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2話
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グロリアは友人のエリナに離婚の話をしたところ、詳しく話を聞きたいと言われ、静かなカフェで待ち合わせ話をすることになった。
「グロリア、離婚したって聞いたけど、本当よね?」
「ええ、そうよ」
「そこまで険悪な仲だったとは思わなかったわ。何かあったの?」
エリナに隠し事をするような関係ではないので、グロリアは全て伝えるつもりで話し始めた。
「実はね、モーリスと口論になったの。彼が毎晩酒場に通っていることは以前も話したわよね? それで彼は酒場通いをやめなかったの。心配しても余計なことだったみたいで……」
「グロリアの気遣いを無下にするなんて酷いわ」
「あの日も酒場通いをやめるように言ったの。健康が心配だって。でも彼はそれが気に入らなかったみたいで口論になってしまったのよ……」
「そんな……心配したのにそれは酷いわよ」
「それで妻は夫に従うものだと言われたの。確かにそうかもしれないけど、夫を気遣うのは当然でしょ? それすらも邪魔だったらしくて、自分が馬鹿らしく思えてしまったの」
「グロリアは悪くないわ。その気持ち、わかるもの」
エリナの優しさと、モーリスに理解してもらえなかった悲しみを思い出し、グロリアは涙が出そうになる。
「それでね、離婚を口にされたの。そこまで言われたら私だって退けないもの。それで離婚になったの」
「酷いわ、モーリス様はそんな人だったのね。あなたのことを全く考えていないなんて信じられないわ」
エリナは怒りを抑えられない様子で言った。
「彼は自分の自由を優先したの。私がいなければ自分を最優先にできるでしょ? こうなる運命だったのよ」
「離婚で正解よ、グロリア。あなたは間違っていないもの」
「ありがとう、エリナ」
グロリアはエリナの優しい言葉と肯定する言葉により救われたように思えた。
一方のエリナはグロリアの受けた仕打ちに腹が立っていた。
このままモーリスに何もしないのでは納得できなかった。
自分が受けた仕打ちではないがグロリアが受けた仕打ちなら自分のことのように考えていた。
「グロリア、あなたは仕返しを考えたことはないの? このままでいいの?」
「いいとは思えないし何かしないと気持ちに区切りが付けられないかもしれないわ。でもどうすればいいのか分からないのよ……」
「それなら彼のしたことを噂で広めてみるのはどう? 他の人がどう判断するかで誰が悪いのか明らかになるでしょ?」
「そうかもしれないけど……」
グロリアはエリナの提案に乗るべきか悩んだ。
その様子を見たエリナは後押しすべく言葉を続ける。
「モーリス様は酒場通いを悪いことだとは思っていないのよね? なら噂を広めても問題ないじゃない」
「……そうかもしれないわね。もし恥ずかしい思いをするなら自業自得よね。私があれだけ言ったのにやめなかったのだから」
「そうよ。それで噂を広めることでいいわよね?」
「ええ」
「グロリア、後は私に任せてちょうだい」
いつの間にかにエリナが噂を広めることになっていたが、グロリアはこの際だからエリナに頼ることにした。
自分がやるよりも上手くやるだろうし、当事者が言うよりも第三者が言ったほうが噂に説得力が出るだろうと思ってのことだ。
「ありがとう、エリナ。あなたがいてくれて本当に良かったわ」
グロリアは心から感謝の気持ちを込めて言った。
「さあ、まずは誰に話そうかしら?」
エリナは楽しそうだった。
「グロリア、離婚したって聞いたけど、本当よね?」
「ええ、そうよ」
「そこまで険悪な仲だったとは思わなかったわ。何かあったの?」
エリナに隠し事をするような関係ではないので、グロリアは全て伝えるつもりで話し始めた。
「実はね、モーリスと口論になったの。彼が毎晩酒場に通っていることは以前も話したわよね? それで彼は酒場通いをやめなかったの。心配しても余計なことだったみたいで……」
「グロリアの気遣いを無下にするなんて酷いわ」
「あの日も酒場通いをやめるように言ったの。健康が心配だって。でも彼はそれが気に入らなかったみたいで口論になってしまったのよ……」
「そんな……心配したのにそれは酷いわよ」
「それで妻は夫に従うものだと言われたの。確かにそうかもしれないけど、夫を気遣うのは当然でしょ? それすらも邪魔だったらしくて、自分が馬鹿らしく思えてしまったの」
「グロリアは悪くないわ。その気持ち、わかるもの」
エリナの優しさと、モーリスに理解してもらえなかった悲しみを思い出し、グロリアは涙が出そうになる。
「それでね、離婚を口にされたの。そこまで言われたら私だって退けないもの。それで離婚になったの」
「酷いわ、モーリス様はそんな人だったのね。あなたのことを全く考えていないなんて信じられないわ」
エリナは怒りを抑えられない様子で言った。
「彼は自分の自由を優先したの。私がいなければ自分を最優先にできるでしょ? こうなる運命だったのよ」
「離婚で正解よ、グロリア。あなたは間違っていないもの」
「ありがとう、エリナ」
グロリアはエリナの優しい言葉と肯定する言葉により救われたように思えた。
一方のエリナはグロリアの受けた仕打ちに腹が立っていた。
このままモーリスに何もしないのでは納得できなかった。
自分が受けた仕打ちではないがグロリアが受けた仕打ちなら自分のことのように考えていた。
「グロリア、あなたは仕返しを考えたことはないの? このままでいいの?」
「いいとは思えないし何かしないと気持ちに区切りが付けられないかもしれないわ。でもどうすればいいのか分からないのよ……」
「それなら彼のしたことを噂で広めてみるのはどう? 他の人がどう判断するかで誰が悪いのか明らかになるでしょ?」
「そうかもしれないけど……」
グロリアはエリナの提案に乗るべきか悩んだ。
その様子を見たエリナは後押しすべく言葉を続ける。
「モーリス様は酒場通いを悪いことだとは思っていないのよね? なら噂を広めても問題ないじゃない」
「……そうかもしれないわね。もし恥ずかしい思いをするなら自業自得よね。私があれだけ言ったのにやめなかったのだから」
「そうよ。それで噂を広めることでいいわよね?」
「ええ」
「グロリア、後は私に任せてちょうだい」
いつの間にかにエリナが噂を広めることになっていたが、グロリアはこの際だからエリナに頼ることにした。
自分がやるよりも上手くやるだろうし、当事者が言うよりも第三者が言ったほうが噂に説得力が出るだろうと思ってのことだ。
「ありがとう、エリナ。あなたがいてくれて本当に良かったわ」
グロリアは心から感謝の気持ちを込めて言った。
「さあ、まずは誰に話そうかしら?」
エリナは楽しそうだった。
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