23 / 74
15-2話 姫野美姫 「スマホスキル」
しおりを挟む
コーラって、嘘でしょ!
わたしも駆け寄る。
一口飲んでみた。
ほんとだ、コーラだ。気の抜けたコーラ。でも微炭酸だけど、ちゃんと炭酸!
「どうやったの?」
作ったドクに詰め寄る。
「どうって、シロップと炭酸で」
「甘みは?」
「鑑定スキルで見つけた。砂糖大根みたいなのがあってね、それを煮詰めて」
「炭酸は?」
「重曹は炭酸水素ナトリウムだから、そこは簡単に……」
さっき思ったけど、ケタ違いがいた。これは才能とスキルのスーパー無駄遣い!
もう、ため息しか出てこない。元いた場所に座って、食事に戻る。
「師匠ー!」
なんの声かと思ったら、ヴァゼル伯爵がコーラを吹き出した。初体験だと、そりゃ刺激が強いよ。
それを見てたジャムパパが、そっと飲むのをやめたのも見えた。
食事を終えて、コーラをちびちび飲む。
光る菩提樹をしみじみ眺めた。
周りでは、みんなが浮かれたようにしゃべっている。ここまで大変だったので、無理もない。
あっ、と思い出して表計算を出した。残りの食料を計算しとかないと。
「ワーカホリック、仕事中毒ね」
透き通る声に振り向くと、高島瀬玲奈だった。
「今ぐらい、明日を考えるのをやめたら?」
セレイナの意見はもっともだ。表計算をしまった。
「ヒ、ヒメ、あれ……」
プリンスが通りがかった。それは問題ではない。問題は全身が光ってることだ。連れている妖精まで光っている。
「プリンスそれ……」
「ああ、生き物でも光るか? って実験でジャンケンしてキングに負けた」
颯爽と去っていく。
プリンスは切れ長のハンサムだ。それが光ってるんだから、美的破壊力がすごい。
「彼、変わったわよね」
セレイナが言った。
「ほんと。何が人を変えるのか、永遠の謎だわ」
「アタシは、けっこうわかるわよ」
「ええ?」
「昔から、チヤホヤされてたから」
そりゃあ、チヤホヤされるだろう。小さい時の写真を見たことがあるが、おめめクリクリ、まるで天使だ。
「だから、このクラスに来て良かったわ。井の中の蛙。よくわかった」
「あー、キングとプリンスがいるから?」
セレイナが、わたしを見る。まつ毛長っ! いや、そうじゃないか。
「まさか、わたし?」
「才色兼備ってのが、ほんとにいるって思い知ったわ」
「わたしが? ないないない!」
ぶんぶん手を振った。
「しゃべらなかったら、もっとモテてるわ」
「わちゃ。反論できない。あと胸とね」
「それで胸があったら嫌味よ。そのぐらいでいいの」
「わたしは良くない」
「もう少し欠点欲しいぐらい。何かないの? 水虫とか」
「ぎゃはは」
「クラスにヒメがいて良かった」
「むむ。照れますな」
「だから、あんまり無理しないで」
セレイナが言いたいのは、そこなのね。私はうなずいた。
『ちょっと! 我がクラスの女子ツートップが、そんな隅にいないでくれる?』
急に声が届いた。
「ももちゃん! おどろくから急はやめて!」
「えっ? 誰?」
セレイナが周りを見た。そうだった、セレイナには聞こえないんだった。
「遠藤もも、彼女のスキルはスマホ。いや画像はないからケイタイか。電話できるの」
「そんなスキルあるんだ!」
ももを見つけたので、セレイナに教える。こっちに手を振って、片手は耳を押さえていた。隣には、コウとタクの二人がいる。
『今、コウたちと話してたんだけど、あたしもヴェゼル忍者クラブに入ろうと思うの』
ヴァゼル忍者クラブ……そんな名前になったのか。
『あたしのスキルって、これ向きかなって。あたしが中継基地になれば便利じゃない?』
たしかに軍事的に言うと、索敵とか斥候向きだ。身体が小さいのに、バスケ部でレギュラーだった機敏さもある。
「うん。わかった。無理しないでね」
『りょ。あ、さっきプリンス見たわよ! ちょっと女子も負けてらんない。どっちか光ったら?』
「なんの勝負よ!」
『じゃあ、せっかくだから、セレイナに一曲でも歌わせればいいのに』
不思議そうな顔をしているセレイナに伝えた。
「一曲歌えって」
「ええ! 嫌よ」
「セレイナは嫌だって」
『ケチだなぁ。減るもんでもないのに』
とつぜん通話は切れた。
遠くにいたゲスオが、はっと顔を上げ、ももに向かって駆けていく。
今日は、嫌な予感しかしないわね。
わたしも駆け寄る。
一口飲んでみた。
ほんとだ、コーラだ。気の抜けたコーラ。でも微炭酸だけど、ちゃんと炭酸!
