8 / 8
8話
しおりを挟む
数日後、セレナはマーヴィン王子と共に王宮の王子の自室にいた。
豪華な装飾が施された部屋の中で、二人はソファに座り、先日の出来事について話し合っていた。
「ジョナスのこと、まだ気にかけているのか?」
王子が少し嫉妬を含んだ声で尋ねたがセレナは微笑み反した。
「殿下、そのようなつまらない冗談はやめてください。あんな男のこと、気にかけるはずがないと知っているでしょう? それよりも殿下のほうが気にかけているのではありませんか?」
「そうだな、確かにジョナスのことを気にかけている。許さないと言われたのだ。どう制裁すべきか悩んでいたのだ」
「殿下が納得できるようにするのが一番だと思います」
「そうか、ならばジョナスの過去の浮気の事実を広めて立場を失わせておくか。後は勝手に周囲の貴族たちが何かするだろう」
「良い考えだと思います」
マーヴィン王子は王族の誇りがあり、許さないなどという暴言を吐いたジョナスを許せなかった。
だが命を奪うほどの出来事でもないため、後は貴族たちがどうするか任せることにした。
きっと貴族たちは物事の裏側を見抜き王子に忖度するだろう。
マーヴィン王子はジョナスへの制裁はそれで良しとした。
そして話題を変えた。
「ところで、セレナ。君がスザンナを解放したのだろう?」
セレナは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに理解した。
「はい、そうです。殿下、あなたには見抜かれていたのですね」
「まあな。ジョナスが婚約者ではスザンナが幸せになれないと考えたのか?」
「そうです。あんな浮気するような男では幸せになれませんから。ジョナスが平気で浮気するような人間であることは私に乗り換えたことでも明らかです」
「しかしだな、そういう意図があっても他の男の婚約者にまでなるなんて不愉快だぞ」
「申し訳ありません。ですが殿下への愛は本物ですので……」
二人の間には甘い空気が漂い始めたが、まだ王子による追及は終わっていない。
「それにスザンナが領地の運営の手伝いで自分の人生を台無しにするのは可哀そうとでも思ったのか?」
「はい、お姉さまにはもっと自由で幸せな人生を送ってほしいと思いました。親から離れて自分の道を歩むべきだと思うのです」
「セレナは本当に姉思いなのだな」
「そんなことはありません。ただ、自分のやりたいようにやっただけですから」
セレナの言葉は真実だった。
そこにスザンナを裏切ったジョナスを許さないという意味も含まれていた。
王子はそんなセレナを愛おしそうに見つめた。
「君のその素直でないところも私は愛している。君の全てが私にとって愛おしい」
マーヴィン王子はセレナを優しく抱き寄せた。
セレナはその温もりを感じ幸せだと思った。
セレナはマーヴィン王子の寵姫となることが決まっている。
妃のような立場ではないが自由気ままな立場だ。
それこそがセレナの望んだ生き様だった。
一方、スザンナも自分の人生を歩み始めた。
真実を知らないまま、セレナとジョナスが不幸になればいいと考え、それも彼女の生きるための原動力となった。
スザンナが主役の物語ならセレナは悪役でしかない。
セレナが主役の物語ならスザンナは脇役でしかなかった。
豪華な装飾が施された部屋の中で、二人はソファに座り、先日の出来事について話し合っていた。
「ジョナスのこと、まだ気にかけているのか?」
王子が少し嫉妬を含んだ声で尋ねたがセレナは微笑み反した。
「殿下、そのようなつまらない冗談はやめてください。あんな男のこと、気にかけるはずがないと知っているでしょう? それよりも殿下のほうが気にかけているのではありませんか?」
「そうだな、確かにジョナスのことを気にかけている。許さないと言われたのだ。どう制裁すべきか悩んでいたのだ」
「殿下が納得できるようにするのが一番だと思います」
「そうか、ならばジョナスの過去の浮気の事実を広めて立場を失わせておくか。後は勝手に周囲の貴族たちが何かするだろう」
「良い考えだと思います」
マーヴィン王子は王族の誇りがあり、許さないなどという暴言を吐いたジョナスを許せなかった。
だが命を奪うほどの出来事でもないため、後は貴族たちがどうするか任せることにした。
きっと貴族たちは物事の裏側を見抜き王子に忖度するだろう。
マーヴィン王子はジョナスへの制裁はそれで良しとした。
そして話題を変えた。
「ところで、セレナ。君がスザンナを解放したのだろう?」
セレナは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに理解した。
「はい、そうです。殿下、あなたには見抜かれていたのですね」
「まあな。ジョナスが婚約者ではスザンナが幸せになれないと考えたのか?」
「そうです。あんな浮気するような男では幸せになれませんから。ジョナスが平気で浮気するような人間であることは私に乗り換えたことでも明らかです」
「しかしだな、そういう意図があっても他の男の婚約者にまでなるなんて不愉快だぞ」
「申し訳ありません。ですが殿下への愛は本物ですので……」
二人の間には甘い空気が漂い始めたが、まだ王子による追及は終わっていない。
「それにスザンナが領地の運営の手伝いで自分の人生を台無しにするのは可哀そうとでも思ったのか?」
「はい、お姉さまにはもっと自由で幸せな人生を送ってほしいと思いました。親から離れて自分の道を歩むべきだと思うのです」
「セレナは本当に姉思いなのだな」
「そんなことはありません。ただ、自分のやりたいようにやっただけですから」
セレナの言葉は真実だった。
そこにスザンナを裏切ったジョナスを許さないという意味も含まれていた。
王子はそんなセレナを愛おしそうに見つめた。
「君のその素直でないところも私は愛している。君の全てが私にとって愛おしい」
マーヴィン王子はセレナを優しく抱き寄せた。
セレナはその温もりを感じ幸せだと思った。
セレナはマーヴィン王子の寵姫となることが決まっている。
妃のような立場ではないが自由気ままな立場だ。
それこそがセレナの望んだ生き様だった。
一方、スザンナも自分の人生を歩み始めた。
真実を知らないまま、セレナとジョナスが不幸になればいいと考え、それも彼女の生きるための原動力となった。
スザンナが主役の物語ならセレナは悪役でしかない。
セレナが主役の物語ならスザンナは脇役でしかなかった。
386
お気に入りに追加
262
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
もう愛は冷めているのですが?
