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3話

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翌日、クリスタはバートラムの自宅を訪ねた。
約束をしていなかったが幸いにも彼は在宅していた。

約束がなかったとはいえクリスタも貴族の令嬢である。
対応した使用人はあまり失礼な態度を取ることもできず、彼女は応接室へと通された。

そして少し待ち、バートラムがやってきた。
クリスタはさっそく要求を伝える。

「バートラム様、婚約破棄されたことには納得できません。ですが信頼関係は破壊されました。理不尽な理由での婚約破棄に対し慰謝料を請求します」
「慰謝料? 何を言っているんだ、君は」

慰謝料を請求されると言われたバートラムは本気では取り合わなかった。
きっと謝罪の言葉を求めているか、はした金でもせびるのだろうと考えた。

そう考えている間にもクリスタは言葉を続ける。

「私の心にどれほどの傷を負わせたのか分かっていないの? バートラム様の一方的な決断で私の人生が狂ったのよ。私は傷ついたの! それなのに慰謝料も支払わないというの?」
「君は本気で言っているのか? そんな無茶な要求、恥ずかしくないのか?」
「恥ずかしいのはバートラム様のほうでしょ? あなたの冷たさと無責任さが私をここまで追い込んだのよ。私の気持ちを踏みにじった代償を払うべきよ」

クリスタが必死に語ろうがバートラムは冷静だった。
とはいえ内心怒りがないわけではない。
だがお互いに感情的になってしまえばまとまる話もまとまらなくなってしまう。

「やれやれ、また感情的になっているようだな。それでは貴族の妻とするには問題がある。まだ理解できていないのか? 理解できていないなら婚約破棄したのは正解だったということだ」
「勝手に決めつけないで。そんな理由で私を捨てたのよ? 私の気持ちを考えてくれなかったのだから当然の要求よ。どうして慰謝料を支払おうとしないの?」
「君が何を言おうと俺はそれを受け入れられない。君が感情的になっているだけだ。もう少し落ち着いたらどうだ?」
「感情的になっているのはバートラム様も同じよ。自分の立場ばかり気にして私のことを全く考えていない。それに意固地になっているわ」

クリスタが口を開くたびにバートラムの不快感は増していく。

「……こうやって言葉でお互いを傷つけ合うのは良くないことだ。愛がないのも当然だな」
「愛? どうしてバートラム様が愛を口にするの? 私のこと、全然大切にしてくれなかったじゃない。私がどれだけ尽くしても報われなかったわ。私の愛は虚しかったわ……」
「……君の立場や認識はそうだったのか。ならば俺はこれ以上何も言うことがない」
「そう。何も言えないのなら私の要求を真剣に受け止めるべきよ」

お互いの主張は平行線だった。
言いたいことを言って慰謝料を支払わせようとするクリスタ。
彼女の言い分を認めず慰謝料の支払いから逃れようとするバートラム。

このままでは話し合いが無駄に罵り合うだけで終わってしまう。

「ともかく、俺は慰謝料を支払う気はない」

彼は固い意志で告げた。

だからといってクリスタは退くことができない。
半端な結果では母親に何を言われるかわからなかったからだ。
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