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2 プロローグ キィラの話①

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 ぷにぷにとした腕。二段腹。
肉のせいで細くなった目。
笑った目は愛嬌があると言われるかもしれないがその程度。
低い鼻。大きめの口。
ニキビはないが真っ白過ぎてもはや、貧血を疑いたい肌。
この女の子を一言で表すなら、雪だるま。
痩せたくても痩せられないことに何度涙を流しただろう。

そう、つまり。
この世界では、傾国の美少女なのである。
だが彼女は、無自覚。
いや、無自覚というよりむしろ自分の顔が嫌い。
彼女にとっての理想は、
くびれがあって出るところは出た美しい体。
ぱっちりお目目に小さな口。
…1ミリたりとも被っていない。

だが、何故こんなにも世間と彼女――先ほどの「女の子」 とでは
美醜感覚が違うのか。
彼女は、前世の記憶があり、
彼女の外見が前世と瓜二つなことも気づいている。
彼女の前世の記憶について、だが、
あまりいいものだとは言えない。
いわゆるいじめがあったのだ。
ここでそのことについて詳しいことは書かないが、
彼女の前世での死亡理由が
いじめによる自殺であることから
その壮絶さを感じてほしい。
そんな彼女が前世の記憶をもったまま生まれ変わって、
初めて、鏡を見た時の絶望を考えて見てほしい。
彼女が、必要最低限しか外に出ないようになり、
笑う回数も少なくなっていったのは、
必然ともいえるだろう。
もちろん何もしないで部屋にいたわけではない。
前世手に入れた知識に加えて、彼女は勉強を頑張った。
学校に行かずとも、商人として生計を立てる実家―マーシュ家を支えていけるくらいには。
そのおかげか、キィラが手伝うようになってから、
実家の業績は右肩上がりを続けている。
それも、家族が無理にキィラを外に出さないまま
過ごせていけた理由の一つだ。
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