希猫 ゆうみ
恋愛
「真実の愛を見つけたから駆け落ちするよ。さよなら」
伯爵令嬢エスターは結婚式当日、婚約者のルシアンに無残にも捨てられてしまう。
3年後。
父を亡くしたエスターは令嬢ながらウィンダム伯領の領地経営を任されていた。
ある日、金髪碧眼の美形司祭マクミランがエスターを訪ねてきて言った。
「ルシアン・アトウッドの居場所を教えてください」
「え……?」
国王の命令によりエスターの元婚約者を探しているとのこと。
忘れたはずの愛しさに突き動かされ、マクミラン司祭と共にルシアンを探すエスター。
しかしルシアンとの再会で心優しいエスターの愛はついに冷め切り、完全に凍り付く。
「助けてくれエスター!僕を愛しているから探してくれたんだろう!?」
「いいえ。あなたへの愛はもう冷めています」
やがて悲しみはエスターを真実の愛へと導いていく……
◇ ◇ ◇
完結いたしました!ありがとうございました!
誤字報告のご協力にも心から感謝申し上げます。
婚約者は幼馴染みを選ぶようです。
香取鞠里
恋愛
婚約者のハクトには過去に怪我を負わせたことで体が不自由になってしまった幼馴染がいる。
結婚式が近づいたある日、ハクトはエリーに土下座して婚約破棄を申し出た。
ショックではあったが、ハクトの事情を聞いて婚約破棄を受け入れるエリー。
空元気で過ごす中、エリーはハクトの弟のジャックと出会う。
ジャックは遊び人として有名だったが、ハクトのことで親身に話を聞いて慰めてくれる。
ジャックと良い雰囲気になってきたところで、幼馴染みに騙されていたとハクトにエリーは復縁を迫られるが……。
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
3年も帰ってこなかったのに今更「愛してる」なんて言われても
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢ハンナには婚約者がいる。
その婚約者レーノルドは伯爵令息で、身分も家柄も釣り合っている。
ところがレーノルドは旅が趣味で、もう3年も会えていない。手紙すらない。
そんな男が急に帰ってきて「さあ結婚しよう」と言った。
ハンナは気付いた。
もう気持ちが冷めている。
結婚してもずっと待ちぼうけの妻でいろと?
【短編】婚約者に虐げられ続けた完璧令嬢は自身で白薔薇を赤く染めた
砂礫レキ
恋愛
オーレリア・ベルジュ公爵令嬢。
彼女は生まれた頃から王妃となることを決められていた。
その為血の滲むような努力をして完璧な淑女として振舞っている。
けれど婚約者であるアラン王子はそれを上辺だけの見せかけだと否定し続けた。
つまらない女、笑っていればいいと思っている。俺には全部分かっている。
会う度そんなことを言われ、何を言っても不機嫌になる王子にオーレリアの心は次第に不安定になっていく。
そんなある日、突然城の庭に呼びつけられたオーレリア。
戸惑う彼女に婚約者はいつもの台詞を言う。
「そうやって笑ってればいいと思って、俺は全部分かっているんだからな」
理不尽な言葉に傷つくオーレリアの目に咲き誇る白薔薇が飛び込んでくる。
今日がその日なのかもしれない。
そう庭に置かれたテーブルの上にあるものを発見して公爵令嬢は思う。
それは閃きに近いものだった。
妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。
雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」
妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。
今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。
私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。
私よりも姉を好きになった婚約者
神々廻
恋愛
「エミリー!お前とは婚約破棄し、お前の姉のティアと婚約する事にした!」
「ごめんなさい、エミリー.......私が悪いの、私は昔から家督を継ぐ様に言われて貴方が羨ましかったの。それでっ、私たら貴方の婚約者のアルに恋をしてしまったの.......」
「ティア、君は悪くないよ。今まで辛かったよな。だけど僕が居るからね。エミリーには僕の従兄弟でティアの元婚約者をあげるよ。それで、エミリーがティアの代わりに家督を継いで、僕の従兄と結婚する。なんて素敵なんだろう。ティアは僕のお嫁さんになって、2人で幸せな家庭を築くんだ!」
「まぁ、アルったら。家庭なんてまだ早いわよ!」
このバカップルは何を言っているの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる