愛人を作るのですか？！

3話

ダスティンが愛人を持つと言い、不本意ながらマリエルが受け入れた。
これにより二人の関係は変わってしまった。

彼はすぐにエレナという平民の女性を愛人として迎えた。
そして彼はエレナを優先し、マリエルのことは放置するようになった。
マリエルはダスティンに逆らってしまったのだから当然だと思った。



ある日、マリエルは婚約者の義務としてダスティンの邸宅を訪ねた。
婚約関係にあるので一緒に過ごすことで関係に問題がないことを証明するのだが、既に冷めた関係の二人は一緒に過ごすことはない。
彼の邸宅へ行ってもダスティンはエレナと一緒にいる。
マリエルはそのような場に一緒にいられるはずがなく、適当に時間を潰すことにしていた。

だがその日は運悪くダスティンとエレナが庭で過ごしているの場面に遭遇した。
遭遇とはいえマリエルが一方的に見つけただけであり、二人は彼女の存在には気付いていない。

マリエルの耳には二人の笑い声が聞こえてきた。
自分では得られない、楽しそうな関係。
もしダスティンに逆らわなければ自分もあのように楽しくすごせたのかもしれないと考えると彼女の胸は痛んだ。

マリエルの苦しみとは関係なくダスティンとエレナは過ごしている。
ダスティンはエレナの髪を優しく撫で、彼女の頬にキスをしていた。
エレナの表情は幸福感で満ちており、二人の関係が良いものだと証明していた。
彼女の目は輝き、ダスティンへの愛で満ちていた。

「ダスティン、あなたがいると、まるで夢の中にいるみたい」
「俺もだ。君といると楽しいんだ。満たされるものがあるんだ」

エレナははにかみながら言い、ダスティンは優しい声で応えた。
そして彼は彼女の手をしっかりと握りしめた。
ダスティンはエレナの目をじっと見つめ、彼女の存在がどれほど大切であるかを心から伝えているようだった。

彼らの間には親密さと愛情が溢れていた。
見ていたマリエルの心は悲しみで満たされていた。

エレナはダスティンに寄り添い、彼の肩に頭を乗せた。
彼女の笑顔は彼女がどれほど幸せであるかを物語っていた。
ダスティンもまた彼女を大切に思っていることは明らかだった。

「エレナが愛人なんてもったいないな。だがこれは身分のこともあるから仕方のないことだ」
「いいの、わたしは十分に幸せだもの。ダスティンの愛人であってもわたしを愛しているのはよく伝わってくるわ。表向きの立場なんて関係ないわ。大切なのはダスティンがわたしを愛してくれること、それよ」
「嬉しいことを言ってくれるな。俺だって身分が関係なければエレナと結婚したいさ。だがそうも言っていられないからな……」
「分かっているわ。わたしは我がままなんて言わないわ。今の幸せで十分よ」
「俺だって幸せだ。エレナのことを真剣に愛している」
「嬉しいわ、ダスティン」

二人の揺るぎない愛を証明するような会話が繰り広げられていた。
二人は、まるで周囲の世界とは無関係に、ただ二人だけの愛の溢れる世界が広がっていた。

マリエルはこれ以上見ていられず、静かにその場から離れた。



彼女は心の中で涙を流した。
自分の置かれている立場は惨めなもので、これ以上耐えられないと思った。

だが婚約関係を解消すると親に迷惑をかけることになってしまう。

このまま愛されない婚約者としての関係を続けることはできない。

望まない関係を続けるしかない苦しみがマリエルを襲った。