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8出会い (セス視点)
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彼女を知ったのはあの日……初めて僕が完敗した日だ。
僕は何でも一番で、負けた事なんて一度もなかった。
なのに突然現れたやつに負けてしまったんだ。
そして一番驚いたのはそいつが女だったってこと。
男のように活発な彼女。
ある日双子の弟、ナサニエルに連れられてやってきた。
令嬢は剣術や勉学を学ぶ者は少なく、物珍しさだけ。
けれど見せ付けられた。
幼いながらショックで暫く立ち直れなかった。
彼女の事を調べてみると、男爵家の令嬢だとわかった。
格下でかつ女に負けるなんて。
だけど彼女は僕の知っている令嬢とは違い、男の中に交じって頭角を現す異端者。
次こそは彼女に勝つと何度も挑んでみたが、一度も勝てなかった。
勉強だって剣術だって、遊びのゲームだって、軽々と僕を追い抜く。
僕を飛び越えて、その先を見据える彼女。
いつか負かしてやると意気込んでいたけれど、ある日を境に彼女はパッタリと現れなくなった。
成長し催し物に参加すると、時折彼女の姿を見つける。
あの頃とは違い、令嬢に交ざって笑みを浮かべる彼女。
遠目からその姿を眺めてみるが、目が合うことはない。
どうでもいい令嬢は鬱陶しいほどに近づいてくるのに……。
もしかしたら令嬢が僕の周りに集まって来られないのか、と考え令嬢へ冷たい態度で接するようになったが、彼女が僕に近づいてくることはなかった。
嫌われているのかも、そう思うとなぜか胸がチクッと痛んだ。
その後風の噂で知ったのだが、彼女はどうも男を好きではないらしい。
だから近づいてこないのだとわかると、なぜかほっとしたんだ。
どうしてほっとしたのかはわからない。
人間誰しも嫌われていると思うと嫌な気持ちなる、そんな単純なものだと思っていた。
いつか彼女ともう一度勝負したいと思うが、成長するにつれて難しいのだとわかったんだ。
それから数年たったあの日、王都一の学園に入学することが決まった。
その時に僕と同室になる相手を知った。
そいつは僕が初めて負けた令嬢の弟、ナサニエル。
面識はあまりない、彼も彼女と同じように僕を避けていたからね。
だが彼は確か隣国の文学に興味を持っていたはずだが……学園に入学するのか、それなら……。
その時に閃いたんだ。
僕はナサニエルを捕まえると、ある提案を持ちかけた。
学園には入学せず、隣国へ留学したくはないかと。
支援は全て公爵家の僕が支持し援助を募る、両親にも僕から話をして説得する。
その代わりといってはなんだけれど、彼女を学園に入学させてほしいと話した。
彼女は貴族の間で有名。
令嬢らしからぬ勝気な性格で、学力に優れ剣術にも優れている。
この学園が共学だったのなら、軽々と入学試験をパスしていただろう。
爵位を利用する必要もなく、彼は提案快く受け協力してくれた。
回りくどいことをしているという自覚はある。
正直、爵位を利用すれば彼女と会う事や話す事は容易いだろう。
だがそれだと意味がないんだ。
僕はもう一度彼女と純粋な勝負がしたいのだから――――――。
無事に彼女が入学し寮で会うと、彼女は大分警戒していた。
僕は女嫌いだと有名だし、バレれば終わると考えているのは顔に書いてある。
別に女が嫌いというわけではない、きっかけはなんであれ、令嬢の相手をするのは疲れるからね。
しなければいいにこしたことはない、そういう態度で接していたら女嫌いだと噂が広まっただけ。
緊張した面持ちの彼女に笑みを浮かべると、僕は手を差し出した。
彼女は戸惑いながら僕の手を取る。
今度は負けないよ、そう思うとギュッと彼女の小さな手を握りしめた。
勝負といってもあの頃のように直接対決するわけではない。
学業の順位、それを見るだけ。
彼女は弟の為に必死で順位を上げようと努力するだろう。
その上に立ちたかった。
結果はそれぞれ得意分野不得意分野があるものの、総合順位では僕が勝ったんだ。
悔しそうに順位表を見上げる彼女の隣にたつと、僕はおもむろに口を開く。
「僕の勝ちだね。でも昔は君のお姉さんに僕は負けっぱなしだった。一度も勝てなかったよ」
彼女は一瞬目を見開くと、考え込みながら誤魔化す様に笑って見せる。
「えっ、そんなことあったかな……ッッいや、あーそうなんだ。姉から聞いたことはないな……ははは」
僕を忘れている、彼女の姿に苛立ちが込み上げる。
僕は君を忘れたことはなかった。
彼女も僕のことを覚えてくれてる、そう思っていた。
だけど彼女にとって僕は……その程度の存在。
彼女の記憶に僕の存在はない事実に、僕はいつの間にか笑みを消していた。
僕は何でも一番で、負けた事なんて一度もなかった。
なのに突然現れたやつに負けてしまったんだ。
そして一番驚いたのはそいつが女だったってこと。
男のように活発な彼女。
ある日双子の弟、ナサニエルに連れられてやってきた。
令嬢は剣術や勉学を学ぶ者は少なく、物珍しさだけ。
けれど見せ付けられた。
幼いながらショックで暫く立ち直れなかった。
彼女の事を調べてみると、男爵家の令嬢だとわかった。
格下でかつ女に負けるなんて。
だけど彼女は僕の知っている令嬢とは違い、男の中に交じって頭角を現す異端者。
次こそは彼女に勝つと何度も挑んでみたが、一度も勝てなかった。
勉強だって剣術だって、遊びのゲームだって、軽々と僕を追い抜く。
僕を飛び越えて、その先を見据える彼女。
いつか負かしてやると意気込んでいたけれど、ある日を境に彼女はパッタリと現れなくなった。
成長し催し物に参加すると、時折彼女の姿を見つける。
あの頃とは違い、令嬢に交ざって笑みを浮かべる彼女。
遠目からその姿を眺めてみるが、目が合うことはない。
どうでもいい令嬢は鬱陶しいほどに近づいてくるのに……。
もしかしたら令嬢が僕の周りに集まって来られないのか、と考え令嬢へ冷たい態度で接するようになったが、彼女が僕に近づいてくることはなかった。
嫌われているのかも、そう思うとなぜか胸がチクッと痛んだ。
その後風の噂で知ったのだが、彼女はどうも男を好きではないらしい。
だから近づいてこないのだとわかると、なぜかほっとしたんだ。
どうしてほっとしたのかはわからない。
人間誰しも嫌われていると思うと嫌な気持ちなる、そんな単純なものだと思っていた。
いつか彼女ともう一度勝負したいと思うが、成長するにつれて難しいのだとわかったんだ。
それから数年たったあの日、王都一の学園に入学することが決まった。
その時に僕と同室になる相手を知った。
そいつは僕が初めて負けた令嬢の弟、ナサニエル。
面識はあまりない、彼も彼女と同じように僕を避けていたからね。
だが彼は確か隣国の文学に興味を持っていたはずだが……学園に入学するのか、それなら……。
その時に閃いたんだ。
僕はナサニエルを捕まえると、ある提案を持ちかけた。
学園には入学せず、隣国へ留学したくはないかと。
支援は全て公爵家の僕が支持し援助を募る、両親にも僕から話をして説得する。
その代わりといってはなんだけれど、彼女を学園に入学させてほしいと話した。
彼女は貴族の間で有名。
令嬢らしからぬ勝気な性格で、学力に優れ剣術にも優れている。
この学園が共学だったのなら、軽々と入学試験をパスしていただろう。
爵位を利用する必要もなく、彼は提案快く受け協力してくれた。
回りくどいことをしているという自覚はある。
正直、爵位を利用すれば彼女と会う事や話す事は容易いだろう。
だがそれだと意味がないんだ。
僕はもう一度彼女と純粋な勝負がしたいのだから――――――。
無事に彼女が入学し寮で会うと、彼女は大分警戒していた。
僕は女嫌いだと有名だし、バレれば終わると考えているのは顔に書いてある。
別に女が嫌いというわけではない、きっかけはなんであれ、令嬢の相手をするのは疲れるからね。
しなければいいにこしたことはない、そういう態度で接していたら女嫌いだと噂が広まっただけ。
緊張した面持ちの彼女に笑みを浮かべると、僕は手を差し出した。
彼女は戸惑いながら僕の手を取る。
今度は負けないよ、そう思うとギュッと彼女の小さな手を握りしめた。
勝負といってもあの頃のように直接対決するわけではない。
学業の順位、それを見るだけ。
彼女は弟の為に必死で順位を上げようと努力するだろう。
その上に立ちたかった。
結果はそれぞれ得意分野不得意分野があるものの、総合順位では僕が勝ったんだ。
悔しそうに順位表を見上げる彼女の隣にたつと、僕はおもむろに口を開く。
「僕の勝ちだね。でも昔は君のお姉さんに僕は負けっぱなしだった。一度も勝てなかったよ」
彼女は一瞬目を見開くと、考え込みながら誤魔化す様に笑って見せる。
「えっ、そんなことあったかな……ッッいや、あーそうなんだ。姉から聞いたことはないな……ははは」
僕を忘れている、彼女の姿に苛立ちが込み上げる。
僕は君を忘れたことはなかった。
彼女も僕のことを覚えてくれてる、そう思っていた。
だけど彼女にとって僕は……その程度の存在。
彼女の記憶に僕の存在はない事実に、僕はいつの間にか笑みを消していた。
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