「どうやったの?」
作ったドクに詰め寄る。
「どうって、シロップと炭酸で」
「甘みは?」
「鑑定スキルで見つけた。砂糖大根みたいなのがあってね、それを煮詰めて」
「炭酸は?」
「重曹は炭酸水素ナトリウムだから、そこは簡単に……」
さっき思ったけど、ケタ違いがいた。これは才能とスキルのスーパー無駄遣い!
もう、ため息しか出てこない。元いた場所に座って、食事に戻る。
「師匠ー!」
なんの声かと思ったら、ヴァゼル伯爵がコーラを吹き出した。初体験だと、そりゃ刺激が強いよ。
それを見てたジャムパパが、そっと飲むのをやめたのも見えた。
食事を終えて、コーラをちびちび飲む。
光る菩提樹をしみじみ眺めた。
周りでは、みんなが浮かれたようにしゃべっている。ここまで大変だったので、無理もない。
あっ、と思い出して表計算を出した。残りの食料を計算しとかないと。
「ワーカホリック、仕事中毒ね」
透き通る声に振り向くと、高島瀬玲奈だった。
「今ぐらい、明日を考えるのをやめたら?」
セレイナの意見はもっともだ。表計算をしまった。
「ヒ、ヒメ、あれ……」
プリンスが通りがかった。それは問題ではない。問題は全身が光ってることだ。連れている妖精まで光っている。
「プリンスそれ……」
「ああ、生き物でも光るか? って実験でジャンケンしてキングに負けた」
颯爽と去っていく。
プリンスは切れ長のハンサムだ。それが光ってるんだから、美的破壊力がすごい。
「彼、変わったわよね」
セレイナが言った。
「ほんと。何が人を変えるのか、永遠の謎だわ」
「アタシは、けっこうわかるわよ」
「ええ?」
「昔から、チヤホヤされてたから」
そりゃあ、チヤホヤされるだろう。小さい時の写真を見たことがあるが、おめめクリクリ、まるで天使だ。
「だから、このクラスに来て良かったわ。井の中の蛙。よくわかった」
「あー、キングとプリンスがいるから?」
セレイナが、わたしを見る。まつ毛長っ! いや、そうじゃないか。
「まさか、わたし?」
「才色兼備ってのが、ほんとにいるって思い知ったわ」
「わたしが? ないないない!」
ぶんぶん手を振った。
「しゃべらなかったら、もっとモテてるわ」
「わちゃ。反論できない。あと胸とね」
「それで胸があったら嫌味よ。そのぐらいでいいの」
「わたしは良くない」
「もう少し欠点欲しいぐらい。何かないの? 水虫とか」
「ぎゃはは」
「クラスにヒメがいて良かった」
「むむ。照れますな」
「だから、あんまり無理しないで」
セレイナが言いたいのは、そこなのね。私はうなずいた。
『ちょっと! 我がクラスの女子ツートップが、そんな隅にいないでくれる?』
急に声が届いた。
「ももちゃん! おどろくから急はやめて!」
「えっ? 誰?」
セレイナが周りを見た。そうだった、セレイナには聞こえないんだった。
「遠藤もも、彼女のスキルはスマホ。いや画像はないからケイタイか。電話できるの」
「そんなスキルあるんだ!」
ももを見つけたので、セレイナに教える。こっちに手を振って、片手は耳を押さえていた。隣には、コウとタクの二人がいる。
『今、コウたちと話してたんだけど、あたしもヴェゼル忍者クラブに入ろうと思うの』
ヴァゼル忍者クラブ……そんな名前になったのか。
『あたしのスキルって、これ向きかなって。あたしが中継基地になれば便利じゃない?』
たしかに軍事的に言うと、索敵とか斥候向きだ。身体が小さいのに、バスケ部でレギュラーだった機敏さもある。
「うん。わかった。無理しないでね」
『りょ。あ、さっきプリンス見たわよ! ちょっと女子も負けてらんない。どっちか光ったら?』
「なんの勝負よ!」
『じゃあ、せっかくだから、セレイナに一曲でも歌わせればいいのに』
不思議そうな顔をしているセレイナに伝えた。
「一曲歌えって」
「ええ! 嫌よ」
「セレイナは嫌だって」
