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8話
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グロリアが一人で街を散策していた時まで遡る。
「こんなに素敵な場所があるなんて全然知らなかったわ」
彼女は周りを見渡しながら思わず口にした。
露店が並ぶ通りは一際活気に満ちていた。
元気な人々から彼女も元気を分けてもらえたような気になった。
その時、目の前に一人の男性が現れた。
男性は明るい笑顔を浮かべていた。
「こんにちは! この街を訪れるのは初めてですか?」
「はい、しばらく前から滞在していますけど、まだまだ新鮮な驚きに満ちています」
グロリアは男性の親しげな雰囲気に少し驚きながらも微笑んで答えた。
すると男性も気を良くした。
「それは良かった。できればもっとこの街を好きになってもらいたいです」
「それなら料理が美味しいお店を紹介してくれませんか?」
「ええ、お安い御用です。そう遠くはないので案内しましょう」
「わざわざありがとうございます」
すっかり警戒心がなくなったグロリアは男性についていった。
男性はウィルキーと名乗り、この街のことをグロリアに話した。
店に案内され、グロリアはお礼も兼ねて一緒に食事を誘い、ウィルキーも快く応じた。
その食事中の光景をエリナに目撃されていたことをグロリアは知るはずもなかった。
料理を堪能したグロリアはウィルキーに謝意を伝えることにした。
「ウィルキーさん、美味しい料理のお店を教えていただき感謝しています」
「いえいえ、楽しんでいただけて何よりです。こうしてお話しできたことも嬉しいです」
グロリアはその言葉に心が温かくなった。
彼との出会いにより街の魅力を一つ知ることができた。
「そう言っていただけると嬉しいです。もしよろしければ他にも美味しい料理のお店を紹介していただけませんか?」
「はい、喜んで」
ウィルキーは笑顔で答えた。
こうしてグロリアは数日にわたりウィルキーの案内で料理店を何件も巡ることになった。
その二人の姿をモーリスが目撃していたのだが、グロリアは知るはずもなかった。
気分をリフレッシュし元気を取り戻したグロリアは旅行を終えることにした。
エリナへのお土産を買い、帰路についた。
帰宅したグロリアは両親から良い旅行だったようだと言われ、少し恥ずかしい思いをした。
快く送り出してくれた両親に感謝しつつ、彼女はエリナに謝罪とお土産を渡すべく会うことにした。
エリナと再会したグロリアは持っていたお土産を渡した。
「これ、海沿いの街で見つけたの。あなたにどうしても渡したくて。あと何も告げずに出かけてしまってごめんなさいね」
「ありがとう、グロリア。素敵なお土産ね。元気そうで良かったわ。元気なあなたが一番だもの。気にしないで」
エリナの目は嬉しそうに輝いていた。
その目の輝きはグロリアの新たな恋物語がどういったものなのか知りたいという好奇心によるものも含まれていた。
「男性と一緒にいたけど、どういうこと?」
「ウィルキーさんのこと?! どうして知ってるの?!」
「実はグロリアが旅行に出かけたと知って、気になって追いかけてしまったの」
「そうだったの……。でも見かけたなら声をかけてくれても良かったのに」
「だって邪魔しては悪いでしょう? ウィルキーさんとの恋を」
そこまで言われてグロリアはエリナの誤解に気付いた。
「ウィルキーさんとは何もないわよ。彼は親切な人だったの。美味しいお店を紹介してくれただけよ」
「じゃあ、恋愛に発展する可能性は……?」
「彼とはあり得ないわね。今度は焦らずじっくりと相手を見極めて選びたいと思っているの」
「それがいいわ。酒場通いやストーカーなんて論外だもの」
エリナは笑いながら言った。
「ストーカー? まさかモーリスがまた何かしたの?」
「それだけどね――」
モーリスの失態を知り、グロリアはやっとモーリスの存在を過去のものにすることができた。
もちろんそれには気分を変えることになった旅行、それに心配し支えてくれたエリナの存在も欠かせない。
