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6話

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「マリアンを選んだのは間違いだった。やはり俺にはジュリアナが必要なのではないか?」

マリアンを失ったマーキースは、悩んだ挙句、ジュリアナこそが自分に相応しいと結論を出した。

「ならば会おう。謝罪すればジュリアナだって許してくれるはずだ」

自分にとって都合のいい展開を信じたマーキースはジュリアナに手紙を書いた。



しかし、ジュリアナからの返事は冷たかった。
要約すれば、会う意思はないというものだった。

「誠意を見せなければジュリアナの気持ちを動かすことはできないのだろう。諦めない姿勢を見せれば俺の気持ちを伝えられるはずだ」

マーキースは諦めず、再度手紙を送った。



そして待っていた返信が来た。

「よし、会えることになった! 俺の誠意が伝わった!」

手紙には会って話をすると書かれており、マーキースは早とちりして喜んでいた。
会って話をすると書いてあったが、よりを戻すとは一言も書かれていなかった。

ジュリアナとしてはマーキースが簡単に納得し諦めるとは思えず、会って直接断ることが一番だと考えてのことだった。
そのような考えとは知らないマーキースは約束の日を心待ちにした。



数日後、約束の日になった。
久々にジュリアナを目にしたマーキースは喜びを隠さなかった。

「ジュリアナ、会ってくれてありがとう」

マーキースは彼女を見つめ、少し緊張した様子で言った。
ジュリアナは淑女の嗜みとして微笑した。

「別に礼を言われるほどのことではありません。それよりも用件をどうぞ」
「婚約破棄をしたことを謝りたかったんだ。それに……やり直せないかと思った」

マーキースは真剣な眼差しでジュリアナを見つ告げた。
だがジュリアナは鼻で笑った。

「やり直す意思はありません。それだけを伝えたくて会うことにしました。勘違いしないでください」
「そんなこと言わないでくれ。俺は君を愛していたことに気付いたんだ。マリアンとのことは間違いだった。どうか許してほしい」
「マーキース様がマリアンを選んだのは事実ですよね? 今になって謝られてもやり直すことはありません」
「マリアンのような女は嫌だと思い知ったんだ。あんな人の気持ちを弄ぶような女、どうして婚約してしまったのかと後悔している」
「気持ちを弄ぶのはマーキース様も同じですよね?」
「いや……そんなことはない」
「ならどうして私を捨ててマリアンを選んだのですか?」
「それは間違いだった。どうか責めないでくれ」

マーキースが謝罪しようがジュリアナは最初から許すつもりがなかった。

「あなたみたいな浮気男が嫌だと言っているの。まだ分からないの?」

ジュリアナの冷たい言葉にマーキースが信じられないものを見たように目を見開いた。

「そんなことを言うジュリアナではなかったはずだ。どうしたんだ?」
「そうさせたのはマーキース様、あなたですよ。あなたが私を捨ててマリアンを選んだからこうなったのです」
「そんな……」
「もういいですよね? あなたとやり直すことはありません」

マーキースは絶望した。
もう希望は残っていなかった。
それも全部自分の選択の結果だと思うと誰かを責めることもできず、ただ後悔するしかなかった。
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