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第3話
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それは、雑居ビルの五階にあった。
知っている人でなければ見つけられないような小さな看板を確認すると、周平は階段を登っていく。
診断所のドアを前にして何となく怪しい雰囲気を感じ取り、入るのを少し躊躇した。しかし、今朝の美月の顔を思い出すと、すぐに体が動き出した。
中に入ると、意外に室内は清潔感があり洗練されている印象を受ける。白を基調としていて、まるでクリニックの待合室のようだ。
受付には白い服を着た四十代くらいの女性が立っていて、周平に気付くと、「こんにちは」と笑顔で会釈してきた。
「ご予約はされておりますでしょうか?」
「いえ、ハローワークでたまたま広告を見かけて、その足で来てしまったのですが……」
その女性は笑顔のまま応じた。
「承知いたしました。それでは、こちらのアンケートに必要事項をご記入いただけますでしょうか?」
周平はバインダーとボールペンを受け取ると、住所、氏名などの個人情報や、来店の目的などを記入して渡した。
他に客はいないようだ。
しばらく待っていると、その女性に声をかけられる。
「本日ご予約のお客様が急遽キャンセルされましたので、今すぐご案内させていただきますね」
そして、奥の部屋へ通された。
部屋には一人の男が座っていた。
てっきり白衣を着た医者のような人間がいるものと想像していたが、Tシャツにジーンズというラフな格好をしている。
髪を茶色に染めているその男は、年齢も周平と変わらない三十代半ばくらいに見える。
「ようこそ、超高性能適職診断所へ!」
その男は怪しげな笑顔を浮かべながら、両手を開いて周平を迎えた。
その胡散臭さに、周平の中で不安が大きく膨らみ始めた。受付の女性がしっかりしていたので油断していたが、やはり変なところに来てしまったと後悔の念が押し寄せてくる。
「よろしくお願いします」
小声で応じた周平を、その男は嬉しそうに見つめている。
知っている人でなければ見つけられないような小さな看板を確認すると、周平は階段を登っていく。
診断所のドアを前にして何となく怪しい雰囲気を感じ取り、入るのを少し躊躇した。しかし、今朝の美月の顔を思い出すと、すぐに体が動き出した。
中に入ると、意外に室内は清潔感があり洗練されている印象を受ける。白を基調としていて、まるでクリニックの待合室のようだ。
受付には白い服を着た四十代くらいの女性が立っていて、周平に気付くと、「こんにちは」と笑顔で会釈してきた。
「ご予約はされておりますでしょうか?」
「いえ、ハローワークでたまたま広告を見かけて、その足で来てしまったのですが……」
その女性は笑顔のまま応じた。
「承知いたしました。それでは、こちらのアンケートに必要事項をご記入いただけますでしょうか?」
周平はバインダーとボールペンを受け取ると、住所、氏名などの個人情報や、来店の目的などを記入して渡した。
他に客はいないようだ。
しばらく待っていると、その女性に声をかけられる。
「本日ご予約のお客様が急遽キャンセルされましたので、今すぐご案内させていただきますね」
そして、奥の部屋へ通された。
部屋には一人の男が座っていた。
てっきり白衣を着た医者のような人間がいるものと想像していたが、Tシャツにジーンズというラフな格好をしている。
髪を茶色に染めているその男は、年齢も周平と変わらない三十代半ばくらいに見える。
「ようこそ、超高性能適職診断所へ!」
その男は怪しげな笑顔を浮かべながら、両手を開いて周平を迎えた。
その胡散臭さに、周平の中で不安が大きく膨らみ始めた。受付の女性がしっかりしていたので油断していたが、やはり変なところに来てしまったと後悔の念が押し寄せてくる。
「よろしくお願いします」
小声で応じた周平を、その男は嬉しそうに見つめている。
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