グロリアはエリナに感謝し、これからは前向きに生きると誓ったのだった。
「こんなに素敵な場所があるなんて全然知らなかったわ」
彼女は周りを見渡しながら思わず口にした。
露店が並ぶ通りは一際活気に満ちていた。
元気な人々から彼女も元気を分けてもらえたような気になった。
その時、目の前に一人の男性が現れた。
男性は明るい笑顔を浮かべていた。
「こんにちは! この街を訪れるのは初めてですか?」
「はい、しばらく前から滞在していますけど、まだまだ新鮮な驚きに満ちています」
グロリアは男性の親しげな雰囲気に少し驚きながらも微笑んで答えた。
すると男性も気を良くした。
「それは良かった。できればもっとこの街を好きになってもらいたいです」
「それなら料理が美味しいお店を紹介してくれませんか?」
「ええ、お安い御用です。そう遠くはないので案内しましょう」
「わざわざありがとうございます」
すっかり警戒心がなくなったグロリアは男性についていった。
男性はウィルキーと名乗り、この街のことをグロリアに話した。
店に案内され、グロリアはお礼も兼ねて一緒に食事を誘い、ウィルキーも快く応じた。
その食事中の光景をエリナに目撃されていたことをグロリアは知るはずもなかった。
料理を堪能したグロリアはウィルキーに謝意を伝えることにした。
「ウィルキーさん、美味しい料理のお店を教えていただき感謝しています」
「いえいえ、楽しんでいただけて何よりです。こうしてお話しできたことも嬉しいです」
グロリアはその言葉に心が温かくなった。
彼との出会いにより街の魅力を一つ知ることができた。
「そう言っていただけると嬉しいです。もしよろしければ他にも美味しい料理のお店を紹介していただけませんか?」
「はい、喜んで」
ウィルキーは笑顔で答えた。
こうしてグロリアは数日にわたりウィルキーの案内で料理店を何件も巡ることになった。
その二人の姿をモーリスが目撃していたのだが、グロリアは知るはずもなかった。
気分をリフレッシュし元気を取り戻したグロリアは旅行を終えることにした。
エリナへのお土産を買い、帰路についた。
帰宅したグロリアは両親から良い旅行だったようだと言われ、少し恥ずかしい思いをした。
快く送り出してくれた両親に感謝しつつ、彼女はエリナに謝罪とお土産を渡すべく会うことにした。
エリナと再会したグロリアは持っていたお土産を渡した。
「これ、海沿いの街で見つけたの。あなたにどうしても渡したくて。あと何も告げずに出かけてしまってごめんなさいね」
「ありがとう、グロリア。素敵なお土産ね。元気そうで良かったわ。元気なあなたが一番だもの。気にしないで」
エリナの目は嬉しそうに輝いていた。
その目の輝きはグロリアの新たな恋物語がどういったものなのか知りたいという好奇心によるものも含まれていた。
「男性と一緒にいたけど、どういうこと?」
「ウィルキーさんのこと?! どうして知ってるの?!」
「実はグロリアが旅行に出かけたと知って、気になって追いかけてしまったの」
「そうだったの……。でも見かけたなら声をかけてくれても良かったのに」
「だって邪魔しては悪いでしょう? ウィルキーさんとの恋を」
そこまで言われてグロリアはエリナの誤解に気付いた。
「ウィルキーさんとは何もないわよ。彼は親切な人だったの。美味しいお店を紹介してくれただけよ」
「じゃあ、恋愛に発展する可能性は……?」
「彼とはあり得ないわね。今度は焦らずじっくりと相手を見極めて選びたいと思っているの」
「それがいいわ。酒場通いやストーカーなんて論外だもの」
エリナは笑いながら言った。
「ストーカー? まさかモーリスがまた何かしたの?」
「それだけどね――」
モーリスの失態を知り、グロリアはやっとモーリスの存在を過去のものにすることができた。
もちろんそれには気分を変えることになった旅行、それに心配し支えてくれたエリナの存在も欠かせない。
グロリアはエリナに感謝し、これからは前向きに生きると誓ったのだった。
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