前に疲れるってどういうことだろう……。
ようやく解放された事に、私はほっと胸をなでおろしていると、オリヴィアの甲高い声が部屋に響き渡った。
「はぁ~完璧ですわ~~!本当にお美しい……殿方のハートを鷲掴みですわね。この純白のワンピース、絶対姫様に似合うと思っておりましたの!」
オリヴィアはウキウキした様子で、大きな鏡を運んでくると、私の前に置いていく。
鏡に映り込む自分の姿は、ノースリーブの白いサンドレスを着せられていた。
顔には軽く化粧を施され、清楚系のお嬢様が似合いそうな服装に、私は小さく眉を潜めて見せる。
えっ、これ……似合っているの……?
ちょっとこのデザイン若すぎないかな……。
そんな私の事など気にする様子もなく、オリヴィアはまた腕を絡めると、そのまま廊下へと引きずっていく。
見慣れた廊下を歩いていく中、私は城のエントランスへと誘われていった。
そのまま外へ出ると、先ほど見たエルヴィンが馬車の前に佇んでいる。
生誕祭の時のように髪を固め、カジュアルな服装のはずなのに、その姿は英国紳士のようにきまっている。
さすが本物の貴族は違うわね。
私の生まれた世界で同じことをしても……あんな風にかっこよくはならないだろう。
彼の姿に感嘆とした声が漏れるな中、オリヴィアは私の手を離すと、すぐにエルヴィンが優しく私の腕をとる。
そのままスマートに馬車の中へとエスコートされると、お姫様になったような気分で……何だか少し恥ずかしい。
頬に熱が集まっていくのを感じる中、そっとエルヴィンへ視線を向けてみると、彼はいつもと変わらずすました様子だ。
その様子に自分ばかり戸惑っていて……何だか悔しくなる。
そんな事を考えながらに中へ乗り込み、私と向かい合うようにエルヴィンが腰かけると、馬車は静かに出発していった。
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主人公とエルヴィンのムズムズする感じが、可愛いです(*'ω'*)
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