『ケチだなぁ。減るもんでもないのに』
とつぜん通話は切れた。
遠くにいたゲスオが、はっと顔を上げ、ももに向かって駆けていく。
今日は、嫌な予感しかしないわね。
1
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~
平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。
しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。
パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
宝くじ当選を願って氏神様にお百度参りしていたら、異世界に行き来できるようになったので、交易してみた。
克全
ファンタジー
「アルファポリス」と「カクヨム」にも投稿しています。
2020年11月15日「カクヨム」日間異世界ファンタジーランキング91位
2020年11月20日「カクヨム」日間異世界ファンタジーランキング84位
兎人ちゃんと異世界スローライフを送りたいだけなんだが
アイリスラーメン
ファンタジー
黒髪黒瞳の青年は人間不信が原因で仕事を退職。ヒキニート生活が半年以上続いたある日のこと、自宅で寝ていたはずの青年が目を覚ますと、異世界の森に転移していた。
右も左もわからない青年を助けたのは、垂れたウサ耳が愛くるしい白銀色の髪をした兎人族の美少女。
青年と兎人族の美少女は、すぐに意気投合し共同生活を始めることとなる。その後、青年の突飛な発想から無人販売所を経営することに。
そんな二人に夢ができる。それは『三食昼寝付きのスローライフ』を送ることだ。
青年と兎人ちゃんたちは苦難を乗り越えて、夢の『三食昼寝付きのスローライフ』を実現するために日々奮闘するのである。
三百六十五日目に大戦争が待ち受けていることも知らずに。
【登場人物紹介】
マサキ:本作の主人公。人間不信な性格。
ネージュ:白銀の髪と垂れたウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。恥ずかしがり屋。
クレール:薄桃色の髪と左右非対称なウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。人見知り。
ダール:オレンジ色の髪と短いウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。お腹が空くと動けない。
デール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。
ドール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。
ルナ:イングリッシュロップイヤー。大きなウサ耳で空を飛ぶ。実は幻獣と呼ばれる存在。
ビエルネス:子ウサギサイズの妖精族の美少女。マサキのことが大好きな変態妖精。
ブランシュ:外伝主人公。白髪が特徴的な兎人族の女性。世界を守るために戦う。
【お知らせ】
◆2021/12/09:第10回ネット小説大賞の読者ピックアップに掲載。
◆2022/05/12:第10回ネット小説大賞の一次選考通過。
◆2022/08/02:ガトラジで作品が紹介されました。
◆2022/08/10:第2回一二三書房WEB小説大賞の一次選考通過。
◆2023/04/15:ノベルアッププラス総合ランキング年間1位獲得。
◆2023/11/23:アルファポリスHOTランキング5位獲得。
◆自費出版しました。メルカリとヤフオクで販売してます。
※アイリスラーメンの作品です。小説の内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる