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15-1話 姫野美姫 「異世界コーラ」

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視点変わります。ヒメちゃんこと姫野美姫(ひめのみき)
ほか登場人物(ニックネーム)
沼田睦美(むっちゃん)
友松あや(あやちゃん)
有馬和樹(キング)
蛭川日出男(ゲスオ)
坂城秀(ドク)
根岸光平(コウくん)
山田卓司(タクくん)
ヴァゼルケビナード(ヴァゼル伯爵)
ジャムザウール(ジャムパパ)
高島瀬玲奈(セレイナ)
飯塚清士郎(プリンス)
遠藤もも(ももちゃん)

-・-・-・-・-・-・-・-・ー



 女子が「むっちゃんランプ」で大騒ぎ。

「ヒメ、知ってたの?」

 友松あやが聞いてきた。わたしは、ほぼ全員のスキルを聞いて表計算にメモしてある。むっちゃんのは、彼女が書いている時にのぞき見した。

「知ってたけど、言いたくなさそうだったから」
「そうよね! おどろきだったわ、笑われるからって」
「えっ? そっち!」
「そうよ」

 うわぁ。わたしはまた、他人に使いたくないのかと思ってた。

 うがった見方をして、本人に悪い。こういうところが、わたしは小利口で嫌になる。

「あれは、炎ではないのですか?」

 いつのまにか隣に精霊さんがいた。

「ええ。熱くもないし。あなたの周りはあれにするね」
「娘よ、そなたの気遣い、誠に感謝を申し上げる」

 精霊さんが、いたく感動している。まあ、普通は崇められるはずの存在。それがなんとも軽く扱われている。

「沼田! 沼田!」

 キングが、むっちゃんを呼んでる。

「なんでもできるの?」

 むっちゃんがうなずいた。どこかに連れて行く。悪い予感しかしない。

 ピッカー! と菩提樹に明かりが灯った。

「うおー!」と周りからどよめき。

「こ、これは……」

 精霊さんが、口パクパクしてる。

「ゲスオ! ゲスオ!」
「はいはーい!」
「これをこうして……」

 三人が何かをしている。

「なるほどでござる! お茶目な落書き!」
「ピカール!」
「よし、そーれ!」

 キングが樹に向かって砂を投げた。それは、小さな赤い光になっている。

 なるほど、ゲスオでスキルを「赤い光」に改変したのか。

 光る砂は葉っぱや枝に乗り、イルミネーションのように輝いた。

「クリスマスだー!」

 みんながジングルベルを歌い出す。

「娘よ、あれはいったい……」
「あっ、えーと、クリスマスと言って、自然の恵みに感謝をする祭りです」
「そ、そうであるか。ならば致し方ない」

 気の毒すぎて、ほんとの事を言えない。ああやって飾られると、太古の樹でも威厳もへったくれもないわね。

 焚き火より、菩提樹のほうが明るい。その周りに輪になって座った。いい匂いが漂ってくる。

 えっ? この香りって……

「カレーだ!」

 みんなが騒ぎ出す。調理班が料理を出し始めたようだ。スープカレーに、ローストチキン。ほんとにクリスマスみたい!

「飲み物できたよー」

 ドクが大きな鍋を抱えてやってきた。そういや、今まで、何してたんだろ?

「なんやそれ!」

 シュタッ! とコウくんこと根岸光平がカップを持って並んだ。早っ、スキルの無駄使いもいいとこだわ。

 コウくんが持ってるカップはガラスだ。自分が選んだ家にあったらしい。わたしが選んだ家には陶器しかなかった。

 液体が注がれる。真っ黒だった。

 コウくんが恐る恐る口をつける。

「……嘘やん」

 今度はタクくんが、にょきっと地面から出てきた。

 ほんとに、あの二人はスキルを無駄使いするわね。

 タクくんも黒い液体を飲んで、驚愕の顔をする。

「ねぇ、なにそれ?」

 誰かが聞いた。

「ありえへん……コーラや」
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