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8話
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マリアンがミックと婚約したという噂を耳にしたマーキースは荒れていた。
「どうして俺ではなくて他の男を選んだんだ!」
ジュリアナへの復縁が失敗し、またマリアンに復縁を申し込もうかと考えていた時のことだった。
先手を打たれたようで気に入らず、しかも他の男を選んだことで浮気だとマーキースは考えた。
「こうなったら文句の一つでも言ってやらなければ気が収まらない」
マーキースはマリアンが参加する夜会に自分も参加することにした。
夜会ではマーキースがマリアンに文句を言っていた。
「酷いではないか、マリアン。俺を捨てて他の男を選ぶなんてどういうつもりだ?」
「あなただけには言われたくないわ。浮気男のマーキースに私の婚約者に口出ししてほしくないわ」
「それは違う! 俺は君を愛していた。そのために浮気したんだ! どうして理解してくれない?」
「理解できないに決まっているでしょ?」
感情的になり声を荒げるマーキースに周囲の注目が集まる。
こうしてマーキースは浮気を自白し浮気男と周囲に認知された。
そこにミックが現れた。
「何を言っているのかな? マリアンは僕の婚約者なんだ。失礼な態度はやめてくれないか」
「お前に関係ない。俺にはマリアンが必要なんだ。マリアンがお前みたいな男を選ぶなんて間違っている」
「それはマリアンへの侮辱だ。訂正してくれないかな?」
マーキースは自分が正しいと信じているため、間違っているのはミックだろうと考えた。
周囲の人たちも同感だろうと見渡すが、自分に向けられている冷たい視線に気付き、マーキースは自分が間違っていたのかと考えた。
「マリアン、君は幸せなのか?」
縋るようにマーキースはマリアンに問いかけた。
「ええ、もちろんよ」
その言葉でマーキースの心は打ち砕かれた。
「……すまなかった、俺が間違っていた」
マーキースは失意のあまり、ふらふらと歩き会場を後にした。
「……終わったな」
「ええ、終わりよ」
マーキースに屈辱を与えることができ、マリアンはもう彼への執着を手放すことができるようになった。
振り回された恨みは晴らせた。
そしてミックの役目も終わった。
数日後、マリアンはミックに対して言った。
「ミック様、婚約を破棄します」
「え?! どうしてだ?!」
急にそのようなことを言われミックは驚愕の表情を浮かべた。
彼はマリアンの理解できなかった。
どうしてそうなったのか心当たりもなかった。
そこにマリアンが理解できないような理由を伝える。
「振り回されたり捨てられたりする気持ちを味わってほしかったの。それでわたしは救われるの。わたしのために役立ってくれてありがとう」
「そんな理由で僕と婚約したのか?」
「ええ、そうよ」
一切の罪悪感を感じさせないジュリアナの微笑みにミックは信じられないものを見たように同様した。
「君は本当にそんな人間なのか?」
「そうよ。わたしはあなたを利用してわたしの計画を実行したかっただけ」
マリアンは何の躊躇もなく彼に告げた。
「君のような人間と婚約していたなんて恥ずかしい。分かったよ、僕が勝手に舞い上がっていただけだったようだ」
彼は深くため息をつき、婚約破棄を受け入れた。
これはマリアンにとって満足できる結果だった。
こうしてマリアンとミックの関係は終わりを迎えたが、周囲の人々はこの出来事を冷ややかな目で見ていた。
彼らはマリアンもマーキースもミックも同じような人間だと考え、愛と裏切りを繰り返すことに呆れたり好奇の目で見たりしていた。
その後、醜態を晒した三人は悪評が広まり婚約者探しに難航することになった。
他に相手がいないのだから仕方なく再びマリアンを巡ってマーキースとミックが争ったが、悪評を再び広めるだけだった。
その頃、ジュリアナは外国の貴族に嫁ぎ、静かで幸せな日々を送っていた。
彼女は面倒な人たちから遠ざかることで心の平穏を見つけていた。
「マリアンには関わらないのが一番よね」
「どうして俺ではなくて他の男を選んだんだ!」
ジュリアナへの復縁が失敗し、またマリアンに復縁を申し込もうかと考えていた時のことだった。
先手を打たれたようで気に入らず、しかも他の男を選んだことで浮気だとマーキースは考えた。
「こうなったら文句の一つでも言ってやらなければ気が収まらない」
マーキースはマリアンが参加する夜会に自分も参加することにした。
夜会ではマーキースがマリアンに文句を言っていた。
「酷いではないか、マリアン。俺を捨てて他の男を選ぶなんてどういうつもりだ?」
「あなただけには言われたくないわ。浮気男のマーキースに私の婚約者に口出ししてほしくないわ」
「それは違う! 俺は君を愛していた。そのために浮気したんだ! どうして理解してくれない?」
「理解できないに決まっているでしょ?」
感情的になり声を荒げるマーキースに周囲の注目が集まる。
こうしてマーキースは浮気を自白し浮気男と周囲に認知された。
そこにミックが現れた。
「何を言っているのかな? マリアンは僕の婚約者なんだ。失礼な態度はやめてくれないか」
「お前に関係ない。俺にはマリアンが必要なんだ。マリアンがお前みたいな男を選ぶなんて間違っている」
「それはマリアンへの侮辱だ。訂正してくれないかな?」
マーキースは自分が正しいと信じているため、間違っているのはミックだろうと考えた。
周囲の人たちも同感だろうと見渡すが、自分に向けられている冷たい視線に気付き、マーキースは自分が間違っていたのかと考えた。
「マリアン、君は幸せなのか?」
縋るようにマーキースはマリアンに問いかけた。
「ええ、もちろんよ」
その言葉でマーキースの心は打ち砕かれた。
「……すまなかった、俺が間違っていた」
マーキースは失意のあまり、ふらふらと歩き会場を後にした。
「……終わったな」
「ええ、終わりよ」
マーキースに屈辱を与えることができ、マリアンはもう彼への執着を手放すことができるようになった。
振り回された恨みは晴らせた。
そしてミックの役目も終わった。
数日後、マリアンはミックに対して言った。
「ミック様、婚約を破棄します」
「え?! どうしてだ?!」
急にそのようなことを言われミックは驚愕の表情を浮かべた。
彼はマリアンの理解できなかった。
どうしてそうなったのか心当たりもなかった。
そこにマリアンが理解できないような理由を伝える。
「振り回されたり捨てられたりする気持ちを味わってほしかったの。それでわたしは救われるの。わたしのために役立ってくれてありがとう」
「そんな理由で僕と婚約したのか?」
「ええ、そうよ」
一切の罪悪感を感じさせないジュリアナの微笑みにミックは信じられないものを見たように同様した。
「君は本当にそんな人間なのか?」
「そうよ。わたしはあなたを利用してわたしの計画を実行したかっただけ」
マリアンは何の躊躇もなく彼に告げた。
「君のような人間と婚約していたなんて恥ずかしい。分かったよ、僕が勝手に舞い上がっていただけだったようだ」
彼は深くため息をつき、婚約破棄を受け入れた。
これはマリアンにとって満足できる結果だった。
こうしてマリアンとミックの関係は終わりを迎えたが、周囲の人々はこの出来事を冷ややかな目で見ていた。
彼らはマリアンもマーキースもミックも同じような人間だと考え、愛と裏切りを繰り返すことに呆れたり好奇の目で見たりしていた。
その後、醜態を晒した三人は悪評が広まり婚約者探しに難航することになった。
他に相手がいないのだから仕方なく再びマリアンを巡ってマーキースとミックが争ったが、悪評を再び広めるだけだった。
その頃、ジュリアナは外国の貴族に嫁ぎ、静かで幸せな日々を送っていた。
彼女は面倒な人たちから遠ざかることで心の平穏を見つけていた。
「マリアンには関わらないのが一番よね」
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