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7話

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コーディリアは久々に友人のジュディと会うことになった。
いつも利用していたカフェに来るのも久々であり、やっと以前のような落ち着いた日常が戻ってきたように思えた。

「コーディリア、最近また元気がないようだけれど、何かあったの?」
「実はノーランが私に会いに来たの。復縁を申し込んできたのよ? 信じられる?」
「信じられないわ。どう考えればそんな恥ずかしい真似ができるのかしらね?」

コーディリアもソニアも思わずため息をついてしまった。

「もう終わったのにしつこくて嫌になるわ。でももう顔は見せないと思うけどね」
「それだけ分からせてあげたの?」
「ええ、そうよ」

コーディリアはわざと悪そうな顔をした。
冗談だと理解しているジュディは笑った。

「それならもう大丈夫そうね。それで新しい婚約者については何か考えているの?」
「正直な気持ち、今は疲れてしまったの。しばらくは婚約とかは遠慮したいかなって……」
「そうよね……」

ノーランに振り回された日々を思い出し、コーディリアはため息をついた。
事情を聞かされていたジュディもコーディリアの気持ちを察し、同じくため息をついた。

「でもいつまでも婚約者を作らないのも問題よね」
「そうなの」
「無理に婚約を急ぐ必要はないけれど、出会いがあれば気持ちも変わるかもしれないわ。良かったら私がそれとなく良い人を探してみる?」
「いいの? 面倒でしょ?」
「いいのよ。私が変な男は除けておくから」
「それなら安心ね。でも無理はしないでね」
「ええ。コーディリアもあまり期待しないで待っていて」

こうしてジュディが良い相手を探すことになった。
コーディリアとしてはジュディが本当に相手を見つけられるのか半信半疑だった。



そして三ヶ月が過ぎた。
コーディリアはジュディと再びカフェで会い、雑談していた。

「そういえばノーラン様の家が破産したみたいね。噂でしか知らないけど」
「私も噂で聞いたわ。結局そうなってしまったのね」
「資金援助頼みなんてそんなものよ。あんな家の相手と婚約させられるなんてね」
「事情が事情だから仕方ないわよ」

実際にはまだ破産していないが、借金を申し込んだり支払いの延期を求めたりしていれば破産間近だと思われて当然だった。
それも破産が早いか遅いかの違いであり、結局破産する未来は同じだ。

祖父の代に世話になった分を恩返しするという、貴族家ならではの長期的な貸し借りの被害者になったコーディリアは堪ったものではなかった。
だが結局破産という末路を知り、彼女の中で何か吹っ切れるものがあった。

「そうそう、コーディリアの婚約者探しだけど、良さそうな人が会ってみたいって言っているの。どうする?」
「悪い人ではないのでしょう? 会ってみるのもいいかもしれないわね」
「先方にも都合があるし、とりあえず断らないということだけ伝えておこうと思うの。それでいい?」
「いいわよ。こちらも都合があるし、後でお互いの都合を擦り合わせないとね」

コーディリアはまだ見ぬ相手のことを好き勝手想像した。
少なくともノーランよりもイケメンで信用できる人だろうと想像した。

こうしてコーディリアにとって楽しいひとときが過ぎていった。
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