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5話
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デイジーは再びジャスミンと会っていた。
「いろいろと情報が掴めたし、バーナードさんの協力も得られたわ。今度浮気現場に踏み込みましょう」
突然の提案にデイジーは驚いた。
「踏み込むって……本気なの?!」
「ええ、本気よ。バーナードさんもいれば第三者として証言もできるし。デイジーは乗り気ではないの?」
「そうじゃないけど……少し驚いただけ。私も一緒に乗り込むわ。こうなったら徹底的にしないと」
「その意気よ」
デイジーは心を強く持った。
ニコラスへの仕返しのためにここまでがんばってきたというのもあり、手を貸してくれたジャスミンの行為を無駄にしたくなかったこともある。
「それで予定だけど――」
二人は当日の詳細な手順について打ち合わせし、来るべき時に備えた。
そして予定の日。
デイジー、ケイト、バーナードの三人は裏通りの連れ込み宿が立ち並ぶ路地を歩いていた。
「この先が密会の現場になる。それにしても踏み込むのか……」
「あら、不満があるの?」
「不満というよりも驚きだし、不安だな。お嬢さん方が踏み込むような場所でもないし場面でもないと思うが……」
「これはデイジーのためでもあるのよ。きっぱり別れるためには必要なことなの」
「それも大切なことだよな。危険なことにはならないと思うが一応気をつけてくれ。この辺りは治安だってあまり良くはないから」
「大丈夫、そのためにバーナードさんがいるのでしょう?」
「そのためではないのだが……。お嬢さん方に危害が加えられないようにはするさ」
「頼りにしているわ」
軽口をたたくジャスミンに、バーナードとはどういった関係なのかとデイジーは疑問を抱いた。
二人が恋人関係だとしても驚かないが、ジャスミンから関係を聞いたことはない。
あえて訊くのもどうかと思ったので何も訊かないでいた。
そもそもジャスミンの交友関係は謎が多かった。
「さて、ここが現場だ。宿の人間に話は通してある。行くぞ」
「はい」
「ふふ、楽しみね」
ジャスミンは修羅場を期待して楽しそうだった。
デイジーは緊張しつつニコラスの逢瀬の部屋へと向かった。
部屋の扉の前でバーナードが無言で視線だけでデイジーとジャスミンに踏み込むことを伝える。
デイジーは緊張しながらも頷いた。
ジャスミンは楽しそうな表情で頷いた。
そして鍵を開けると同時に扉は開かれた。
そこには服を脱ぎかけていたニコラスとケイトの姿があった。
「な、なんだ?! どうしてデイジーが?!」
「何よ?! どうしたの?!」
ニコラスとケイトは想定外の事態に困惑した。
「浮気していたのね、ニコラス。最低」
デイジーは事前にジャスミンから教え込まれていたセリフを口にした。
別に浮気の事実を今知ったわけでもなければ最低だとも思っていない。
だがそう言うようにジャスミンに言われたから従ったのだ。
「浮気よ浮気! 騎士様ともあろうニコラスが浮気していたなんて信じられない!」
わざとらしくジャスミンが騒ぎ立てた。
「いや、これは浮気ではない」
「なら何なのよ?」
「……本気だから浮気ではない!」
ニコラスはとっさに言い訳した。
どう考えても浮気でしかないので説得力はなかったが、ケイトだけはニコラスの堂々とした言い訳に目を輝かせていた。
「いろいろと情報が掴めたし、バーナードさんの協力も得られたわ。今度浮気現場に踏み込みましょう」
突然の提案にデイジーは驚いた。
「踏み込むって……本気なの?!」
「ええ、本気よ。バーナードさんもいれば第三者として証言もできるし。デイジーは乗り気ではないの?」
「そうじゃないけど……少し驚いただけ。私も一緒に乗り込むわ。こうなったら徹底的にしないと」
「その意気よ」
デイジーは心を強く持った。
ニコラスへの仕返しのためにここまでがんばってきたというのもあり、手を貸してくれたジャスミンの行為を無駄にしたくなかったこともある。
「それで予定だけど――」
二人は当日の詳細な手順について打ち合わせし、来るべき時に備えた。
そして予定の日。
デイジー、ケイト、バーナードの三人は裏通りの連れ込み宿が立ち並ぶ路地を歩いていた。
「この先が密会の現場になる。それにしても踏み込むのか……」
「あら、不満があるの?」
「不満というよりも驚きだし、不安だな。お嬢さん方が踏み込むような場所でもないし場面でもないと思うが……」
「これはデイジーのためでもあるのよ。きっぱり別れるためには必要なことなの」
「それも大切なことだよな。危険なことにはならないと思うが一応気をつけてくれ。この辺りは治安だってあまり良くはないから」
「大丈夫、そのためにバーナードさんがいるのでしょう?」
「そのためではないのだが……。お嬢さん方に危害が加えられないようにはするさ」
「頼りにしているわ」
軽口をたたくジャスミンに、バーナードとはどういった関係なのかとデイジーは疑問を抱いた。
二人が恋人関係だとしても驚かないが、ジャスミンから関係を聞いたことはない。
あえて訊くのもどうかと思ったので何も訊かないでいた。
そもそもジャスミンの交友関係は謎が多かった。
「さて、ここが現場だ。宿の人間に話は通してある。行くぞ」
「はい」
「ふふ、楽しみね」
ジャスミンは修羅場を期待して楽しそうだった。
デイジーは緊張しつつニコラスの逢瀬の部屋へと向かった。
部屋の扉の前でバーナードが無言で視線だけでデイジーとジャスミンに踏み込むことを伝える。
デイジーは緊張しながらも頷いた。
ジャスミンは楽しそうな表情で頷いた。
そして鍵を開けると同時に扉は開かれた。
そこには服を脱ぎかけていたニコラスとケイトの姿があった。
「な、なんだ?! どうしてデイジーが?!」
「何よ?! どうしたの?!」
ニコラスとケイトは想定外の事態に困惑した。
「浮気していたのね、ニコラス。最低」
デイジーは事前にジャスミンから教え込まれていたセリフを口にした。
別に浮気の事実を今知ったわけでもなければ最低だとも思っていない。
だがそう言うようにジャスミンに言われたから従ったのだ。
「浮気よ浮気! 騎士様ともあろうニコラスが浮気していたなんて信じられない!」
わざとらしくジャスミンが騒ぎ立てた。
「いや、これは浮気ではない」
「なら何なのよ?」
「……本気だから浮気ではない!」
ニコラスはとっさに言い訳した。
どう考えても浮気でしかないので説得力はなかったが、ケイトだけはニコラスの堂々とした言い訳に目を輝かせていた。
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